目の前に倒れている少女――名前すら知らないが、彼女は深い傷を負い、今にも消え入りそうなほど弱っている。
息は浅く、何かを言おうとしているが、その声は届かない。
ここがどこなのか、何が起こっているのか、まったく理解できない。
「ここは……どこなんだ……?」
頭が混乱している。俺はただのゲーマーだった。
学校に通い、妹の
なのに今、俺はなぜこんな戦場にいるんだ?
周りの状況はゲームそのものだが、彼女が感じている痛みは現実だ。
遠くで爆発音が響き、地面が揺れる。
怪物たちが蠢きながらこちらに向かってくる。
その無言の恐怖が全身を襲う。
「くそ……どうすればいいんだ……!」
逃げたい気持ちはあるが、彼女を見捨てるわけにはいかない。
無力感に押しつぶされそうになり、足が動かない。
だが、自分だけ助かる選択肢は、どうしても選べない。
その時、視界の端に銃が転がっているのが見えた。
「……これだ!」
俺はゲームで何度もこの瞬間を経験してきた。
銃を手にし、ランカーになった記憶が頭をよぎる。
これはゲームじゃない――現実だ。
でも、今俺が頼れるのは、ゲームで磨いた技術しかない。
「やるしかない……!」
銃を手に取ると、体が自然に動いた。
ピークして敵の動きを確認。
クロスヘア《十字照準》を置く位置を瞬時に計算する。
震える手で引き金を引くと、銃声が響き、一体の怪物が吹き飛んだ。
「……当たった!」
驚きとともに、現実での命中感覚が確信に変わった。
ゲームで培った技術が、この現実でも通用する。
俺の中で何かが弾けた。
「これなら……やれるかもしれない……!」
俺は再び銃を構え、次々と現れる怪物に弾丸を撃ち込んでいく。
培った技術のおかげで、恐怖は次第に冷静さへと変わり、俺の手は自然に動き出す。
「くそっ! あと何体だ!」
次々と怪物が倒れ、俺の意識は次第にクリアになっていく。
手に伝わる銃の感触は、もうゲームのそれと何も変わらない。
俺は少女を守りながら、次の動きを冷静に考える。
「絶対に……生きて帰るぞ……
この異世界が何なのか、まだわからない。
しかし、今やるべきことははっきりしている。
目の前で傷ついている彼女を守り抜き、家に帰る。
それが俺の使命だ。
「覚悟を決めるんだ、灰島賢……ッ!」
俺はもう一度銃を構え、次の敵に立ち向かった。