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第29話☆合流




第29話☆合流




「この宝石からすると、猫のモンスターでもでたのか?」と、巧が聞いた。

「うん。ケット・シーって言ってた」

残されたのは金色の猫目石が二個、そしてサファイア。

サファイアは、矢車草色が最上とされるが、この宝石はそれより少し明るい青だった。

「こっちはここに来る前に蝙蝠のモンスターが出たよ。あの光の柱から出てきた」と、テツが退治したときのコインを見せた。

「ケット・シーも、光の柱から出てきたわ」

「モンスターは、出現する場所を選べるのかもね」と、織音が言った。

「ここにこうしていて、あんまりいい心地はしないなぁ。どうする?先を急ぐ?それとも引き返して幌馬車で対策を練るとか」とテツ。

「そうねぇ」

「この近くにはセーブポイントはないの?」と巧が聞いた。

「あってもかなり先にあるわ。いったん幌馬車に戻りましょ」と織音が状況判断した。

「オッケー」

四人がダンジョンを引き返すときにはモンスターは姿を現さなかった。


「今度ダンジョンに入るとき、荷物にテントも持って入る?シャッフル機能からは守ってもらえる」とテツが提案した。

「けれど、僕たちがログアウトしてるときにモンスターが出てきたらどうなるだろう?」と巧が懸念を呈した。

「うーん」

「セーブポイントまでモンスター蹴散らして大急ぎで進んだとして、それで被害が出ないだろうか?」と、なかなかいい案が浮かばなかった。


「ねえ。モンスターが、光の柱を使いこなしていると仮定して、私たちもそれを使えるようにできないかしら?そしたらブロックごとの光の柱にワープして時間短縮できると思うんだ」

由美子の言葉に、みんな、おおっ、となった。

「中に入ってみてどんな感じだった?」とテツ。

「あんまり意識してなかったから参考になるかわからないけど、光の色が青のときに柱に入ったらあの場所へ出た気がするの」

「色が関係してるのか」

「うーん」

「おりねちゃん、どう?」と巧が聞いた。

「パターンをいくつか試してみないとコンピュータに演算させられないなぁ」

「さっき由美子が3ブロック先にいるっていうのはどうやってわかったの?」

「その子に位置情報発信プログラムつけていたからよ」

みんな、青い鳥に注目した。

「誰かが行って試すよりも、ピーコックに試してもらおうかしら?」と、織音。

「でも、それじゃあピーコックがモンスターに狙われないかしら?」と、由美子。

「じゃあ、こうしたら?」

そう言って、織音は幌馬車にあった小型ドローンを指さした。

「これは遠隔操作で、録画機能もついてるし、飛び回ることもできるし、あとはピーコックにつけてるような位置情報発信プログラムをつければ、十分役に立つわよ」

「「「いいね!」」」


「リーダー。どうしてピーコックに位置情報発信プログラムをつけたの?」と由美子が聞いた。

「万が一はぐれたときにと思って」

「それ、私やお兄ちゃんやテツ君やリーダー自身にもつけておいたら?この先お互いにばらばらになっちゃうかもしれないし」

「そうだな。ぜひ。おりねちゃん」と、巧。

巧は、改めて自分の妹の頭の良さに感心していた。


「今日中に全部は無理だから、近くのギルドに宝石を買い取ってもらいに行きましょう。明日みんながログインするまでには、なんとかしておくわ」

「いつも悪いね」

「いいのよ」


「すげーなぁ。ほんとに対策考えちゃった」

テツが思わずつぶやいた。

「窮すれば通ず、ってね」

織音が笑った。

「それどういう意味?」

「行き詰った状況でも思いがけない活路が開ける、という意味のことわざ」

巧がそう言った。

「べんきょーになった」

テツが、はははと笑った。

「ここんとこ、試験に出ます」と、巧がまじめくさった顔で言った。

「マジ?!」

「うそ」

「ひでー」

「ひどくない。仮面ライダーのお返し」

「そんな前のこといちいち覚えてるかよ!」

「覚えてるじゃん!」

わあわあ!

「若いっていいわねぇ」

織音がほう、と息をついた。

「「?!」」

巧とテツが織音に注目した。

「なにしてるの?」

話を聞いていなかった由美子が聞いた。

「「「なんでもない」」」

「ずるいよ、教えてよ!」

「仮面ライダーがお母さん!もがふが」

テツが巧から口をふさがれた。

「なんのこっちゃ?」

「だから、なんでもないって!ギルドに向かうぞ」

みんな幌馬車で一番近いギルドへ向かった。


「ダンジョンの攻略に関して、情報提供をお願いします」

「えー?教えちゃっていいのかな?」と、思わずテツが言った。

ギルドのお姉さんが宝石を買い取るときにいろいろ聞いてきた。

「まだ、攻略には至っていませんが、その糸口はつかみました」

と、織音が正直に言った。

「結構、みなさん難儀されていて、手がかりがあれば、と口を揃えておっしゃるんです」

「でも、ダンジョンって、一度攻略したら次はないんじゃないんですか?」とテツ。

「いいえ、ダンジョンも進化してだんだん難しくなるんですよ」とお姉さん。

「ふえー」

「前回の攻略者が再び挑戦しようとして挫折されまして」

「そんなことが?」

みんなびっくりした。

「手がかりを羊皮紙に記してダンジョンの要所とギルドに残して欲しいんです」

「わかりました」

織音が快く返事した。


「そういえば、武器屋の練習場で、モンスターの練習用投影機を見たんですが、ダンジョンに行ってみたら、そういうのなかったようだったんですが?」巧が疑問を口にした。

「前回のダンジョン攻略時に撤去されました」

「道理で……」

みんな、はあ、と息をついた。

「でも、そうだってことは、新しく攻略法を残して行っても、また後でダンジョンの様相が変わったら、それは役に立たなくなりませんか?」と巧は聞いた。

「一時しのぎでもかまわないんです。できるだけ多くの方にチャンスをあげてください」

「はい」

ギルドのお姉さんの必死のお願いに、思わずうなずくみんなだった。





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