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第4話 2度目の死

「…成程。それで死んだと言う訳なのですね」

「そもそもスキルの使用方法を知らないことを忘れてました」

レンの放った明らかにヤバイ攻撃を回避で避けようとした作戦は良かった。

…スキルの使用方法を知っていれば。知らない場合はどうなるか?それは勿論_

「避けることも出来ないので敵と共にお陀仏してしまったと」

「全くもってその通りです。本当にすいませんでした」

ちゃんと死ぬ。主人公補正とやらもギャグ補正とやらもない。

理不尽な世界と豪語してるのだから情けなどない。

俺は綺麗にぶっ飛ばされ気付いたら別れたばかりのイリスさんと再会していた。

「まぁ、私の説明不足な部分もあったので責められないのですけども」

「そういえば、…イリスさんこそ何の説明もしてくれなかったですよね?」

別に責任転嫁しようという訳じゃない。そう…あくまでって奴だ。

勿論、俺が悪いというのを前提に置いてるし…そう、俺が悪い。けど_

「先ほども言ったように理不尽な異世界ですし…」

「イリスさんも理不尽の洗礼の為に黙ってたってことじゃないですよね?」

俺はスタリヤさんとレンとの会話を思い出し突っ込んでみると…

「…頭の回転は良さそうで安心しました」

と図星だったらしくイリスさんは椅子に座り直した。…調子の良い人(?)だ。

「そうね_。前提だけど…空さんにとって理不尽は何だと考えてるでしょうか?」

「え?そ、それは…常識外のことが起きるって意味だと思ってますけど」

「そうね。そしてそれは、君の思ってることでもあるんですよ?」

「…何が言いたいんですか?」

「うーん。結論を言えば、本当は理に叶わない現象のことを理不尽って言うの」

「そう、なんですね_。具体的な意味は知りませんでした」

「例えば、なんだけど。空さんって料理の肉は食べるでしょ?」

「…まぁ。生きる為には必要なことなので」

「そうね、生きるために必要なことよね。でも、そう思わない人も居るの」

「多様性の時代だって言うし_可哀想だって考える人も居ますよね」

「えぇ。そしてそれは、この世界でも同じ理屈が通るの」

「それはつまり、人によって理不尽は変わったりする…?」

「そう。さっき、君は説明しないことを理不尽って言った。でも」

それは人によっては違うこともある。それはきっと色々な意味を齎すのだろう。

「そういう世界に君は転生したんだよ。そういった意味、理不尽なんだろうね」

「それだけ聞けば_なんだか、皮肉な話ですね」

「そうね。因みに理不尽要素は転生した瞬間にそれぞれで決まってるからね」


「だから、転生した以上は変えられない。「理不尽」は絶対なのだから」


「じゃあ、そろそろ時間だし元の世界に帰すわね?」

「あ、その前にスキルの使用方法だけ教えてください」

「…そういえば、そうだったわね。〈ティアンテッド〉」

「その前に聞きたいんですけど…イリスさんの理不尽って、何なんですか?」

僕らにあるならイリスさんにもあるはずだ。

「そうね、私の理不尽は_」


「_なこの異世界を_に出来ないこと、ね」


そうして端々の言葉を聞き逃した俺は帰ることとなる。

こういった場面で聞き逃してしまうのも人にとっては…理不尽なのだろう。


「彼奴、マジで大丈夫なんだよな?」

爆破魔法をぶっ放した当人の言う言葉じゃないと思いつつも周囲を探す。

ゴブリン諸共を焼け野原に変えた後、探していたのだが中々に見つからない。

「スキルを使うって言ったのは彼奴だし大丈夫だとは思うが…」

それを念頭に探したが…彼の姿は愚か痕跡すら得られなかった。

「…もう日が暮れる」

既に時刻は熾刻5時前だ。夏ならまだしも今は冬前。

もし、見つからない時はどうすれば良いのか?そう思った時だった。

奥にある木に何かが引っ掛かっているのが見えた。

「おい。リム!生きてるか!」

木の上に飛び隣に行くと意識はあるようだった。

「お前、火力高過ぎないか…?引っ掛かったお陰でなんとか助かったが」

「最大火力でぶっ放せって言ったのはリムなんだけどな…」

そうして俺はリムを起こすと溜息を吐くのだった。


「おぉ、帰ったか。余りにも遅かったら探しに行くところだった」

ギルドに戻ると半ば酔った状態のスタリヤさんが出迎えてくれた。

「今日の夜は俺の奢りだ。値段は爺だが考慮してくれ」

そう言うと席へと戻って行った。

「取り敢えず、受付の人に報告してくるから待っててくれ」

「あぁ。色々と面倒を描けるな」

そうして近くの空席へ座った。待つこと数分。レンが戻ってきた。

「取り敢えず、注文したけど良かったよな?食べれるか?」

「あぁ。というか転生してから何も食べてないからな」

そういえばそうだったな。と苦笑すると対面にレンも座った。

「ありがとうな、リム」

「…急にどうしたんだよ?それに…その台詞は俺のもんなんだが」

にこの異世界に転生してきた日本人はお前だけなんだ」

と言っても数年の出来事なんだけどな。と付け足した。

「…やっぱりさ、スタリヤさんとかも助けてくれるんだけど」

それでも地元じゃないから色々と伝わらないこともある、と。

「でも、リムは違うだろ?同じ出身の奴なんてこの世界にはまず居ない」

「…その面では俺も凄く助かった。本当、レンには感謝しきれないくらいな」

あの時、レンが来なかったら確実に俺は野垂れ死んでいた。

会話も通じず金もなく食料もなければ詐欺にだって遭っていた。

「…なんか、しみじみする話をしちまったな。飯食べようぜ」

その感謝を改めて言葉にする機会はなかったがまた伝えよう。


「寝る場所もないんだろうしスタリヤさんの家に泊めて貰おう」

「レンも普段はそうしてるのか?」

「まぁな。酔ってるけど…何となくは分かってくれるだろうさ」

その後、俺はスタリヤさんに泊めて貰えるよう頼み快く(?)許可してくれた。

そうして、異世界転生して怒涛の1日目を終えたのだった。


「早く起きろよ」

朝早くに叩き起こされた俺とレンはスタリヤさんの家を出た。

「今、何時なんだ?時間帯だけを見れば…6時前?」

「惜しいな。今は7時だ。因みにこの世界では翠刻って言うんだ」

「成程な。今日は、何か予定があるのか?」

「そうだな…取り敢えず、ギルドを見に行こう。依頼も更新されているはずだ」

「今日は受けられると良いんだけどな…」

俺とレンはギルドの中へと入り_出てくる少女と衝突し掛けた。

「(あ、当たらなくて良かった)」

念の為に声を掛けようと思って振り返ったが…既に少女は居なくなっていた。

「おーい、リム?どうしたんだ?」

俺が来ないのを不審に感じたレンが声を掛けてきたので俺は慌てて中に入った。

「そうだな…どうせなら討伐クエスト以外にしよう」

「…俺はレンの不殺を克服させないとって心の中で思ってるんだよな」

「大丈夫。それは…そうだな_。きっと克服する予定ではある」

早朝なのもあって殆ど受けられる状態だった。そうして、色々と話し合い…

「これにしよう。難易度に比べて報酬も中々に美味しいしな」

内容は「イーツ」という物を30個採取するものだった。因みに報酬は2ロイ。

2ロイは日本の金銭感覚で例えるなら2000円前後らしく結構な収益らしい。

因みにこの世界の金銭面のインフレは余程の飢饉が来ない限りは安泰だそうだ。

「イーツって何なんだ?」

「俺もあんまり食べた記憶はないが美味しいのは事実だ。因みに旬は春だ」

「その依頼を冬に出すってちょっと変な気もするけどな」

「イーツはそのまま食べると毒なんだが熟成させて毒を抜くんだよ」

その説明に納得し俺はレイラさんに報告をしてから席に座った。

「レン、2ロイって1日は耐えられる報酬額なのか?」

「あぁ。2ロイは2000円って話をしただろ?」

因みにそれより小さい単位もあるぞ。という言葉に俺は驚いた。

「其処は日本とは違う感じなんだ」

「あぁ。ロイの下の単位はリスだ。1000リスで1ロイだな」

「リスの単位は使うことあるのか?」

「あるよ。そもそも此処らの値段は大体、600リスや800リスだ」

「成程な。え、そう考えると30ロイした装備セットって結構な値段だな」

「まぁ、揃えてるしそれくらいはするさ。朝飯食ったら行くとしよう」

そうして異世界転生生活の2日目が幕を開けたのだった。

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