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第57話 通り雨

不景気のせいか、最近、妙に治安が悪くなっている気がする。

近所でも、空き巣や強盗が頻発しているらしい。


親からも注意しろと言われているから、夜遅い時間は出歩かないようにしてるし、戸締りもしっかりやっている。

一人暮らしは何かと怖い。

だから休みの日でも、暗くなる前に家に帰るようにしていた。


その日も、夕方になったので家路を急いでいたんだけど、途中で人だかりができているのを見つけた。

家の周りに大勢の人が集まっている。


なんだろう?


そう思ってのぞき込もうとしていたとき、後ろからポンと肩を叩かれた。

振り向くと、そこには高校のときに仲が良かったKがいた。


卒業以来の再開に、私のテンションは一気に上がった。


「Kじゃん、元気だった?」

「元気元気。まあ、貧乏だけど」

「あははは。それは私も同じだよ」


高校時代のように軽口を言い合いながらも、やっぱり人だかりが気になった。


「ああ、あの人だかり? なんか、あの家で強盗殺人があったみたいだよ」

「うっそ! 怖いね」

「最近、こういう事件多いもんね」

「うん。だから、私も結構、気を付けてるよ」

「でも、犯人は返り血を浴びてるから、すぐ見つかって捕まるんじゃないかな」

「そうなんだ。早く捕まってくれるといいんだけど……」

「連続殺人犯だから、警察もきっと力を入れて捜査すると思うよ」


Kの言葉にホッとしたときだった。

ポツポツと雨が降ってきた。


「うそー! 雨? 予報じゃ0パーセントだったのに」

「通り雨ってやつだね」

「私、傘持ってないよー」


私がそう言うと、Kは持っていたカラフルな傘をバッと広げた。


「相合傘、する?」


悪戯っぽい笑みを浮かべるK。

ちょっと恥ずかしかったけど、濡れるよりはマシ。


「じゃあ、お願いしようかな」


私はKの傘に入った。


そして、高校時代の思い出話をしながら帰った。


終わり。
















■解説

Kは強盗殺人、犯人が返り血を浴びているだろうこと、犯人は連続殺人犯だと妙に詳しすぎる。

さらに、天気予報で雨が降ると言っていないのに、Kが傘を持っているのも怪しい。

Kが強盗殺人犯の可能性が高い。

Kはカラフルな傘を使って返り血を避けたと考えられる。

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