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第37話 恋の行方

最近、この町は物騒になってきた。


通り魔や行方不明者が増えている。




ニュースで、不景気のせいって言っているのを見た。


不景気になると、治安が悪くなるらしい。




俺は完全に他人事だったのだが、友人が夜に不審者に追いかけられた。


そのショックのせいで、会社を辞めて、部屋に引きこもってしまった。




なんとか気を紛らわして欲しいと思って、頻繁に友人の家に通った。


アニメとかゲームを持って、友人の家に行き、休みの日は泊りがけで友人と遊んだ。


その甲斐があってか、友人は少しずつ外に出られるようになった。




そんなある日、よく行く本屋に、友人と立ち寄った。


すると、友人はある女性店員をジッと見ていた。


最近入った、新人の店員らしい。




友人は俺に、どうやって声をかけたらいいかを相談された。


どうやら一目惚れらしい。


いきなり誘ったりすると警戒されるから、常連になって少しずつ話すところから始めたらしい。




数ヶ月もすると、世間話もするようになっていた。


傍から見てもかなり仲がいい。


時々、仕事中に話し過ぎて、店長に怒られているくらいだ。




それから少しして、なんと、友人は彼女の仕事が終わった後に、家に送るようになっていた。


今は治安が悪いからと言ったら、喜んでお願いしてきたらしい。




だから俺は、友人にそろそろ仕事を探したらどうかと提案した。


ゆくゆくは結婚するのかもしれないんだから、仕事についていた方がいいと説得する。


すると友人は、覚悟を決めた顔でこう言った。




「もし、俺が行方不明になっても探さないでくれ」




俺は、最初、友人が何を言っているのかがわからなかった。


だけど、数日後、その意味がわかった。




友人は行方不明になり、本屋の店員である彼女もいなくなってしまった。


どうやら、二人は駆け落ちしたみたいだ。




なるほど。そういうことか。




友人の恋が成就したことは純粋に嬉しかったが、駆け落ちするのなら、俺にも一言言って欲しかった。




まあ、言われても、俺はきっと、駆け落ちなんて反対しただろう。


それを見越して、俺にあんな風に言ったんだと思う。




それにしても、駆け落ちか……。


彼女の方に事情があったんだろうか。




そういえば、最近、事件の話を聞かなくなった。




友人が駆け落ち先も、治安がいいところだといいんだが。


終わり。















■解説

本屋の新人店員の女が、通り魔殺人の犯人。


友人は夜に、彼女に襲われている。


しかし、夜だったため、顔をはっきりと見ていない。


そんな彼女を本屋で見た友人は、それを確かめるために彼女に近づいた。


そして、友人は確信を持ち始めて、語り部に「行方不明になっても探さないでほしい」と言った。


それは、語り部の男を巻き込まないためだったと考えられる。


しかし、彼女にもそのことがバレ、友人は殺され、彼女自身も町から出て行ってしまった。


この町の治安がよくなったのは、彼女が町からいなくなったため。


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