目次
ブックマーク
応援する
8
コメント
シェア
通報
1-5: A New Resolve(新たなる覚悟)

目の前にそびえる巨大な門、高さは10メートルはあるだろう。


その向こう側にあるものが、俺たちのゴール。


――あずさがそう言っていた。


「ちくしょう! 追手がうっとうしいな!」


俺は走りながら、追ってくる化物の脳天を打ち抜いた。


「ナイスショット」


「そりゃどうも」


言いながら、また撃つ。


あの門をくぐれば、すべてが終わるのか?


安堵と焦りが入り交じり、胸がざわめく。


そして何とか無事に、門へとたどり着いた。


「ゴールか……!」


息を切らしながら俺は呟いた。


「うん、そうだね」


梓が微かに笑みを浮かべるが、その笑顔はどこかぎこちなかった。


「なあ、あんた……本当に大丈夫か?」


俺は不安を隠せず、梓に問いかけた。


一瞬だけ俺に視線を向けた梓は、すぐに遠くを見るような目をして言った。


「大丈夫じゃない。でも、もうすぐ終わるから」


「終わるって……どういうことだよ?」


俺は問い返すが、梓は静かに門の方へ歩き出した。


俺も急いで追いかけるが、違和感が強まっていく。


「……は?」


門を超えた彼女の体が、白く発光した。


まるで光に溶けていくかのように、どんどん薄れていく。


「待て、あんた……消えかかってるぞ!一体、何が起きてるんだ?」


梓は立ち止まり、俺の方を振り返った。


「これが、この世界――SENETのルールなんだよね」


穏やかな表情を浮かべたまま、静かに答える。


「私たち、クリアしたの。だから……私はログアウトするだけ」


「なんだ……ログアウトかよ」


俺は安堵した。


「じゃあ、またなんかの拍子にログインしたら会えるかもな」


「……それは、あんま嬉しくないかも」


梓は苦笑いを浮かべる。


「どうしてだよ?」


「うーん、なんでだろうね」


梓はふっと肩をすくめるようにして笑った。


だが、その笑顔は少し悲しげだった。


梓の体がさらに透明になっていく。


彼女は最後に一度微笑み、手を振って言った。


「じゃあね、賢。また会う時まで」


次の瞬間、彼女の姿は完全に消えてしまった。


「梓……?」


俺はその場に立ち尽くし、彼女がいた場所を見つめ続けた。


言葉が出てこない。


ただ、空虚な感覚だけが残った。



……――。



突然、視界が揺れ、気づいた時には、俺は現実の世界に戻っていた。


俺もログアウトしたのだろう。


しかし、ログインする前と、状況は大きく変わっていた。


「なんだ……これ」


目の前には、黒服の男たちが並んでいた。


周囲は黒い車に囲まれており、その中の一台のドアが開いた。


一人の女性がゆっくりと降りてくる。


「君、少し時間をいただけるかしら?」


声は穏やかだが、確かな威圧感を感じさせる女性だった。


彼女は微笑みの背後には、何か大きな運命が待ち受けているように感じた。

コメント(0)
この作品に、最初のコメントを書いてみませんか?