突然、視界が暗転し、次の瞬間には青白い光が辺りを包んだ。
頭がぐらりと揺れ、まるで無重力の中に放り出されたような感覚。
何が起きているのか、まるでわからない。
足元が消え、目の前には見たこともない風景が広がっていた。
青く透き通った空が果てしなく続き、遠くの地平線には異様なほど巨大な岩が点在している。
まるでゲームの世界に迷い込んだかのようだ。
しかし、これは夢ではない。
俺は自分の胸を叩いた。
確かな感覚が返ってくる。
「……ここはどこだ?」
頭の中は混乱し、心臓はバクバクと鳴り響いていた。
何をしていたんだ?
どうしてこんな場所にいる?
恐怖が全身を駆け巡り、目の前のひび割れた地面が一層異様に見える。
さらに遠くでは、見たこともない生物がうごめいている。
その時、突然、轟音が耳に飛び込んできた。
振り返ると、遥か彼方で何かが爆発したかのような音が響いていた。
鼓動がさらに速くなる。
今すぐにでも逃げ出したい気持ちに駆られるが、動けない。
何が起きているのかまるでわからない。
ただ、この場所が普通じゃないことは確かだ。
「くそっ、俺はどうすれば……」
冷静になれ。
自分にそう言い聞かせるが、頭の中はパニックで足が震えて動かない。
現実離れしたこの光景に圧倒され、体が硬直してしまっている。
目に映る全てが理解を超え、心がついていけない。
その時、視界の端に何かが動いた。
近づいてみると、それは――ひとりの少女だった。
全身が傷だらけで、今にも倒れそうな姿で、必死に何かを守っている。
彼女の体は震え、限界が近いことが見て取れた。
「おい、大丈夫か……?」
声がかすれてしまう。
何を言えばいいのかわからない。
ただ、その姿に目を奪われていた。
彼女は敵と戦っている。
鋭い刃物のような武器を握り、数体の敵と対峙しているが、その表情は苦しげで、今にも崩れ落ちそうだ。
俺は――動けなかった。
助けたいという気持ちはあったが、恐怖で体が動かない。
彼女が必死に戦っている姿を、ただ見ているしかなかった。
目の前の圧倒的な光景に飲まれ、声すら出ない。
「お願いだ……動いてくれ、俺の体……っ!」
心の中で叫ぶが、体は石のように動かない。
彼女は次々と敵を倒していくが、その動きは次第に鈍くなっていく。
明らかに無理をしている。それでも俺は、立ち尽くすしかなかった。
そして、ついに彼女は限界を迎えた。
最後の力を振り絞って敵を一掃する。
直後、彼女は糸が切れたように倒れ込んでしまった。
地面に崩れ落ちた彼女は、もう戦える様子ではない。
俺はその姿を見て、ただ無意識に駆け寄っていた。
目の前で倒れる彼女を、何もできずに見ていただけだ。
罪悪感に押しつぶされそうになる。
その時、彼女がかすれた声で呟いた。
「君……どこから“ログイン”してきたの……?」
その言葉が、俺の意識を現実に引き戻す。
「ログイン?」
どういうことだ?
頭の中に疑問が渦巻くが、今は考えている余裕はない。
この異常な場所、彼女が言った“ログイン”という言葉――すべてが謎に包まれている。
だが、今考えるべきはそれじゃない。
目の前に倒れている彼女を助けなければならないという、本能的な思いが俺の中で燃え上がった。
――彼女を守らなければ、と。