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第22話☆エメラルド




第22話☆エメラルド



「宝石の泉があるんだって!」

「うっそ。ガセネタじゃないの?」

「ギルドの情報よ」

「じゃあ、信ぴょう性高いな」

露店を開いていた時に、他のパーティがそんなことを言っていた。

「どう思う?おりねちゃん」

「また聞きだからねぇ」

ちょっと疑わしそうに織音がひきつった笑いをした。

「じゃあさ、ギルドにじかに聞きに行こうよ」

「それもそうね」

「なになに?」

幌馬車で休んでいた他の2人に話すと、

「みんなで聞きに行こう」ということになった。


「比較的新しい情報なのですが、ハノウ山のふもとの泉にエメラルドの泉があるそうです」

ギルドのお姉さんが確かに言った。

「エメラルド、エメラルド……」

「どうかした?由美子」と織音が聞いた。

「確かエメラルドって、水によわいんじゃなかったかしら?」と、由美子。

「本当?」

「とりあえず、行ってみようよ。ただ単にエメラルド色の泉だとかだったら笑っちゃうけどさ」と巧が「万が一の可能性に賭けてみよう」と、言った。

「そうすべ」テツが同意してハノウ山を目指すことになった。


果たして現地についてみると、透明な水がこんこんと湧き出る小さな泉だった。

「エメラルドは?」

「見当たらないわね」

「やっぱりガセかあ」

「鑑定!」

織音が泉に向かって鑑定を発動した。

「エメラルドの原石があるらしいわよ!」

「なにい?」

テツが目の色を変えて自分も「鑑定!」とやった。

ぱしゃん。

水の中に入って、原石を拾う。

岸で他の石を拾って、原石を叩いた。

ぱき。

原石はあっけなく割れた。

「エメラルドだあ」

中から緑色の石がのぞいている。

へきかいに沿って割れているが、形を整えなければ価値は半減するだろう。

「研磨してもらいに行くといいかも」と、巧。

「ちょっと待って」

と、興奮している二人を由美子が止めた。

「どうした?」

「端の方から崩れてきてるよ」

「えっ」

よく見ると、もろくも崩れ始めている。

「こりゃ、だめだ」

「他のもみんなそうなのかな?」

泉周辺の石を鑑定したが、どこにもエメラルドは見当たらない。

「泉の中にしかないし、水から上げると崩れちゃうし、諦めるか」

「あーあ」

みんながっかりした。


織音がなにかぶつぶつ言っていた。他の三人はどうしたんだろう?と注目した。

「見てて」

いっとう大きな原石を拾って、地面に置くと、織音が呪文を唱えた。

原石の中に含まれている水分が蒸発して、小さく、硬い石になった。

「すげー」

テツが感嘆の声をあげた。

「とりあえず、この一個を研磨してもらいに行きましょう」

「他にもいくつか取ってかないの?」と、テツ。

「よくばると、ろくなことないと思うわ」

「へーい。わかりました。リーダー」


たぶん、今までにここへ来た者はエメラルドを手にはできても宝石として入手はできなかっただろう。

「おりねちゃんしかできないことだね」

と巧がささやいた。

「魔法を使える者ならできるわよ」

「他にそんな人いるの?」

「いるかもよ。相当時間かけなきゃ習得できないけどね」

「なるほどね」

「「なに?」」

テツと由美子には聞こえなかったようだ。

「なんでもないよ」と巧はごまかした。


「あっ!」

立ち去る前に泉を振り返ったテツが驚いて声をあげた。

「えっ?」

みんなが振り向くと、さっきまで確かにあった泉が跡形もなく消え去っていた。

「あれなに?あれもモンスターかなんかだったの?」

「わからない……」

さっき採ったエメラルドの原石だけが手元に残った。

「これ、大事にしなきゃね」

「ほんとほんと」


ギルドに立ち寄っていきさつを話すと、おそらく移動する魔法の泉だろうと、言われた。

「そんなのがあるんですか?」

「げんにあなた方見てこられたじゃないですか」

「それは……」

「またどこかに出現するかもしれません。今度現れた時は万全の態勢でエメラルド採取のお仕事依頼をかけます」

「はあ」


それから、原石の研磨を依頼した。

「せっかくだから、見ていくか」

みんなの立ち合いの元、エメラルドのルースが出来上がった。

「エメラルドは水分の調整がいるから、ここで買い取ってもらおうか?」

「そうだね」

みんなは、緑色の宝石をうっとりと眺めた後、大量のコインと引き換えにした。

「なんだか、夢みたいだったね」

と由美子がつぶやいた。

「俺ら、またお金持ちになったぜ」

とテツが言い、みんな笑った。


「ルビー、エメラルド。お次は何の宝石にお目にかかるのかな?」

テツが、幌馬車に揺られながら言った。

「さてね。楽しみだね」

と巧。

「なんにしろ、宝物は手に入ってもいつかは手放す時が来るよなぁ」

「切ないこと言うなよ」

「ま、それがわかってて、宝探ししてるんだしな」

「そうだね」


「テツくん、お兄ちゃん、アクセサリー作りまた手伝って!」

「おう。由美子ちゃん」

「今度はレジンとかも扱ってみることにしました!」

「レジン?なにそれ」

「紫外線で硬化する液体を使って透明なアクセサリーを作るの」

「あっ、じゃあさ、色も付けられる?」

「うん」

「エメラルドもどき作ろうぜ。みんな本物の色見てきたから作れそうだし」

「いいね」

「ルビーもどきも作れるでしょ?」

「そうだね」

みんなきゃっきゃ言いながら、幌馬車で次の目的地を目指した。



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