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1-4: The Unseen Threat(見えない脅威)

俺は周囲を見渡し、使える物資を探し始めた。

敵がすぐに迫ってくるのはわかっている。

何か武器になるものを手に入れなければ、梓を守りきれない。


「もう来るのか……!」


緊張が走る。

目の前で倒れている彼女を守る手段はあるのか? 


自分の無力さに苛まれながらも、必死に考えを巡らせる。


「これか……?」


目に飛び込んできたのは、古びた銃の残骸。

使えるかわからないが、手に取ってみると意外にもしっかりしている。

VRゲームで慣れた感覚が手に蘇る。


「あるもんでやるしかねえ…!」


俺はその銃を構え、建物の角に隠れた。

敵の動きを予測しながら、じっと待つ。

これまでゲームで積み重ねてきた経験が、こんな状況で役に立つとは思わなかった。


「冷静に……一発で決めるんだ……」


遠くに異形の怪物が見えた。

ゆっくりとこちらに向かってきている。

俺は深く息を吸い、クロスヘアを脳天に合わせて引き金を引いた。

銃声が響き、敵の頭が吹き飛ぶ。


「悪りぃな。角待ちは得意なんだよ」


そのまま怪物は倒れた。


「……やるじゃん」


振り返ると、梓が意識を取り戻していた。

彼女はまだ朦朧としているが、俺にしっかりと視線を向けている。


「大丈夫か? 名前、言えるか?」


「……名前? コードネームじゃなくて?」


「そうだ、ちゃんとした名前だよ」


「梓……白波梓しらなみあずさ……」


「梓か。俺は灰島賢だ。賢でいい」


その瞬間、瓦礫が飛んできて俺の体をかすめる。

痛みが走ったが、俺はすぐに銃を構え直し、再び敵に向かって撃ち込んだ。


「ちっ……敵の数が多すぎる! 弾薬が持たねえ!」


次々と現れる怪物たちを撃ち倒していくが、数は一向に減らない。


「梓! あの門に行けば助かるんだよな?」


彼女は疲れた顔でしっかりと頷いた。


「うん……あそこがゴール。行けば……クリアできる」


それがSENETのルール――ゲームとして割り切りたいが、現実の痛みと恐怖がそれを許してくれない。


「よし、乗れ!」


「え、ちょっと…っ」


俺は梓を無理やり背負い上げ、廃墟から走り出した。門に向かって一心不乱に走ると、異形の怪物たちが次々と現れた。


「逃げるのは趣味じゃねえんだけどな……!」


俺は走りながら、敵の動きを冷静に予測していた。


ストレイフを繰り返しつつ、タップ撃ちで的確に弾を当て、敵の攻撃を避けながら進む。


敵の攻撃を交わしつつ、追尾してくる敵に次々と弾丸を撃ち込む。

ゲームで磨いたエイム力がここでも生きている。

俺は冷静さを保ちながら、リコイルを制御し、頭を狙って正確なタップ撃ちを続けた。

追撃してくる敵を次々と倒し、視界の先に、ゴールであるクリアゲートが見えた。


「あと少し……!」


俺は梓を担ぎ直すと、そのままクリアゲートへ向かって全力で駆け抜けた。


だが、背後から迫る無数の敵――八つ腕の怪物が恐ろしいスピードで追いかけてくる。


普通じゃない、明らかに異形の化け物だ。


焦りで心臓が早鐘を打つが、俺は歯を食いしばって前に進むしかない。


「なあ、あずさ、あれってどうすんだよ!? あんなの俺たちじゃ無理だろ!」


焦りが頂点に達し、思わず梓に問いかける。


だが、彼女はまるで気にしていない様子で、肩をすくめて返してきた。


「まあ、ヤバいけど……やるしかないよね」


梓の軽い言葉に、俺は少し動揺しながらも、彼女の冷静さに安心しようとした。


「それに、後ろだけじゃねえ!」


俺の声に反応するように、巨大な岩の影からデカブツが現れた――まるで牛の化け物だ。


巨大な角を揺らし、地面を踏みしめる度に大地が震える。


「えー、マジか……またあれか」


梓はやや面倒そうに溜息をつきながら、俺の背を降りると、剣をしっかり握り直し、一歩前に踏み出した。


「ま、こんなこともあるよね。どうせやらなきゃ帰れないしさ」


そう言って彼女は笑った。


が、その直後、梓は足を引きずるようにして前進する。


怪我が痛むのだろう。


「梓、無理すんなよ! 俺がやるから!」


「だいじょーぶ。私、少し休めばかーなり回復するタイプだから」


「でもよ……っ」


俺が何か言おうとした瞬間、デカブツが巨大な拳を振り上げた。


梓に向けて振り下ろされるその瞬間、俺はとっさに銃を構えた。


「いきなり拳骨とか、マジ勘弁だって!」


梓が身をかわしながら、軽口を叩く。


その言葉に一瞬焦りながらも、俺は角待ちの位置から狙いを定め、デカブツの拳を撃ち抜いた。


巨体がよろめき、攻撃が止まる。俺はその隙に再び銃を構え直し、連射で相手を攻撃する。


だが、敵の数が多すぎる。


後ろにも、前にも次々と敵が迫ってくる。


「くそ……! キリがねえ!」


その時、梓が俺の隣に来て、軽く笑った。


「次は私が引きつけるから、タイミング合わせて」


「ああ、わかった!」


梓は再び前に出て、デカブツの足元に飛び込んだ。


俺も即座に銃の照準を合わせる。


ヘッドショットを決めるべく、クロスヘアを固定し、完璧な位置で引き金を引いた。


「今だ!」


弾丸が正確にデカブツの脳天を貫き、その巨体が揺れる。


梓はその隙を逃さず、一閃の剣撃で怪物の胴体を貫いた。


怪物が大きなうなり声を上げながら、ついに崩れ落ちた。


「よし……やったぞ!」


俺たちは息を整えながら、倒れた怪物を見下ろす。


緊張が一気に解け、達成感が湧き上がる。


「お疲れさま、賢。なんだかんだで、やるじゃん」


梓も微笑んで言うが、その顔には疲れが滲んでいる。


「いや、助けてもらったのは俺の方だよ……でも、これで終わりか?」


俺が問いかけると、梓は静かに首を振った。


「まだだよ」


梓が指さす先には、巨大な門がそびえ立っている。


「そろそろ空間の収縮が始まる……あのゲートをくぐらないと、全てが消えちゃうから」


「空間の収縮……?」


「この世界が消えるってこと」


その一言に、緊張が再び高まる。


俺は、危機が迫っていることを実感した。


「なるほどな……ここまできて消えるのはごめんだ」


俺はその場でしゃがみ、梓に声をかけた。「ほら、乗れよ」


「え、また? まあ、いいけど……」


梓は俺の背中に軽く乗った。


彼女は少し戸惑いながらも、俺の肩に手を置いた。


「じゃあ、賢、よーいどんで」


「ああ」


俺たちは肩越しに目を合わせ、一斉に息を吸った。


「「よーい、どん!」」


世界が崩れていく音が背後から聞こえる。

門に向かって、命がけのレースが始まった。

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