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カタツムリの婚活
左藤 謙吾
文芸・その他ショートショート
2024年09月25日
公開日
2,212文字
完結
ある日カタツムリが婚活に行くのだが、その日は朝起きると、なぜか背中の殻がなくなっていたのだった。果たして、無事恋人を見つけることはできるのか!

第1話

 本日。とあるホテルで、生き物たちの婚活パーティーが開かれていた。そして、そこへやってきたのは、一匹のカタツムリだった。しかし、そのカタツムリは今日の朝、目が覚めると背中の殻がなくなっていたのだった。つるんとした背中。そんな状態で、受付にやってきた。

「お名前は?」

 受付の黒ヒョウが言った。

「カタノツムオです」

 カタツムリは、答えた。

「種別は?」

 カタツムリは、正直にこう言った。

「カタツムリです」

 しかし、受付の黒ヒョウは戸惑っていた。

「カタツムリ、、?」

「はい」

「ナメクジ、ですよね?」

「いや、カタツムリです、、」

「殻はどこへ?」

「朝起きると、なくなってました」

「そうですか、、お気の毒に、、」

 そして、黒ヒョウは言った。

「こちら、名札です。是非、いいお相手を見つけてくださいね」

 ツムオは、名札を首からかけ、会場へ入った。会場へ入ると、様々な生き物がいた。そして、司会のカラスが話し始めた。

「それでは、男性陣はそちらに並べられている椅子にお座りください。女性陣は、順番に5分ずつ男性と話をしていただきます。そして、最終的に気に入った相手に投票していただきます。今回は、男性5人女性5人なので、合計25分です。それでは、スタート!」

 すると、ツムオの前にバッタがやってきた。

「こんにちは」

 ツムオは挨拶をした。

「こんにちは」

 バッタもそう返した。

「お綺麗ですね」

 ツムオは、そう言った。すると、バッタはこう返した。

「ありがとうございます。ナメクジさん」

 ツムオは、少し悲しそうにこう言った。

「いえ、カタツムリなんです、、」

 すると、バッタは言った。

「そうなんですか! 大変失礼しました!」

 続けてバッタはこう聞いた。

「殻はどこへ?」

「朝起きるとなくなってまして、、」

 ツムオはそう言った。そして、ツムオはバッタに言った。

「あなたは、ショウリョウバッタですよね?」

 すると、バッタは言った。

「失礼ね! 違うわよ!」

「え?」

「私は、ショウリョウバッタモドキよ!」

「分かるかあ!」

 そんな会話をし、5分が経った。

 次にやってきたのは、アナグマだった。

(やばい、、カタツムリの天敵だ、、)

「こ、こんにちは」

 ツムオは、怯えながら言った。

「こんにちは」

 そして、ツムオは聞いた。

「僕のこと美味しそうだとか、思ってませんよね、、?」

 すると、アナグマは言った。

「え? そりゃそうでしょ! 私、ナメクジは食べませんよ」

 ツムオは、悲しそうにこう言った。

「カタツムリなんです、、」

「えー!?」

 アナグマは、驚いた。

「食べますか?」

 ツムオはそう聞いた。

「いえ、結構です、、」

 そんな感じで5分が経った。

 次にやってきたのは、カメムシだった。

「こんにちは」

 ツムオは挨拶をした。

「こんにちは」

 カメムシもそう返した。すると、カメムシが言った。

「私、あまりモテなくて、、」

 自信のなさそうな態度に、ツムオは少し応援したくなった。すると、カメムシが言った。

「多分、背中のホクロが原因だと思うの」

 しかし、ツムオは思った。

(臭いじゃないかな、、)

 そして、カメムシが言った。

「ナメクジさんは、モテますか?」

 しかし、ツムオは言った。

「カタツムリです!」

 そして、5分が経った。

 次にやってきたのは、オウムだった。

「こんにちは」

 ツムオは挨拶をした。

「コンニチハ!」

 オウムはそう言った。

「お名前は?」

 ツムオは聞いた。

「ボク、ピーちゃん!」

 オウムはそう言った。

「第一印象はどうですか?」

 ツムオが聞くと、オウムは言った。

「エサ、チョーダイ!」

「いや、第一印象は、、?」

 しかし、オウムは言った。

「ピーちゃん! クッサーイ!」

 ツムオは、会話を諦めた。

 そして、5分が経った。

 次にやってきたのは、ナメクジだった。

「こんにちは」

 ツムオはそう言った。

「こんにちは」

 ナメクジもそう返した。すると、ナメクジが言った。

「同じ種類だから気が合いそうですね」

 しかし、ツムオは言った。

「いや、実は僕ナメクジじゃないんです、、」

「え?」

 ナメクジは、驚いていた。

「今日朝起きたら殻がなくなってて、、」

「カタツムリなんですか?」

「そうなんです、、」

 すると、ナメクジが言った。

「でも、私今のあなた凄くタイプよ」

「え?」

 そして、ナメクジは言った。

「もし良かったら、私に投票してくれないかしら?」

「ほんとに、、?」

 ツムオは、信じられなかった。しかし、ナメクジは言った。

「あなたは私のことどう思う?」

「凄く綺麗だと思います、、」

 ツムオは正直にそう答えた。

「じゃあ、決まりね」

 こうして、お互いに好意を寄せた2人は、数年後、結婚生活を送っていた。

「あー、気持ちよかったー」

 ツムオは、お風呂から上がりリビングへ向かった。すると、妻のナメクジが言った。

「あなたちょっと太ったんじゃない?」

「そうかなあ」

「最近手伝いもしてくれないし、怠けてるんじゃない?」

 すると、インターホンが鳴った。

「はーい」

 妻が玄関へ向かった。そして、戻ってきた妻は、背中に大きな殻を携えていた。

「あなた、これ、、」

「え?」

 それは、ツムオのなくした殻だった。

「見つかったみたい」

「そうか」

「久しぶりにつけてみたら?」

「そうだな」

 ツムオは、殻を背負ってみた。

「あれ? 入らない、、」

「ほんと?」

「やっぱり、太ったからだ」

 すると、妻のナメクジは言った。

「そっか、、でも、どうしてそんなに太っちゃったの?」

 すると、ツムオは妻にこう言った。

「幸せ太りだよ」

 しかし、その言葉を聞き妻は言った。

「幸せなのは、あなただけよ」

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