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第23話 特定屋

俺は特定屋をやっている。

最近、流行りのアレだ。

依頼があれば、SNSでアップされている写真から個人の情報を特定するっていうもの。


でも、誰でも彼でも受けるわけじゃない。

ターゲットが美人のときの場合のみ受ける。


それは自分が美人の情報を得たいから、というわけじゃない。

その逆だ。


俺は美人が嫌いだ。

人を見下し、騙し、平気で弄ぶ。

俺も随分と酷い目にあった。

これは復讐の意味を込めているのだ。


大体、特定屋を利用されるということは、その人に何かやったってことだ。

つまり、自業自得ってわけ。

俺みたいに慎ましく生きていれば、誰にも恨まれることは無い。

SNSに色々アップしても問題なし。


でも美人はダメだ。

何気なくアップした画像から、個人情報を丸裸にされる。


そして、今日もこのアカウントの特定をお願いしますって依頼が来る。

自分の美人への復讐を兼ねながら、お金を稼ぐ。

実に俺にピッタリの仕事ってわけだ。


そんなとき、少し変わった依頼が来た。

大量の写真の画像が送られて来て、その写真のおおよその場所を特定して欲しいというものだ。

普通はアカウントを指定してくるものだが……。


さらに変なのはその画像が加工されているってところ。

恐らく、そこに人物が写っているのだろうが、そこにモザイクがかけられていたり、消されていたりしている。

でも、これじゃ、相手が美人かどうかわからない。

依頼を受けるかどうかの基準が判定できない。


相手は結構な金額を提示してきたが、俺は金で動くわけじゃない。

ポリシーがある。

俺は相手の顔が知りたいと送った。


だが、相手はこの人の情報は、俺だけが知りたい。

あなたにも、知られたくないと返ってきた。


それなら依頼を受けることはできないと返すと、渋々、その人の画像が送られてきた。

確かに物凄い美人だ。

独り占めにしたい気持ちもわかる。

俺は依頼を受けると返答した。


この依頼は難航した。

人物のところが加工されていたから、純粋に風景からヒントを得るしかない。

実は、結構、人が写っている部分からもヒントを得られることが多いのだ。

だけど、たまには、こういう縛りも面白い。


俺は一週間をかけて、その場所を特定した。

なんと、俺の近所だったことに、少し驚いた。

まさか、近所にあんな美人が住んでいたとは。

そして俺は、依頼主に場所を知らせて報酬を受け取った。


次の日の仕事帰り。

俺が最寄駅から出た時だった。

いきなり、美人の女が目の前に立った。

見たことがあるような気がするが、誰だかわからない。

いきなり女はナイフを取り出し、俺の腹を深々と刺した。


周りからの悲鳴と、薄れゆく意識の中、女の「あんたのせいで……」という言葉を聞いた。


終わり。











■解説

依頼人は最初、画像の人物を加工して語り部に送ったが、後に「人物だけ」の画像を送っている。

結局はターゲットの顔を語り部に教えたのに、加工前の画像を送り直していない。

加工で消されたところの人物と、個別に送った人物は同一ではない。

消されていた人物は「語り部自身」が写っていた。

つまり、語り部は、依頼されて「自分が住んでいる場所を特定」していた。


そして、依頼者は、語り部に特定されて、何かしらの被害を受けた女性。

女性は恨みによって、語り部を刺した。

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