また喧々諤々《けんけんがくがく》とした議論のすえ、ここは腹を決めてしばらくのあいだ用心棒業をやるしかないという結論に達し、明くる日からイーアドの用心棒となった。
隊士五人が交代で番をする。
いまだに言葉はわからない。
はじめは他の兵士に不審がられたが、用心棒の番にあたっていない隊士も見張りや瓦礫の片付けなどを手伝ううちに、徐々に打ち解けるようになった。
イーアドと行動をともにするにつれ、かれが兵士たちの絶大な信頼を得ていることがわかってきた。豪放に笑い、怒り、感情をあらわにしながらいつも部下を思いやっていた。
一種の快男児である。
隊士たちはかれに好感を抱きはじめていた。
「――夷人にも士道がある」
土方が、宿舎の新選組居室で言った。
瓦礫の片付けを終えた土方と山南は、よく屯所でそうしていたように、新選組の行く末について語りあっていた。
山南は考えこむように、
「夷人にも士道、ですか」
と言って、かれらにもらった拳銃を分解していた手をとめた。
「そうだ。おれは前まで、夷人に士道はないと思っていた。ところがどうだ。イーアドは部下を愛し、部下もまたイーアドのために死ぬ。ひとつの立派な士道じゃねえか」
死ぬ、とはイーアドを護るために自ら盾となった兵士のことを言っているのだろう。
土方は、隊士たちに親切にしてくれたあの長髪の兵士を
「……副長は、かれらのことを信用していますか」
「まだわからんな。だが、イーアドという男には好感が持てる」
「たしかに、どこか似ていらっしゃる」
そう言われて、土方はつるりと顔をなでた。
「ふむ」
本心ではあんなまずい面と一緒にするなと言いたいのだろうが、まさかそんなことを言うわけにもいかないから、あいまいにうなずいた。
山南は、くすりと笑った。
「しかし、似たところがあるとはいえ、異国の武器は本当に発達しています。これを持ち帰れば、
山南の言いぐさに、土方は眉根をよせた。
「馬鹿いえ。万年つづいてもらわにゃ困る」
「ええ。しかし、発達し過ぎているとも思うのです。ひょっとしたら……」
「なんだ」
山南は、頭に浮かんだおそろしい想像を打ち消して、
「いえ、副長もかれらに鉄砲術を習いませんか」
山南は、兵士たちに異国の銃の扱いかたを習っていた。
隊士たちも銃を撃てるようになったほうがよい、というイーアドの発案により、まずは山南と左之助が、銃や小型砲の撃ちかたを習っている。
「おれはこれだ」
土方は、座ったまま刀を抜いた。
二尺八寸。むらっ気の強い野性味のある刃紋が特徴的な刀である。
ふわりと、鍛え上げられた鉄の香りが鼻をくすぐった。
いまさら銃など習ってなんになる、という気持ちが土方にはある。接近戦でなら、面、胴、籠手のいずれもがら空きの兵士などに負ける気はしない。
しかし、土方にはどうしても気になることがあった。
刀の手入れに必要な油をどうやって手に入れるかということである。
まだぽつぽつとした
「なあ、
「ないと思います」
山南が冷たく言った。