目次
ブックマーク
応援する
10
コメント
シェア
通報
1-3: The Silent Resolve(静かなる決意)

息が荒い。

足元がふらつき、膝が震える。

それでも俺は、どうにか廃墟の一角に彼女を横たえた。

目の前で倒れている少女――まだ意識が戻らない。


「まだ……起きないか」


彼女の顔は青ざめ、戦闘で負った傷が深い。

俺は無力感に苛まれながら、どうすればいいのかを必死に考えた。

この場所に留まれば、また敵が襲ってくる可能性がある。

しかし、俺にはどうするべきかの答えが見つからない。


「どうすんだよ……」


自問自答しても、答えは出ない。

ゲームの中では戦えても、現実の戦場なんて経験したことがない。

俺が彼女を守れるのか、自信は全くない。

ただ、彼女が助けを必要としている。

――それだけが、今の俺を動かす唯一の理由だった。


その時、彼女の装備についていた小さな通信装置が突然光を放ち、音を立て始めた。


「……これ」


恐る恐る装置を操作すると、画面が開き、緊急メッセージが表示される。


「……任務情報?」


その文字を読み進めるたび、胸の奥がざわついた。

彼女はこの異世界――SENET《セネット》と呼ばれる場所で、重要な任務を背負っているらしい。

単なる戦士ではなく、何か重大な役割を持つ存在のようだ。


「巻き込まれたってことか、俺は……」


ただのゲーム好きの高校生の俺が、こんな戦場に放り込まれ、戦わなきゃならないなんて想像もしていなかった。

そして、目の前で倒れている彼女は、命を懸けてこの世界で戦っている。


「でも……」


無防備に横たわる彼女を見て、胸が締め付けられる。

このまま彼女を見捨てるわけにはいかない。

もし敵が再び襲ってきたら、彼女は命を落としてしまうかもしれない。


「俺が戦わなきゃ、誰が彼女を守るんだ?」


自分に問いかけるように呟いた瞬間、心の中で何かが変わった。

俺はこの世界に巻き込まれた。

そして、生き延びるためには戦うしかない。

そう考えた途端、覚悟が生まれた。


「やるしかないか……」


その時、彼女がかすかに呟いた。


「……通過ゲーム……ここは……」


「え? 何?」


彼女は弱々しく目を開け、俺を見つめながら続けた。


「ここは……SENET《セネット》……通過ゲーム……」


「通過ゲーム? それってどういう意味だ?」


彼女は遠くに見える大きな門を指差した。


「ゴールは……あの門……あそこが……出口……」


俺は彼女が指差す方向を見た。

確かに、異様に大きな門が遠くに見える。

これが、この世界の出口だというのか?


「敵は……人類よりも……上位の存在……」


彼女は限界に近い声で言った。


「ごめん……後で説明する……今は……とにかく逃げて……」


俺はすぐに彼女を支えた。

上位存在の正体について詳しく聞きたいが、今はそれどころじゃない。


「逃げるって……あんたを置いていけるかよ……」


彼女は再び意識を失っていた。


俺は深く息を吸い、次に何をすべきかを考える。

彼女を守りつつ、あの門に向かう。

それがこの「通過ゲーム」のルールなら、やるしかない。


「よし……決めた」


俺は覚悟を決め、彼女を抱きかかえながら歩き始めた。

コメント(0)
この作品に、最初のコメントを書いてみませんか?