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第3話 理不尽の傍ら

そうして唱えるとさっきと同様に青白く光り…

「随分と防御寄りな基礎値だな」

体力5、攻撃1、防御7、適応4、速度8、ラナ5と防御寄りだった。

「ラナ0じゃないのは不幸中の幸いなんだろうけど_」

魔法なしの異世界生活を送れないことはないので安心なのだが

それよりも何よりも攻撃1なのは流石に弱過ぎる。どうやって戦えと言うんだ?

レンの場合は「体力4、攻撃5、防御4、適応5、速度7、ラナ5」

随分と綺麗な配分である。どうして、こうなったんだ?本当に_。

「だが、スキルを考慮すれば…当たりだと思うぞ?」

「当たりって…攻撃1なのに_?想像がちょっと付かないんだが」

「回避スキルで攻撃も避けれる上に当たっても被害は少なくなるだろ?」

「…ってことは防御を高めつつ魔法で殴れってことだよな?」

「あぁ。つまり、お前は魔法職決定だ」


「そ、そんな感じで…決まりたくなかったぁー!!」


リムのギルド決定の瞬間であった。


「では、詳細を載せておきますね」

自分の名前の下に肩書きに「魔道士」と書かれたカードを貰った。

「それは、色々な交流の場の際に使うもんだ。ちゃんと携帯しておけよ?」

その言葉に頷きながら俺は懐に入れた。

「じゃあ、周辺を巡るか?色々な施設を知っておくべきだろうしな」

そうしてギルドを出た俺たちは周辺を巡った。

大体は想像していた通りだったが其処は異世界。中々に興味深いものもあった。

例えば、「不死屋」という店は不死に関するものだと期待させるものだったが

実際は唯の薬屋だった。レン曰く、効果はあるらしいが味は保証しないらしい。

それから「テトラ」という店は入ろうと思ったがレンに止められた。


「なぁ、此処のお店、入ってみたいんだけど」

「止めとけ。それは大人にとって必要なものだで俺たちには不要だ」

「え、でも_」「不要だな?」「でも、この店って_」

「不要だな?」「そんなこと_」「行くぞ」


…そうだな。と粘ったものの謎の圧力によって押し切られてしまった。

「(どうせ、異世界で法律もないんだし行ってみよっと)」

「なんて考えてるのは分かってる。行くなよ」

とちゃんと俺の本心は読まれていたらしい。実に理不尽だろう。

それから、スタリヤさんの店へ行って色々と買うことにしたのだが…

「全部合わせて…そうだな、60ユニだ。随分と安いだろう?」

「…ユニってこの世界の金銭単位だよな?日本円でどのくらいなんだ?」

「ざっと考えて_600万前後だ。此処の世界で換算すれば金貨60枚前後だ」

「…俺の感覚が間違ってなかったら_詐欺、だよな?」

別に特別レアな物でもなさそうだし破格な値段だと思うのだが…

「そうだな…この内容なら普通に考えて3ロイあれば足りるだろうさ」

「3ロイって日本円でどのくらいなんだ?」

「1000ロイで1ユニだ。その金銭価格で大体は分かるだろう?」

「…あれ?もしかして、スタリヤさんってヤバイ人だった?」

レンと仲良さそうだったのに詐欺をするなんて!とそう思っていたのだが_

「勘違いしてるようだがこれは洗礼だ。クソな世界を生きる上で必要だろ?」

「あ、そういうこと_。あ、ありがとうございます_で良いのか…?」

「今回は此奴も居たし妥協したが…本来はもっと取ってやるからな」

と謎に怖い台詞を残しながらスタリヤさんは奥へと引っ込んで行った。

「さっきも言ったがこの世界は理不尽だ。こういう機会は日常茶飯事だと思え」

「なんかその片鱗は見えた気はする…まぁ、今回は作為あるだろうけどさ」

「まぁな。因みにだが具体的にどう理不尽なんだ?」

そう質問するとレンは少し嫌悪の表情を浮かべた。

「ギルド、あっただろ?さっき、俺とお前が出会ったあの場所」

「あったな。異世界で必ず施設だし予想通りの場所って感じだけど」

「あぁ。リムの考えてるように普段はあそこで依頼を受理出来るんだ」

「…受けれるけど報酬が難易度に見合ってなかったりするのか?」

「それもあるが_何よりも…キツイんだ。前提として_お前は敵を殺せるか?」

「…あのゾンビとかを殺せる?って…聞いてるんだよな?」

「あぁ。お前も無理だろ?人外をどうやって殺せって言うんだよ!って」

「…まだ試したことすらないんだが」

「…じゃあ、ギルドに戻って討伐依頼を受けてみたらどうだ?」

最もそんな地獄、俺はごめんだがな。と吐き捨てていた。

そんな調子でギルドへと戻ってみたのだが…問題があった。それは_

「低難易度は殆ど、受理済みやクリアしてるものばかりだな_」

初心者冒険者の多い街と言えど低難易度のクエストを

放棄するほど此処の人らは馬鹿じゃないらしい。

因みにクエストは7段階で難易度分けされていて初心者は基本的に

☆2までが適正であり☆5を超えると熟練者でも苦戦するそうだ。

まぁ、こうなること自体は元から想定していたことではあったのだが_

「何のクエストもないな。残ってるのは全部、☆4超えだ」

「…まぁ、そうだよな。俺も助言はしたもののそうだろうとは思っていた」

そうして溜め息を吐きながらレンは立ち上がった。

「じゃあ、俺と行こう。いつも、魔法の練習をしてる絶好な場所があるんだ」


その後、レンの言った練習場所に移動し魔法などの感触を確かめていた。

魔法の感覚は想像していたものと少し違った。まず、使う前に下準備がある。

最も魔法陣などは描かないが詠唱が必要らしく大技になればなるほど

詠唱も長くなる仕組みだった。名前だけで発動しないのはこの世界らしい。

そうして、邂逅した雑魚敵との戦闘をすることで研鑽を積んで_


絶賛、目の前の敵から逃亡を図っていた。何故、そうなったのか?

それは、敵と遭遇する数分前のことだった_。


「前にも聞いたんだが剣聖のスキルってどんなもんなんだ?」

「簡単に言うと万能スキルなんだ」

「…異世界での万能って言葉は相当だと思うんだけど?」

「別に基礎バフに加えて身体能力向上、更に凡ゆる剣に適応する程度の効果だ」

「…聞くだけでぶっ壊れなスキルだと思うんだが」

俺の回避スキルと交換して欲しいまで…ん?

「なぁ、レン。何でそんなぶっ壊れなスキルがあるのに討伐任務を嫌ってるんだ?」

まさかの此方のスキルのインフレと同等に相手もしてるってことなのだろうか?

そんなことがあるのならいよいよ理不尽さと相見えることになって終うのだが…

「(それなら…うん、理不尽だ。こんな外れスキルを引く俺にとってな!)」

結局、他の転生者と変わらないのだ。そう思っ_

「変に受け取ったかもしれんが別に敵の強さはインフレしてないぞ?」

へ?と呆けた声を出す隣でレンは溜息を吐いた。

「お前には言ってなかったが_俺は敵を…ことが出来ないんだ」

「え?ごめん。大事なところが聞こえなかったんだけど_」


「俺は…敵を殺すことが…出来ないんだ」


「…そんなことある?え、じゃあどうやって異世界で過ごして…」

「最初の方で説明しただろ?便利屋をしてるって」

「…敵を倒さずにってことだよな?」

「当たり前だ。敵を殺せないのにどうやって戦えって言うんだ?」

「…じゃあ、練習って言うのは?」

敵を殺す練習だ…最も_殺せたことは1度もないが。そう小さく呟いた。

「レンもちゃんと魔法を使えるんだよな?」

「あぁ。スキルの剣聖って名前に引っ張られがちだが色々と使える」

「魔法でも敵を殺せないのか?」

「俺もそう考えた…でも、それって魔法殺してるだろ?」

だから、魔法でなら戦えなくはないんだ。

「…其処って重要なポイントなのか?」

「当たり前だ。魔法で殺してるんだ。俺が直接、手を下した訳じゃない」

「(理屈の通ってるような…屁理屈のような…)」

そんな悶々とした気持ちで森の中を歩き_

「ご、ゴブリンだ!うわぁーーーーー!!!!」

「ちょっ!おい、レン!何で逃げるんだよ!!」

そうしてゴブリンと2人の逃亡劇が始まったのであった。


「なぁ、レン!」

「何だよ!要件があるなら手短に話してくれ!」

「レンって別に魔法はぶっ放てるんだろ!」

「あ、あぁ。その…数にもよるが…」

「今すぐ最大火力で放ってくれ!じゃなきゃ体力が尽きて死ぬぞ!」

レンはスキルのお陰で楽そうだが俺はそうじゃない。

既に限界だし何なら倒れろって言われたら今すぐでも倒れられる。

「そ、そうだな…じゃ、じゃあ、その_敵を惹きつけてくれ!」

何秒だ?大声と共に足を止めると俺は後方を振り向いた。

「9秒あれば撃てる!でも…威力的にお前を巻き込んじまうぞ!」

「俺には〈回避〉があるだろ!容赦なくぶっ放せ!」

「そ、そうだったな!じゃあ、有り難く撃たせて貰う!」

その言葉を聞くや否や俺は引き返しゴブリンの群れに向かった。

「(俺のスキルは回避だからそれで避けたら良いしな)」

こんな時に使うと思わなかったがまさかの役に立つ出番ある。

どうせマトモに戦っても勝てないのだからと奮闘するリムの傍らで_。


「(俺は俺のことをする。そうだろ?)」

状況的に俺の持つ魔法の中での最大火力をぶっ放すしかない。


限界を越えし人蘭の遡行よ、果てなき泡沫の残像で踊れ

無音を晴らし、英雄を喚呼する群衆よ、原点を求めて怠惰を捨てよ

在るべき都を旨へ返し、史観の構築を約束する天才よ

枠に嵌るな、念を捨てるな、心を燃やし、或るままに全てを焼きつくせ!


「落ちろ!〈グラピシゼーション〉!!!!」


刹那、周囲を閃光が襲撃した。そして_


「ドオォォォォォーン!!!!!!」


巨大な〈弾〉が森を襲撃し大爆発を含みながら全てを跡形もなく滅ぼした。

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