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アフタースクール・ウォーゲーム
鮫洲鮫
ゲームVRゲーム
2024年09月25日
公開日
65,688文字
連載中
「18歳以下しか参加できない戦争の紛い物――このゲームは、そう呼ばれている」

突如現れた青白いドームにより、灰島賢《はいじまけん》の日常は一変する。
世界は謎の“上位存在”に支配され、18歳以下の若者たちは「SENET」と呼ばれる命懸けの戦いに巻き込まれた。
ただのゲーマーだった賢もまた、仮想空間SENETの中でプレイヤーとして戦うことを余儀なくされる。
多くの仲間と共に、人智を超えた強敵に挑む中、賢は徐々にSENETに隠された恐るべき真実に気づき始める。
守ってくれる大人は戦場《ここ》にはいない。
友情、裏切り、葛藤が渦巻く戦場で、賢はどんな未来を選ぶのか――。
仲間との絆、成長、そして命を懸けた戦いの物語が、いま幕を開ける!

プロローグ

俺は、ただひたすらに逃げていた。


人生という、逃れようのない化け物から。


16歳、高校二年生。


何もかもが思い通りにいかない日々を、俺はただ流されるままに過ごしていた。


かつてはゲームの世界で勝ち続け、頂点に立っていた自分がいた。

あらゆるVRシューティングゲームで、誰もが俺の名前を知っていた。

〈gray_sage〉というアカウント名は、どのランキングでも上位に輝き、"伝説のランカー"とまで呼ばれていた。


けれど、それはもう過去の話だ。


――あの日、妹の〈葉奈はな〉が俺のアカウントで遊んでしまった。


ゲームの中で俺が築き上げたものは、すべて一瞬で崩れ去った。

葉奈がミスを連発して、俺のランクは見る間に下がっていった。


だが、俺は怒れなかった。怒れるわけがない。

妹が純粋な笑顔でこう言ったからだ。


「お兄ちゃんが楽しそうだったから、葉奈も遊びたくて……」


その一言で、すべての苛立ちや焦りは消えていった。

俺にとって何が一番大切なのか、改めて気づかされた。


ランクなんて、どうでもいいんだ。

家族がいて、笑って過ごせる時間がある。それだけで十分だ。


海外赴任で両親は長いこと家にいない。

たまに帰ってきてもすぐに仕事で出ていってしまう。

俺と葉奈はふたりで支え合って生きてきた。


それからは、もう必死にランカーを目指すことはやめた。

葉奈と一緒に、気楽にゲームを楽しむようになった。

二人で一つのアカウントを使い、楽しい時間を共有した。


それでいいと思っていた。

俺が頂点に戻らなくても、"伝説のランカー"としてネット上で語り継がれていればそれで構わない。


「別に一番になれなくてもいい。大切な家族さえいれば、それで」


そう自分に言い聞かせながら、平凡な日常を過ごしていた。


ゲームがすべてじゃない。

現実世界で守るべきものがある。

それが俺にとっての生きる理由だ。


しかし――。


その平凡な日々は、突然の異変によって終わりを告げた。


学校の帰り道、俺は異様な光景を目にした。

空が裂けたように、何かが降りてくる。


その瞬間、頭の中に響く不気味な音。そして、景色が歪んでいく感覚。


「――なんだ、これ……?」


目の前の世界が、ゆっくりと暗転していく。


現実が崩れ、見たこともない異次元が広がっていく。


これは、ただの夢じゃない。嫌な予感が、背筋を冷たくする。


何かが起きる――それは、俺がこれまで大切にしてきたものを奪っていくような、そんな予感。


大切な家族さえも失う。


そんな考えが頭をよぎった瞬間、俺は恐怖に駆られていた。


もう、ゲームの世界で逃げ回るだけじゃ済まない。


現実が崩れ、俺の世界が変わろうとしていた。

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