少年はどうしても、新しいタブレットが欲しかった。
周りはみんな持っていて、少年が持っている古いタイプでは流行りのゲームもできない。
少年はみんなの話についていけないことも多くなり、孤立しつつあった。
母親に何度も買って欲しいと懇願したが、あんたには必要ないでしょの一点張りだ。
ある時、少年はこんな話を目にする。
自分の臓器を売って、スマホを買ったという話だ。
少年は臓器なら、売っても親にバレないだろうし、いい案だと思う。
そして、実際に臓器を買い取ってくれるところがないかを探し始めた。
そんな時、突如、少年の前に悪魔が現れて、ある提案をしてくる。
それは、悪魔と契約して、あるものを差し出せば、最新のタブレットを渡すというものだった。
少年は躊躇する。
悪魔なんかと契約したら、何をされるかわからないからだ。
だが、悪魔はそんな少年の心の中を読んだように、言葉を続けた。
「大丈夫。魂や寿命をよこせというわけじゃない。体の先っぽをちょっと貰うくらいだ。たくさんある、先っぽをね」
「健康には一切、影響しない。それどころか、お前が100歳まで生きれることを保証しよう」
「俺がもらうものは、最初から無い人間だっているし、生きていく中で無くなる人間だっている」
「多少は生活が不便になるかもしれない。だが、そのおかげで国からお金が貰えるかもしれないぞ」
「……え? 目だって? いやいや、そんなものは貰わないよ。見えなくなったら、せっかく貰ったタブレットでゲームができないだろ? 俺は悪魔だけど、そこまで酷いことはしないさ」
「しかも、親にバレないようにしてやるぞ。親の記憶を改ざんするから、お前が怒られるようなこともないのさ」
少年は少し怖かったが、悪魔と契約することにした。
どうしても、新しいタブレットが欲しかったのだ。
悪魔と契約を交わすと、少年の手には最新のタブレットが載せられていた。
少年はさっそく、起動させてゲームをしようとした。
しかし、あることに気付き、少年は最新のタブレットを叩き割った。
終わり。
■解説
悪魔が契約で持っていったものは少年の指。