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第12話 youtuber

俺はユーチューバーをやっている。


まあ、底辺もいいとこなんだけど。


大学のときに就活を失敗して、2年くらいずっとニートしてたんだけど、親の「そろそろ働け」っていうオーラがヤバい。

夜に、親父が追い出すとかなんとか母ちゃんと話しているのも聞いた。


かといって、今更、会社に行って働ける気がしない。

フリーランスってやつだと、家からでも仕事ができるみたいなんだけど、特別な技術なんて持ってないから無理。


だから、なんの取り柄もない俺ができる、ユーチューバーを選んだってわけ。

今やなりたい職業の上位にいるくらいだから、立派な職業だ。


で、やってみたんだけど、大爆死。

3ヶ月毎日更新したのに、再生数は1桁がザラ。

収益化すらできない状態。


マジでふざけんな。

こんなに努力してるのに、報われないとか、世の中、絶対に間違ってる。

クソ面白くもないやつらが、登録者100万とかいってるのに、おかしいだろ。

俺の方が絶対に面白いはずなのに。


とは言え、文句を言ってても仕方ない。

そこで、俺は色々と自分の動画を分析してみる。

やってみると、確かに俺の動画はパンチが弱い。

つまり、地味なんだ。

そこで、今、流行ってるものをやってみることにした。


早食いとか、コーラから泡が溢れるやつとか、色々。


再生数が少しは上がったけど、3桁はいかない。

しかも、コメントには「そのネタ古い」なんて書かれる始末。


クソ! もっと過激なことをやらないと!

……でも、何も思いつかない。


そんなとき、ある情報が入ってきた。

登録者数が数千のユーチューバーの、ある動画がかなりバズったというのだ。


再生数は300万回以上。

そのユーチューバーはもう、3年くらい毎日投稿していたが、鳴かず飛ばずだったみたいだ。

その動画で一気に上まで駆け上がったわけ。


動画は世間ではかなり批判されたみたいだ。

なんか、テレビのニュースにもなったらしい。

それを気に病んでか、そのユーチューバーはその動画以降、1回も動画をアップしていない。


チャンスだ。

俺はそう思った。


批判されたとしても、バズれば勝ち。

言いたいやつには言わせておけばいい。


だから俺はその動画をパクることにした。

幸い、それをマネした奴はまだいないらしいし。


どうやら、その動画では、道具とかそういうのは必要ないらしい。

重要なのは場所、みたいだ。


概要欄に場所が載っていたので、行き方を調べていると、そのユーチューバーのチャンネルが消されるかもしれないという情報が入ってきた。


ますます、急がないとならない。

でも、もし、そのチャンネルが消されれば、その動画と同じことをやってるのは俺だけということになる。

そうなれば、俺の動画も300万回再生されるかもしれない。 


俺はとにかく急いだ。

1日近くかけて、その場所に辿り着いた。


いやー、かなり苦労した。

まあ、これだけ苦労したんだから、報われるべきだよな。


さてと、苦労したと言っても、ここからが本番。

動画と同じことをしなくてはならない。


よし、やるか!


俺はそのとき、初めて動画を再生した。 



終わり。















■解説

バズったユーチューバーは、多くの人から批判されたこと、その動画以降一度も動画をアップしていないこと、動画を撮った場所が「苦労しないと行けない場所」ということから、かなり危険なことをして、「死んでしまった」と考えられる。


これは、「他に真似をしている人がいない」ということからも、その可能性が高い。

そして、語り部は、「実際にその動画を見ずに」やろうとしている。


現地で、動画を再生しながら「真似る」ということは、結末はバズったユーチューバーと同じになることは想像に難くない。

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