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第7話 謎の死との遭遇

それからヨミに色々と聞いたのだが色々と不便なこともあった。それは_。

「…私はリム以外に_興味がない」

と謎に俺以外への人間との会話を頑なに拒絶するのだ。具体例を挙げるなら_

「なぁ、ヨミ。何か食べたい物でもあるか?」

「…昨日、食べたの_。それ以外は_。…特にない」

と俺が質問したら素直に(それもヨミ基準では即答で)答えてくれる。だが、

「ヨミさん、あの_リムだけじゃなくてさ。俺とも喋って欲しいなぁ…なんて」

「…やだ」

と俺と違ってレンの質問に答えることは愚か会話をすることもなし得なかった。

「…話し掛けないで」

とそんな感じで会話すらさせて貰えないのだからレンは明らかに萎れていた。

「…俺、何かした覚えはないんだけどなぁ」

「俺もどう擁護すれば良いのか分からんが…まぁ仲良くなれるさ」

と俺もレンを宥めることを繰り返した結果、大事な午前を費やしてしまった。


その後、ヨミを引き連れて俺とレンはギルドへとやって来た。

「こんにちは、レンさんにリムさん。今日も元気そうですね」

「レイラさんこそ元気そうで。今日は何かやれそうな依頼はある?」

「そうですね…。簡単なものなら此方辺りでも_」

と言葉を区切ってメモを載せた。そしてそれを見たレンは顔を露骨に顰めた。

「黙って提示しようとしても護衛依頼なんて無理だからね?レイラさん」

戦闘系の依頼は無理だって前に言ったでしょ?と溜息を吐く。

「そうやって克服せずに逃げ続けるの、良くないと思うんだが」

「…克服はするがまだ早いと思う。それに…戦えなくても死にはしない」

ジト目を向けながらそうやって逃げるレンに溜息を吐いた。

「では、今日はこれらの依頼でもどうで_」

と提示された依頼をレンが選別しようとしたその時だった。

「すまない。ちょっと道を開けて欲しいんだ」

その言葉と共に入り口の方から甲冑を来た数人の男性が現れた。

「あれは、セヌターク?何でまたこんな場所に…?」

セヌタークとまた意味不明な単語が飛び出したが恐らく男性らのことだろう。

と思いつつ俺は壁の方へと移動するレンの後を追った。

「あれは…何なんだ?」

「あれは王都直属の兵士で王都を守ってるんだ。こんな場所にはまず居ない」

「王都直属が…何で?」

「さぁな。だが、わざわざ出向く辺り何かがあったのは間違いない」

そうして男性らと受付の偉そうな人が会話していると思えば終えたようで

「また、時期に様子を見にくる。それまでにある程度の検討をしておくように」

との言葉を残して出て行ってしまった。

「…何だったんだ?」

と知らない男性の声に緊張が緩和したようでそれぞれの持ち場へ戻って行った。

「話を聞きに行こう」

そう言うとレンは受付の方へ寄り対応していた男性に声を掛けた。

「イシュさん、どうしたんですか?」

「…あ、あぁ。レン。お前さんも居たのか。それと…彼らは?」

「俺の友達だよ。それで…セヌタークの用事は何なんですか?」

「此処ら辺で原因不明で死亡した者が後を経たないそうなんだ」

後で重要依頼でも出しておくつもりだし隠すことではないんだがと顎をしゃくった。

「原因不明の死?」

「あぁ。気になるなら其処の資料を読んでみると良い。俺は用事があるからな」

と言うとイシュさんは資料をレンに渡し奥へ引っ込んでしまった。

「取り敢えず読んでみよう」

資料の半分を渡され俺も読んでみるがまぁ、察しの通り知らない単語ばかりだ。

「…アストア区で8人の同時刻での死亡。…どういうことだ?」

「アストア区ってのは此処から5分も経てば行った小さな区域だ」

「同時刻での死亡って同じ場所で?」

「正確には…8人共離れてるんだ。だから、自殺じゃないんだろう」

「死因もそれぞれ違うしな。その内、5人は原因不明…なのか」

「あぁ。差し詰め鉄器などは勿論だが魔法やスキルで殺された訳じゃないんだろう」

「そうなのか?てっきり原因不明なんだしそれだと思ったんだが」

「魔法やスキルで殺した場合、その後が残るんだ」

「…暗殺で使えるほど魔法やスキルって便利じゃないんだな」

「あぁ。其処を生業にしてる奴ならどれだけ痕跡を隠しても1発で分かるしな」

だから、魔物以外への殺しは基本的に鉄器が多いんだ。

「…この異世界にも殺人の概念ってあるんだな」

「当たり前だ。東部の帝国なんかじゃそんなの日常茶飯事だぞ?」

「そうなんだ…。そういう面でこの世界も大変だな」

「まぁな。日本の犯罪概念に加えて魔物なんかも居る訳だしな」

そう考えたら確かに元の世界の方が楽なのかもしれないと思った。

「どうせならするか?重要任務なんて滅多に受けられるものじゃないしさ」

「でも…俺らだけでやれそうな依頼の内容じゃないぞ?」

「大丈夫だ。重要依頼は他の人が既に受けてても受けられる仕組みなんだ」

「成程な。なら、やってみようか」

そうして3人の名義で依頼を受けたのだった。


「と言っても、何をするかだよなぁ」

「取り敢えず、アストア区に行ってみよう。どうせなら、他の人も誘ってな」

そう言うとレンは数人の輪の中へ入って行った。

「…なぁ、ヨミってどうしてあそこで座ってたんだ?」

「…分からない。気付いたら其処に座ってて…レンと会った」

そう言われたら何も聞けないんだけど。と思いつつヨミの頭を撫でた。

「因みにヨミって戦えるの?」

「…やろうと思えば。…でも、したくない」

これは出来るのか出来ないのか。まぁ、その時になったら分かるだろうけど。

とヨミについてまた新たな情報を入れているとレンが戻ってきた。

「やっぱり、重要依頼は相当な名物らしい。何人かと行くことになったよ」

「其奴らは信頼出来るんだろ?」

「当たり前だろ?信頼出来ない奴に声を掛けないほど俺も馬鹿じゃないんだが」

と憤慨する辺りその質問は愚問だったらしい。…そりゃそうか。

「じゃあ、行くぞ」

「え、今から?」

「当たり前だろ。まだ昼前だぞ?こういうのはさっさと済ませるべきなんだ」

そうしてレンに従う形で俺とヨミは付いていくのだった。

「彼はアベン・フラスト。困ったら頼っておけ」

「初めまして、リムくんにヨミさん。フラストと呼んでくれて構わない」

「あ、お、俺もリムで大丈夫ですよ」

と軽く握手を交わすとフラストさんは奥の方に視線を向けた。

「左はネハイル、右はクリストだ。それぞれ俺の冒険仲間なんだ」

因みにクリストは元殺し屋だったんだとレンの無駄な知識も得たが。

そうして馬車に揺られながらアストア区へと向かったのだが…

「これはまた悲惨だな。随分と荒れている」

「あぁ。それも、単純な武力で解決出来そうな感じじゃなさそうだ」

アストア区は家が数軒立ち並ぶ村のような本当に小さな集落らしい。

だが、目の前の景色は錚々たるものだった。家は焼けて大破したものばかりで

人の気配は愚か生命さえも感じられなかった。

「フラスト、資料は読んでるよな?」

「あぁ。事件発生時は8日前の深夜だったよな」

「事件…?あの資料にそんなもの書いてあったか?」

「リムには渡さなかった方だ。簡単に言えば此処で襲撃があったんだ」

「襲撃…?ってことは魔物?でも、こんなになるなんてこと…」

「あぁ。前提になるがこの世界において集落で生きるのは簡単なことじゃないんだ」

「まぁ、城塞都市と違って人も少ないしね」

「その通りだ。だから独立するのは相当な実力があるのが前提なんだ」

「そして、この地域はそもそも魔物のレベルも低くなってるんだ」

「あれだよね、初心者冒険者が多い地域だからだったよね?」

「うん、合ってるよ。でも…この状況を見る限りそうとは思えないけどね」

「フラスト、此処ら辺での魔物の平均レベルは?」

「この資料を見る限りじゃ高くて8、9レベルだね」

「ってことは魔物の所為じゃないってことだ」

「…どういうこと?人の仕業じゃないんでしょ?」

「あぁ。俺もそう思った。人間の手で原因不明の死体を作り上げるのは不可能だからな」

「だろ?でも、魔物の仕業でもない。どういうことなんだ?

「…だから、原因不明の死なんだろう。魔物でも人間の仕業でもないのだから」

「集団自決の線はあると思うか?もし、その線をない思ってるならどう考えてる?」

「…分からない。だが、被害者の特徴を見る限そう選択するほどではなさそうだった」

「そうか…。どうする?1度、戻るか?」

「それも考えたが…泊まってみないか?魔物の出る危険性もあるが対価は得られるだろうし」

「…俺はそれで大丈_」

夫と言い掛け隣を見るとレンが軽く青ざめていた。

「魔物が出たら戦いますよね?」

「当たり前だ。わざわざ死ぬ馬鹿は居ない。もしかして…戦えない?」

「そうではないんですけど…」

「あぁ。経験がないのか。まぁ、戦うなんて早々ないからね」

と言葉を濁していることを経験がないと判断したらしく肩を叩いて来た。

「最初こそ怖気付く人が多いが命の危機になれば戦うしかないだろう?」

そんな調子で行けば大丈夫だ。と説得する言葉は果たしてレンに刺さったのだろうか?

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