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21 属性は



 ドロップした刀を握ってしばらくすると、部屋の奥にポータルが現れた。

 それを通ると、なんと教師たちが待っている場所に出てくることができた。

 俺たちが行方不明になっていることは気付かれなかったけれど、持ち帰った大量の魔石矢物品には驚かれた。

 どういうことかを説明すると、さらに驚かれた。


「落とし穴の先に隠しエリア⁉︎」

「まさか、そんなものがあるなんて」

「いや、どこの罠だそれは?」

「そんなところに落とし穴の罠なんてあったか?」


 俺と……というか主にスラーナがしてくれた報告に教師たちは驚き続ける。


「は? なんで?」


 説明が一通り終わり、実習の範囲内の地図を見ながら話し合っている教師たちを眺めていると、別方向から驚きの声が聞こえた。

 知っている声だったので振り返れば、キヨアキたちだ。


「あら、遅かったのね」


 スラーナが冷たい笑みを彼らに叩きつける。


「なんで、お前ら……」

「あなたたちのおかげで、私たち、すごい大冒険してきたのよ。ほら」


 スラーナは地面に置いた背負いバッグを掴んで見せる。

 そこには上の部分を閉じることもできなくなって、今にも溢れ出しそうな魔石が覗いている。


「タケルもすごい武器を手に入れることができたのよ」

「……」


 スラーナの手が俺の腕を掴み、そっちで握っている刀を示す。


「それで? 私たちよりも帰ってくるのが遅かったけど、あなたたちはきっと、私たちよりもすごい冒険をしてきたのよね? だって有能だから」


 俺は、スラーナってけっこう毒を吐くんだなと思うだけで、キヨアキの反応を眺めていた。

 煽られたキヨアキは、ブルブル震えて顔を赤くしている。

 そんな様子をスラーナは含み笑いで見下ろすように眺めている。

 俺としては、キヨアキみたいな面倒な権力者、あるいは権力者の下にいるだけで自分の力だと勘違いしているタイプとは付き合ったことがあるので、心を無にする方法を知っている。

 なので、対策を講じることはあっても、それに対してどうという感情は抱かないようにしている。

 やり合うことで認め合う関係になることもあるかもしれない、なんて思ったこともあったかもしれないけれど、改めてスラーナとキヨアキの関係を見てもそうは思えなかった。

 例えに使ったクトラとタレアとは、全く違う。

 これは、仲直りはしないかな?


「こっのっ!」


 ついにキヨアキが怒って、近づいてきた。

 なにをするのかと思ったら、俺の持っていた刀に手を伸ばした。

 奪うつもりか?

 いや、渡さないけど。

 握っている手に力を入れるだけで、キヨアキがなにをするつもりなのかを見届けようとした。


「なにがっ! こんなものっ!」


 彼は、予想通りに俺の刀に手を伸ばし……。


「ぎゃあっ!」


 次の瞬間、握った手から血を吹き出し、悲鳴とともに床を転がった。


「なにが起きた!」


 悲鳴が聞こえて教師たちがやってきた。


「バカモノっ!」


 スラーナが説明すると、教師たちは揃って痛みに呻くキヨアキを罵倒する。


「ドロップ品は所有者を選ぶものがあるというのは、授業でやっているぞ!」

「そもそも、他者の獲得したドロップ品を奪おうなんて許されることではない!」

「恥を知れ!」


 教師たちは散々に罵倒しながら、キヨアキの治療をしている。

 ダンジョンへの挑戦は命懸けの作業だからか、教師たちは緩急の差が激しく、怒るときは荒い言葉をよく使う。

 ミコト様や大爺も『愚者は死んで初めて役に立つ』なんてことを平気で言う。

 座学の先生たちの礼儀正しいというか、優しいというか、そういう教え方の方が新鮮で驚きだったりする。


 キヨアキの傷はかなりひどいようだ。

 鞘を握った手に拒否反応を起こしたのだから、手の中で爆発が起きようなものだろう。

 さすがにスラーナもその姿を笑うことはできずに、顔を青くしている。


「大丈夫だ。これぐらいなら治る」

「学園の治療医のレベルの高さに感謝するんだな」


 その言葉にあからさまにホッとした様子を見せた。

 キヨアキのお供たちは近づいてこなかったし、それ以外のクラスメートたちはさらに遠巻きに様子を見ているだけだった。

 応急処置をされたキヨアキが教師によって学園に運ばれると、オトモの二人はようやくその後を追いかけて消えた。

 そしてその後になって、クラスメートたちは俺たちに近づいてきて、隠しエリアのことを聞きたがった。


 学園に戻って自分の属性がわかったけれど、なんだかよくわからないと告げると、教師や術理力のことを研究している人たちの前で見せることになった。

 その中にはジョン教授もいた。


 とりあえず鉄の棒を相手に練習用の剣を使って斬ってみせた。

 前はできなかったけど、いまならできる。

 刃のある剣より見える線の数は少ないけれど、見えているのだから斬ることはできる。


 さらにその後で、何人かの教師の攻撃を避け続けるということを行なった。

 最初は制限なしで、その後、目隠しをして、さらに耳栓まで追加してみた。


「どういうことだ?」

「斬るだけなら魔眼の弱点看破だとも言えるが」

「剣術戦闘に特化した剣豪という可能性も。だが……」

「回避もできる? 未来予知? でも、未来予知では斬れない」

「面白い。とても、面白い」


 教授たちは額を突き合わせて話し合い続ける。


「あのう、それで、俺の属性って……」

「うん、タケル君、わからない」

「はあ?」


 教授たちを代表してジョン教授が俺に説明した。


「初めて観測する能力だ。故に、なにかと断言することはできない」

「はぁ」


 それだと、どうなるんだ?


「だが、こういう場合に使う名前は決まっている。君の属性は超だ」

「超?」

「なにかを超える可能性を秘めた能力という意味だ。期待しているよ」

「ええと……はい?」


 期待されても、なにをすればいいのかわからないんだけど?



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