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第14話☆いろいろ試す


第14話☆いろいろ試す



「薬草集めすぎで、余ったのどうしようか?」

「もういっそ自分らでポーション作って売る?」

「できるんかい」

「たぶん、できるよ」

「えっほんと?」

「ポーション作ってる親方に弟子入りすればいい」

宿屋でアクセサリー作りしながらみんなで盛り上がっていた。

「あーあ、現実世界で持ってる道具をこっちに持って来れたらいいのに」

「それはちょっと」

「そこらへん制限ありか」

「なんか、行商人街道まっしぐらな気がする」

「爆進中」

みんな、あははと笑った。

「楽しい!」

由美子が涙目で心底言った。

「よかったわねぇ、由美子ちゃん」

織音が自分も嬉しそうに言った。


買い込んだものは、針金、チェーン、イヤリング金具、天然石、ビーズ、皮ひも、刺繍糸(ミサンガ用)、毛糸、チャームなどの飾り、ペンチ、ニッパー、針、エトセトラ。

「これ、元をとれるだけの商品を作って売れるといいなぁ」

「そうだね」

結局、その日はログアウトの時間になった。


「うーん、うーん。針金が思うように曲がらないようう」

「おい、松永」

「……なに?」

「授業中だぞ。居眠りするな」

はっ。先生だ。

「うなされとったがなんの夢みたんだ?」

「ワイヤーワークです」

「ワイヤーワーク?」

「副業とかであるんですよ」

「お前、働いてるの?学生のうちはバイトとかより学業に身を入れたほうがいいと先生は思うぞ」

「はい」

「お前の場合、成績は持ち直したから心配はしとらんが、授業中に居眠りしなきゃならんなら仕事は控えなさい」

「はい」

はい。ごもっともです。はい。と思いながらまた睡魔に襲われた。


巧がログインして宿屋で目覚めると、もうみんなそろっていた。

「大丈夫?顔色悪いわよ」

「寝不足で、疲れがたまってるんだ」

「明日土曜だから午後はゆっくり休めよ」

「ありがとう」

一週間過ぎるのが早いこと早いこと。巧はふらつきながらみんなと自分たちが作ったアクセサリーを売りにでかけた。

「それ見せて」

わいわい。人が群がる。思ったより大盛況だった。

「おいおい、ここで商売していいって許可もらってんのか」

普通の青年が強い口調で聞いてきた。

「ええ。ギルドの商人パスと露店出店許可証よ」

織音がずいと前に出て証明書を提示した。

青年はしげしげとそれを見て、

「すげー、そういうのあるって知らなかった」

と感心して言った。

「おりねちゃん、それどうしたの?」

「みんなが現実世界の方に行ってる間に手続きしといたのよ」

「リーダーさまさま。さすが」

テツが織音を褒めた。


売り上げはかなり出た。

「ビギナーズラックね」

と織音。

「なんで?」

「すぐ、みんなが真似して露店が立ち並ぶわよ」

「そうなの?」

「旅をしながら売り歩けばある程度は稼げるかなぁ」

「ふーん」


「ちょっと、巧くん、大丈夫?」

みんな巧を見た。

青い顔でふらふらだ。

「リーダー。巧の奴をつれて先に宿屋に帰っててくれ。俺と由美子ちゃんで荷物まとめて後から戻るから」

と、テツが言った。

「わかったわ」


宿屋に着くと、巧はベッドの一つに突っ伏した。

「寝なさい」

「やだ」

「なんで?」

「寝たらおりねちゃん、どっか行っちゃう」

「バカね、そんなわけないじゃない」

「今、ログアウトしたら、戻ってこれない気がする」

「じゃあ、ログアウトせずに仮想世界で眠ったら?」

「そんなことできるの?」

「できるわよ。私やってるもの」

「ほんとに?」

「うん」

「なんか、夢の中でまた眠って夢見てるみたいにならないかな?」

「なに考えてるの」

織音はあきれて言った。

「ただーいま」

がちゃ。

ドアを開けたテツが、

「どうやらお邪魔なようで……」

と引っ込もうとした。

「なになに?」

「由美子ちゃん。二人の邪魔しちゃ悪いから、俺らもう少しその辺でひまつぶそうか」

「ちょっと!余計な心配よっ!」

織音がテツたちを止めた。

巧はすでに寝息をたてて眠っていた。

「器用なやつ」

テツが言った。

「あなたたち二人も睡眠時間ちゃんととったほうがいいわ。眠たくなったら遠慮なく寝なさい」

「「えー」」

「リーダー命令よ」

「リーダーは寝なくて大丈夫なの?」

「私はあなたたちが現実世界にいる時間帯に寝てるから」

「現実世界に戻ってないの?」

「……そうよ」

「なんで?」

「事情があるのよ」

テツと由美子は顔を見合わせた。

「たぶん、聞かない方がいいんだろうな」

テツが言った。

「そうよ」

「じゃあ、聞かない」

「ありがとう」

織音はそう言った。


「あのね、お兄ちゃんって、ほんとに馬鹿正直だから。ぎりぎりの時間配分で生活してるのよ」

由美子が言った。

「さもありなん!俺なんか昼間授業中にしょっちゅう寝てるぜ」

テツが言った。

「自慢できないけど、私も」

由美子が笑った。

「しょうがないわねぇ」

織音が苦笑した。

「ログアウトの時間に巧くんを起こすとして、それまでの間どうしてましょうか?」

「お金の計算」

「ああ!」


ちゃりんちゃりん。

「どーでもいいけど、この世界の通貨、このコイン一択っていうの、どーして」

テツがコインを数えながらぶつくさ言った。

「でも、アイテムボックス機能があるから、場所はとらないけどね」

と、由美子。

「ダンジョンには高価な宝石が隠してあるって噂よ」

「そーなの?」


「オッケー!幌馬車代クリア」

「やったね!」

「ほんと」

みんなぱちぱち拍手した。

「なに?」

巧が目をこすりながら起き出してきた。

「喜べ!巧。幌馬車で旅ができるぞ」

「えっ。まじ?」

巧も喜んだ。

「ちょうど、今日はみんなのログアウトの時間だから、明日、幌馬車手配しにみんなで行きましょう」

「「「おー」」」

一致団結の声だった。


「彼らは今、現実世界に?」

「ええ。イーサン」

「旅に出るのなら私もついていかねば」

「本気?湖から離れられるの?」

「なにか依代があればいいんだが……」

イーサンと織音は、みんなで造ったアクセサリーの残りに目を付けた。

「青い天然石のブレスレット。これに宿って行こう」

「アクアマリンね。私の左手につけておくわ」

「そうしてくれ」

これまで巧たちに知られずに、イーサンはみんなの様子を見ていたのだった。




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