不景気のせいか、最近、妙に治安が悪くなっている気がする。
近所でも、空き巣や強盗が頻発しているらしい。
親からも注意しろと言われているから、夜遅い時間は出歩かないようにしてるし、戸締りもしっかりやっている。
一人暮らしは何かと怖い。
だから休みの日でも、暗くなる前に家に帰るようにしていた。
その日も、夕方になったので家路を急いでいたんだけど、途中で人だかりができているのを見つけた。
家の周りに大勢の人が集まっている。
なんだろう?
そう思ってのぞき込もうとしていたとき、後ろからポンと肩を叩かれた。
振り向くと、そこには高校のときに仲が良かったKがいた。
卒業以来の再開に、私のテンションは一気に上がった。
「Kじゃん、元気だった?」
「元気元気。まあ、貧乏だけど」
「あははは。それは私も同じだよ」
高校時代のように軽口を言い合いながらも、やっぱり人だかりが気になった。
「ああ、あの人だかり? なんか、あの家で強盗殺人があったみたいだよ」
「うっそ! 怖いね」
「最近、こういう事件多いもんね」
「うん。だから、私も結構、気を付けてるよ」
「でも、犯人は返り血を浴びてるから、すぐ見つかって捕まるんじゃないかな」
「そうなんだ。早く捕まってくれるといいんだけど……」
「連続殺人犯だから、警察もきっと力を入れて捜査すると思うよ」
Kの言葉にホッとしたときだった。
ポツポツと雨が降ってきた。
「うそー! 雨? 予報じゃ0パーセントだったのに」
「通り雨ってやつだね」
「私、傘持ってないよー」
私がそう言うと、Kは持っていたカラフルな傘をバッと広げた。
「相合傘、する?」
悪戯っぽい笑みを浮かべるK。
ちょっと恥ずかしかったけど、濡れるよりはマシ。
「じゃあ、お願いしようかな」
私はKの傘に入った。
そして、高校時代の思い出話をしながら帰った。
終わり。
■解説
Kは強盗殺人、犯人が返り血を浴びているだろうこと、犯人は連続殺人犯だと妙に詳しすぎる。
さらに、天気予報で雨が降ると言っていないのに、Kが傘を持っているのも怪しい。
Kが強盗殺人犯の可能性が高い。
Kはカラフルな傘を使って返り血を避けたと考えられる。