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第2話 君はリムと名乗る

「目を開くと其処は異世界でした、なんて夢の話だと思ってた」

でも、目の前にある光景は異世界そのものだ。

人間も居るけどそれよりも何よりも「亜人」の存在だろう。

全身を褐色で染めた犬人やネコミミなど多種多様。

妄想で繰り広げられる異世界、そのものだった。

「と、取り敢えず…どうすれば良いんだ?俺は」

イリスさんに何の目的も教えて貰えず飛ばされた訳だが_

「(今度、会ったらぶっ飛ばそう。再会出来るのか知らんが)」

そうして色々と考えた結果、まずは冒険者ギルドを目指すことにした。

「(それにしても理不尽だなんて…到底思えないんだけどな)」

目の前の美しい光景を前にしてどう理不尽に感じろと言うんだ?

「(あ、もしかして、言語が通じないタイプだったりする…?)」

ラノベの異世界では当たり前のように通じるが実際は無理だろう。

街の入り口で周囲を見渡していると門から人が出てきた。

「あの、すみません_ちょっと伺っ_」

「XJKFKXhljmh hlhedlJFD!」

「あ、何でもないです。迷惑掛けてすいませんでした」

理解不能な言語だと悟った俺はそそくさとその場から離れた。

言葉も通じないので謝罪の言葉も聞こえてないのだろう。

「成程。理不尽だという要素は分かった…どうしよう?」

言語が通じないというのは大きな課題だ。…どうしようも出来ない。

「と、取り敢えず…冒険者ギルドを目指そう」

そうして歩くこと数分。言語の壁を乗り越えギルドらしき建物を発見した。

「こ、これ…だよな。雰囲気的にも」

恐る恐る入ってみると想像してた通り中々の賑わい振りだった。

巨体の男が囲って酒を飲み交わし綺麗なお姉さんが受付をし

亜人族が固まって掲示板らしきものを見ていたりと想像たるものだった。

取り敢えずは自分から動くしかない。そう意気込み_


「(…どうすれば良いんだ?)」


結論、何の成果も得られなかった。相手も言語が通じない所為で

唯の狂ってる奴、もしくは酒を飲んで酔ってる奴だと思われたらしい。

そうしてどうにかしようとする度に俺の周囲には人が居なくなっていた。

「…詰んだな。それも、今後の俺の人生が」

言語を覚えようにも本もないし金もない。仕事だって出来るはずがない。

「(…どうすれば良いんだ?)」

そう絶望していた時だった_。


「おっちゃん、今日のノルマ終わったぞ〜!」


隣の机の男に日本語で話し掛ける青年が入ってきた。

こんな言語が通じるチャンスなんて2度とないだろう。だから_

「そ、そこの君!ちょっと話があるんだけど!」


「…成程な。つまり、お前転生したって訳だ」

「あぁ、そうなんだ_ってお前?」

「そうだ。実はさ、俺も転生した身なんだ。言語が通じる通り出身は日本だ」

「お、俺もなんだ。その、さっき転生さればかりでさ」

「だろうな。で、その感じ的に何か困ってたんだろ?」

「あ、あぁ。言語が通じなくてな。俺はどうすれば良いんだ?」

「ってことは_転生する時に言われなかったのか?」

不思議そうな素振りを見せると俺の手を握った。

「自分の右手を握った状態で〈トランス〉って言ってみるんだ」

「と、〈トランス〉!」

その瞬間、自分の身体が青白く光ったことに気が付いた。

「これは言語を翻訳するスキルだ。試しに話してみるんだ」

そう言うと青年は近くの大柄な男性を呼んだ。

「どうした、レン。おっと、其奴はお前のダチか?此処らでは見ない顔だが」

「さっき、知り合ったんだよ。お前にも紹介するよ。彼はスタリヤさんだ」

「スタリヤ・ジキロー・カタグレだ_スタリヤで良い。…お前さんの名前は?」

そう質問されて固まった。確かに、こっちの身分は知らない。

「もしかして、お前。自分の名前も知らないのか?」

と青年は溜息を吐くとさっきと同じように右手を握らされた。

「〈ネフィール〉」

そう言うと俺の顔写真と共に色々な個人情報が映し出された。

「お前の名前は『アイビス・リム・シルビア』だ」

「アイビス…リム…シルビア…」

「リム…ね。随分と呼びやすい名前で良いことだな。宜しくな」

そう言うとスタリヤさんは俺を手を握った。

「スタリヤさんは此処の加治職人なんだよ」

「あぁ。もし、武器など作って欲しいものがあったら俺を頼れよ?」

そういうと元の席へと戻って行った。

「それにしても本当に何も知らないようだな」

「だから、言っただろ?俺はさっき転生したばかりなんだって」

「じゃあ、此処の街も知らないだろうし後で紹介してやるよ」

そう言うと俺を連れて受付へと寄った。

「彼女はレイラ。此処のギルドの受付担当をしているんだ」

「あ、新たな冒険者の方ですね。何かあれば頼ってくださいな」

予想通りの綺麗な笑みを浮かべると青年と何かを話していた。

「よし、取り敢えずは戻ろうか」

そうして先ほどの場所へと戻ってくると飲み物を渡してくれた。

「まぁ、先に転生した先輩としての奢りだ。代は気にするな」

「見た目は…ちょっとヤバそうだな」

「そりゃそうだろうな。紫色の飲み物なんて日本ではまずないからな」

でも、ちゃんと中身は美味しいし飲んでみろ。そう言われたので意を決し_

「お、美味しい!炭酸みたいな感じでシュワシュワするぞ?」

「それは『テール』って飲み物で此処ら辺の人の間では人気なヤツだ」

「あ、ありがとうな…あ、そういえば、まだ名前を聞いてなかった」

「そうだった。俺も忘れてたな。俺は、ロード・レン・アインハルトだ」

レンで良い、全部の名前を覚えるなんて長いし無理だろうしなと言ってくれた。

「此処ら辺の奴らは大体名前が長めだ。因みにお前もそのクチな?」

「えっと、アイビス…リム…何だったけ?」

「シルビアだろ?ちゃんと自分の名前くらいは覚えておけよな」

そう呆れた素振りを見せると荷物を取り出した。

「因みに…お前はどうやって転生したんだ?無理には話さなくて良い」

「車に轢かれて死んだそうだ。レンは?」

「…忘れた。何しろ、此処へ来たのは4年も前なんだ。すまんな」

「4年前…じゃ、じゃあ何歳なんだ?」

「今年で…。すまん、忘れた。だが、まだまだ現役なのは保証する」

見た目からして恐らく俺の3、4歳上なんだろうと何となくは察した。

「転生してすぐだから分からんと思うが此処は初心者が多く集う街なんだ」

「アレだよな。あの、最初のセーブポイント的な…」

「あぁ。セラスティアって名前の城塞都市なんだ」

地図を取り出すと此処だ。と具体的な場所を教えてくれた。

「レンはずっとこの街に居るのか…?」

「…あぁ。普段から色んな仕事をな_。まぁ、便利屋みたいなことをしてる」

「そう、なのか。因みに魔法とか使えたり_?」

「魔法が使えない、とは言わないが普段から使ってるのはスキルだな」

「スキルってさっきのネフィールみたいな奴だよな?」

「あぁ。後、この世界の魔法は俺らの想像してる異世界と違って少し複雑だ」

「複雑ってのは魔法陣や魔導書みたいなのを使うってことか?」

「違う。此処は人それぞれに魔法を使える上限があるんだ…。〈ソイス〉」

そう唱えるとレンの身体が青く光った。そして_

「これが俺の基礎値だ。見てみろ、お前も見慣れない文字があるだろ?」

攻撃や防御など、見慣れたもの以外に「ラナ」の文字があった。

「このラナって奴の量はそれぞれ決まってて、この量次第で魔法を撃てるんだ」

「効果や強さによって消費も増えるって考えで良いんだよな?」

「随分と理解が早いな。まぁ、6もあれば自由に使える量と言えるだろうな」

「レンは5ってことは少し不自由さを感じるくらいか?」

「まぁ、魔法職メインの奴はそう感じるかもしれないが_」

俺はこっちだ。そう言うと剣を取り出した。

「スキルにもそれぞれ決まってるのがあって俺の場合は〈剣聖〉なんだ」

「凄く強そうな名前だけどその名に応じてぶっ壊れだったりするのか?」

「…まぁ、珍しい部類のスキルなのは間違いないな。お前はどうなんだ?」

「俺は〈回避〉のスキルなんだけど…」

「〈回避〉のスキル?聞いたことがあるような気がするが…」

まぁ、あくまで聞いたことがあっても実際は知らないんだけど。と肩を竦めた。

「そのスキルがどんなモノなのか試したりしたか?」

「試してないけど…もしかしてスキルによっては弱かったりする?」

「だから、言っただろ?知らないって。まぁ、玄人向けなんじゃないのか?」

玄人向け、簡単に言えば使う人を選ぶ依存系のスキルらしい。

「因みにどんなことが出来る…って試してないって言ってたな」

「あぁ。それと_話を戻すが〈剣聖〉って強いんだろ?」

「そう思うだろ?でも、実際は調子に乗れば余裕でお陀仏出来るモンだよ」

「…やっぱり、この世界は理不尽なのか?」

「と言うよりも理不尽そのものだな。まぁ、まだマシな方ではあるがな」

「やっぱり_そうなのか」

「あ、そうだ。どうせなら、お前のも見せてみろよ」

「見せろ、ってのはあれだよな、えっと、基礎値…だっけ?」

「あぁ。同じように唱えてみろ。さっきのようにしてな」

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