ミザは私にとって、天使だった。
どんなに落ち込んでいても、私に素敵な笑顔を向けてくれる。
だから、私は一生、ミザを守ろうと誓った。
ミザが7歳の頃。
突如、ミザが奇行し始めた。
両親は悪魔に取り憑かれた、なんて言っているけど、私は知っている。
2人が隠れてミザに虐待をしていたことを。
そのときのトラウマでミザは奇妙な行動をするようになってしまったのだ。
「お姉ちゃん。ミザ、おかしくなっちゃったの?」
ミザが不安そうに私を見る。
可愛そうなミザ。
大丈夫。私はどんなことがあってもミザの味方。
例え、笑えなくなってしまったとしても、ミザは私の天使。
それは変わらない。
だが、そんなある日。
両親は悪魔祓い……いわゆる、エクソシストを連れて来たのだ。
エクソシストはミザに対して、悪魔に取り憑かれていると言い出した。
悪魔を追い出せば元に戻る、そんなことを言っている。
なんという的外れ。
そんなことをしても、何の意味もない。
私は悪魔祓いを止めようとした。
……だけど、もしそれで、ミザにまた笑顔が戻るなら。
まさに藁にもすがる思いだった。
ミザにもう一度、笑顔が戻るなら、私はどうなってもいい。
だからお願い。
ミザ。もう一度、笑って。
エクソシストはミザの深層心理に語り掛ける。
心の奥にある、蓋をしているものを開かないといけない、と。
トラウマを克服しないと、悪魔は出て行かない、と。
エクソシストはミザのトラウマをこじ開け、抉った。
親に虐待されていたことを、無理やり思い出させている。
ミザが泣き始めた。
「お姉ちゃん! 助けて! いやだよ!」
「ダメだ! 逃げるんじゃない! 悪魔に頼ろうとするな! 乗り越えるんだ!」
「いやあああ! いやいやいや! 苦しい! 助けて! お姉ちゃん!」
エクソシストはさらにミザを追い詰める。
両親もその行為を黙って見ている。
期待した私が馬鹿だった。
これからは私が、私だけがミザを守り続けよう。
私は両親とエクソシストを殺した。
終わり。
■解説
ミザがお姉ちゃんと呼んでいる、語り部が悪魔である。