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第24話☆やりなおし




第24話☆やりなおし



「お兄ちゃん!ペンダントトップの針金、歪んでる!やりなおし!」

「ふえー」

巧は自分の不器用さを呪った。

これでもよくやっているつもりなのだが……。

「おりねちゃん」

「なに?」

「手先が器用になる魔法ってない?」

「んー、ない、わね」

がっくり。

そんな都合よい魔法はないのか!

「テツ君、レジン固めるとき気泡入ってる!やりなおし!」

「うえー」

テツと巧は顔を見合わせて、無言でうなずくと、この状況から逃げ出す方法をお互いさぐりあった。

「男と女は基本的に造りが違うんだよな」

「そうそう。力仕事を男、細かい仕事を女がするべきだ」

「そう?でも、私たち、重いもの持てるし、力仕事好きよ」

由美子が言った。

「ゴリラ女!」

「なんだと、軟弱男!」

巧と由美子の兄妹げんかが勃発した。

あわあわ。テツが指をくわえて焦っている。

「テツ!よーく見とけよ。由美子はがさつだからな」

「なによお兄ちゃん!テツ君は関係ないでしょ!」

「普段がわかるわね」

織音が涼しい顔で言った。


小一時間経過。

「はい、二人とも、ちゃんとやりなおしてね!どっちも売れ行きに如実に影響するのよ!」

「「へーい」」

由美子の勝利。口喧嘩ではかなわない。

「すまん、テツ」

「しょーがねーよ」

「テツんところは弟だっけ?」

「ん。かわいいぜ」

「どーせ私はかわいくありませんよーだ」

由美子が二人の会話に横やりを入れた。

「「……」」

「気分転換しましょ」

織音が空気を入れ替えようと立ち上がった。

「さっきの街で、他の露店が立ち並んでいたでしょ?私たちのは売れないかもって、さけたけど、敵情視察も兼ねてみんなで見に行きましょうよ」

「「「いいね」」」

果たして行ってみると、アクセサリーの店はほとんどなく、骨董品や古本などを売っている店ばかりだった。

「うちもお店、出そうか?」

「うん」


四人は幌馬車に戻ると、由美子が合格にしたアクセサリーだけを持って売りに行こうとした。

「なあ、由美子。没にしたほうからも持って行って売っていいか?」

「えー。わかったわよ。でもその代わり、そっちのが売れなかったら、今度から心を入れ替えてアクセサリー製作に携わってもらいます」

「「げー」」

テツと巧が絞め殺されるような声を出した。

「まあ、待て、巧。もしかしたら買ってくれる人もいるかもしれないし」

「そう。そうだよな、テツ」

一縷の望みをかけて、男たちの闘い?が始まった。

「ねえ、あのお店!」

若いカップルが寄ってきた。

「彼女にどうですか?」

「てへへ」

このカップル、男の方がめろめろのようだ。テツと巧は「しっかりしろ!」と内心で叱咤激励していた。

「ほんとに大事な人なら、ちゃんとした商品の方を贈りたいですよね」

由美子!余計なことを!

「こちらにならんでいるものはひとつひとつ真心をこめて手作りしたものです」

「へえー」

カップルは感心して由美子の紹介したアクセサリーを手に取って眺めていた。

「お買い上げありがとうございます!」

売れた。

あっけなく売れた。あっぱれ由美子‘sトークパワー。

「おそるべし、由美子」

巧が冷や汗をかいた。

テツはうーん、と何か考えていた。

「どした?テツ」

「例えばさ、巧がリーダーに贈り物したいと思ったとして、その場合、由美子ちゃんが合格にしたアクセサリーと、没から拾ってきた数合わせのアクセサリーと、どっちを選ぶ?」

「それは……」

「合格のほうだよな?」

「うん」

「俺も、彼女出来たらそうすると思うんだ」

それは巧も認めねばならなかった。


「由美子~ごめん」

あとで、巧が売り上げを数えている由美子に謝りに行くと、

「やりなおし、って言ったらやりなおしをお願いね」

と言われてしまった。

「ぎゃふん」

巧はつぶれたカエルのような気分だった。


由美子は、今日売り上げたアクセサリーを見て、客が、ここのところはこんな形の方がいい、とか、大きさにバリエーションが欲しいとか言っていたのを考えていた。

商品開発に余念がなかった。

もしそれを巧が知ったら、「お兄ちゃんはもうついていけないよ」ときっと言っただろう。

しかし、売り上げは確実に伸びていた。

「私、商才あるかもv」

くすくす由美子は嬉しそうに笑った。

「機嫌なおったな、由美子」

「お兄ちゃんこそ」

基本的に仲良し兄妹なのだった。


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