それからどうやって自宅に戻ってきたのか。
天使様にテレポートして貰った。
狭い六畳一間で、うらぶれた男やもめの部屋に天使様がいる姿は非日常を感じる。
「で、そのバランサーって何 ? 俺の死が何に関係するって? 」
「えぇっとですねえ……」
「早く言え」
「……し、知らないのです! ! 私はこんな可愛く美しいのに末端の天使なので! 詳しい話は教えてもらってないのです! !」
天使様はどやあと胸を張り、そう言い切りやがった。
「……死ぬか」
俺が窓を開けて今にもダイブしようとしたら、渾身の力で抱きつかれた。
「ダメですってばあああ! ! 死んじゃダメですようう! !」
「うるせー! !耳元で騒ぐな!! 」
しゅんと項垂れつつも羽交い締めにする力は強く、俺は窓から離された。
「はあ……秘密ならさ、お前何が出来んの? 宝くじ当てたりとか出来るの? 」
「えーと……」
「死のう」
「だから死んじゃダメなんですってばあ!!宝くじ当てたことはないだけですからあーーー! ! 」
「いちいちしがみつくな! !なら何が出来るんだ? 」
「えっと、お料理できます! 冷蔵庫はいけーんって!お酒しかないじゃないですか!どうやって生きてきたんですか! ! 」
買い物行きましょ! ! と騒ぐ天使様にうんざりしながら、羽とかはどうすんだと声をかけたら、ふふんと胸を張り、途端天使様が光に包まれた。
現れたのはかなりの美少女で、翼と頭の輪っかと普通の耳の違いだけでこの天使様が元々見目が良いのだと思い知らされた。
「これなら地上の人に見えるでしょう? 」と宣うのを思い切り頭をはたいてやった。
「つまりか、お前は俺に取り憑くと? 」
「取り憑くって悪魔じゃあるまいし! 前言撤回を求めます! !」
痛いですよう、と涙目になる天使様に深いため息を吐いて、似たようなもんだと呟いた。
えーと、今日から天使様が俺にとりつくらしいです。
買い物行く気満々なのは、ついてかないと行けないんだろうな……。
「さて、出かけますか」
窓から身をを乗り出す天使様に、お前今人間の姿だろうが、と突っ込んでやった。