「それで死んだと」
「誰がどう見ても力を合わせて、って感じだったんだけどなぁ」
案の定…と言うべきなのだろうか?俺は噛み殺されてイリスさんと再会していた。
「まぁ、ロクに戦闘経験もせず実戦投入されれば死ぬのは明白です」
「それはそうだけど…お約束であるじゃん。覚醒したり急に戦えたりさ」
「残念ですが諦めてください」
…ですよね。とイリスさんに望みを両断された俺は溜息を吐く。
「そういえば…現実はどうなってるんだ?既に戦闘が終わったりしてるのか?」
「そんな訳もなくちゃんと貴方が死んだままの状態ですよ」
「え、ってことはまだ戦闘中?」
「戦ってる…ってより時が止まってるって言う方が適切ですね」
「…ってことは俺が戻ったら状況も再開するってこと?」
「その通りです。あのドキドキ感をまた味わうことが出来て良かったですね」
「…普段に比べて随分と辛辣ですね(ってより若干怒ってる?)」
「理不尽とは言いましたけど。もうちょっと頑張ってみては?…死に過ぎだし」
「死に過ぎって…まだ3回目なんだけど。それで死に過ぎは酷だと思うんだ」
「3回って…逆に言えば3回も人生を終えてるんですよ?」
そ、それはそうだけど…と口籠るとイリスさんは呆れたような表情をした。
「そんなんじゃ…私が心配して…した意味がないじゃない」
え?と俺がイリスさんに聞き直すと何でもないと曖昧にされた。
「まぁ、どうせ復活したところでまた死ぬのが見えてるので勉強しましょう」
「あ、そのデジャヴは回避してくれるんだ?」
死んだ直後、と言うことは噛み殺した張本人の魔獣に囲まれてるということ。
復活したところでどうせ死ぬんだろうとは実際、思ってたりする。
「魔獣の弱点も知らないとは思いますが念の為に何処か知ってたりします?」
「魔獣の弱点?流石にそれは俺も知ってるよ、イリスさん。ズバリ…角だな」
異世界ラノベを読みまくった俺の知識だ。そうイリスさんに披露し
「だと思いました。何で、ラノベの知識が通用すると思ってるんですか?」
「…ですよね。後、心に刺さるのでジト目を向けるのは止めてください」
「まぁ、ある程度は読めてたので。実際は角より少し下の魔眼です」
「魔眼ってあの第3の目のことですよね」
「まぁ、貴方の世界ではそう言われてたりしますけど…そうです」
「其処を弓矢で射抜く…なんてこと言いませんよね?」
「あくまで弱点なだけで頭部を斬り落とす人も居ますよ?」
魔法で焼き晴らう人も居ますね。と付け足した。…レンのことじゃないよな。
「で、俺はどうすれば良いんだ?」
「そうですね…。魔法じゃ無理なのでスキルで攻めてみましょう」
「回避して…剣で戦うってこと?」
「そうです。攻撃性能は皆無ですけど攻撃を回避して剣で斬って貰えれば」
「でも、スキル使ったことないんだけど」
「其処は慣れるしか方法はないです。幾らでも挑戦出来るので…頑張って」
そうして俺は突如、戻され…目の前に沢山の魔獣たち。
「(…さて、どうしよう)」
理不尽な世界なのだ。「回避」と無様に叫んでも効果など発動しないだろう。
「(じゃあ、どうする?念じれば勝手に発動するものなのか?)」
此処まで考えること1刹那。結論は決まった。どうせ、また死ぬのなら…
「えすけーぷ!」
そう唱え…唱え…。気付けば、俺はヨミの隣に立っていた。
「…。…びっくり、した。…リム、急に現れた」
「すまん、それは許してくれ。って、此処は何処なんだ?」
周囲を見渡すと森の中だった。俺らが居たのは見晴らしの良い場所だったはず。
「…あの、えっと、何だっけ?れ、れ、レン。そう、レン。…の指示」
「レン?で、そのレンは何処に行ったんだ?」
あっち、とヨミの指し示す方向に居たのは空中に浮くレンだった。
「…危険だから、ってこっちに避難した」
「(もう彼奴だけで解決するんじゃねぇの?)」
さっきまでイリスさんと会話したのは何だったのか?
「ってなんか急に暑くなった気がするんだけど。気の…」
刹那、巨大な火球が空を覆い尽くし…直後、爆ぜる。
「あ、方向を間違えた。ちゃんと調整したつもりだったんだけどな」
森への影響を考慮して多少ズラしたもののやはり予想の落下地点よりズレた。
「調整せず落としたら2人を屠るところだったな」
とはいえ、火災も起きてなさそうだし魔獣も全滅したしで妥協点だろう。
「(とはいえ、もう使うのを止めるべきだな)」
放ったのは火属性の最強魔法、飛天爆轟。範囲も最大級で全てを焼き払う。
その代わり代償もあり落下地点の完全な特定は不可能なこと。そして…
「(…当分、火属性魔法を使えなくなるのは痛手だな)」
まぁ、死んで後悔するよりもマシだと思うべきなんだろうけど。
「(後は
それから俺は森の中で驚愕してるリムと溜息を吐くヨミと再会するのだった。
「あんな魔法をぶっ放てるのに…何で戦闘出来ないなんて言ってたんだよ…」
「それはごめんって。でも、戦闘が好きじゃないのは事実だからな?」
「…まぁ、其処はどうでも良いんだけど。お前って火属性だけ使えるのか?」
「大体は合ってる。因みに当分は使えないんだけどな」
「そりゃ、あんな大技放ったらそうなるだろ…。因みになんだが俺は使える?」
「さぁ?魔法適性検査やってねぇだろ?それに使うには試験もあるし」
「魔法適性検査って何なんだ?好きな魔法を選べたりするんじゃないのか?」
「そんな訳ないだろ。なろう系主人公じゃないんだし。属性の区分は存在してる」
そういうと俺は落ちてる棒を拾って図を描いた。
「まず、基本属性として火・水・木・風・土・光の6区分あるんだ」
そうしてそれぞれの関係性を描き出すとリムは困惑した表情を浮かべた。
「まぁ、火と水と木の三角関係は分かるけど…土と風は別なんだな」
「あぁ。この2属性だけ特別で調和する形になるんだ。だから、相性も良い」
「ってことは土と風の2属性を使えるってこと?」
「そうとは言えないけど2属性を使える人は多く居る。あくまで多いだけだけどな」
「じゃあ、光属性は?それと闇属性はないのか?」
「闇属性を使う人はもう存在しない。居ても魔獣や魔族だけだな」
「それって魔王が滅ぼされたからなんだっけ?」
「魔王…ってよりは魔女って言うべきだと思う。歴史書にもそう記載されてる」
「(…イリスさんと話した時は魔王だったのにレンは魔女って言ってる)」
「そうなのか。それで、魔法適性ってのは?」
「何となく察してるとは思うが自分の身体との適性を図るんだ」
「…成程な。じゃあ、レンみたいに派手な奴したいなら火属性ってことだな」
「まぁ、この世界に来た時点で適性は決まってるからどうこう出来ないけどな」
「え、じゃあどの魔法の適性にもなれない展開だってある?」
「それはない。だって、ラナ0じゃないだろ?0以外で適性なしは聞いたことない」
「(なら、大丈夫なのか?あ、でも此処で安心するとフラグになるな)」
「じゃあ、取り敢えず森を出よう。そろそろ迎えも来るだろうしな」
日も暮れ始めた頃、ようやく迎えが来た。
「…案の定とは思ってたけど。派手にやったものだね。剣聖」
「その呼び名は止めろって言ってるだろ…」
クリストさんの隣に見知らぬ女性が立っていたがレンとは面識があるようだ。
「無事だったようね。それと此奴の付き合いも苦労したでしょう?」
「剣聖も嫌だけどその呼び名も悪意あると思うんだが。って無視するなよ」
「私はネジキ。城塞都市の管轄をする者よ。ネジキ、と呼んでくれて構わないわ」
レンの話をぶった斬ったネジキさんは自己紹介をすると視線を送ってきた。
「えっと…アイビス・リムです。そして隣で眠そうなのはヨミって言います」
「そう。外傷はなさそうだけど無事?もし、そうじゃないなら医療班を呼ぶけど」
「大丈夫だ。それに、医療班を呼ぶなんてネジキさんも心配性だな」
俺が言う前にレンが
「…じゃあ先に都市へ行って頂戴。此処の処理は私らがするから」
「あれ、ネジキさん。こんな下っ端みたいな部門へ異…」
「そんな訳ないでしょう。また、貴方のぶっ放した魔法の所為で呼ばれたの」
「あー、そうだったんですね。ありがとうございます」
無駄にレンが皮肉を叩くもネジキさんはそれを無視したように
「えぇ。そう思うのなちゃんと2人を
「ってことは此処でクリストともお別れってことだな。いやぁ、残念だなぁ」
「…そうね。今まで行動を共にしてたしそう思うのも仕方ないでしょうけども」
じゃあ健闘を祈るわ、そうしてネジキさんは部下を引き連れて現場へと向かった。
馬車へと乗り込み走り出すことを確認するとレンが声を上げた。
「心配してるようだが真面目な人だし任せても大丈夫だ」
「あんな感じ…って責任の大半はお前だと思うんだけど?」
そんな馬鹿な。とレンに笑われた。その表情に何処か違和感を感じる。
「まぁ、軽く収まって良かったな!フラストの最期も討死だったし」
「軽くって…死人が出てるんだぞ?俺はお前みたいに気楽に居られないんだが」
「気楽に居なきゃ今後が不安だ。大事な人でも死ぬ時は死ぬのがこの世界なんだから」
その瞬間、空気が変わった気がした。眠そうだったヨミも今は目を開けて黙っている。
「後、今すぐ暗くなる感情を捨てろ。この世界でその瞬間は不要だ」
「…不要だ、って人命をそんな軽はずみに見る訳ないだろ?何を言ってるんだ」
「俺はこの世界を理不尽だと言ったよな?」
「理不尽とは言ったけど…でも、そういう感情になるだけで批判されるものなのか?」
「そうじゃない。俺は理不尽なのは
「…どういう意味だ?」
俺が尋ねるとレンは正面を見たまま言った。
「俺だって…この世界じゃなきゃ。
瞬間、レンが素早く動き…窓を貫通した
「御都合主義を捨てろ。…戦闘準備だ」