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第9話☆街のごろつき



第9話☆街のごろつき



巧たちは、城をあとにすると、次は武器や防具を買いにいこうか、と話していた。すると、たちの悪い連中と出くわした。

「ようよう。城で金もらったんだろう?めぐんでくれよ」

「なんでそんなことしなきゃならない」

むっとしてテツが言い返した。

「もってるでしょ?四人で4000コイン。現実世界で四十万くらい」

「四十万円?!」

由美子が素っ頓狂な声をあげた。

「ダンジョン攻略しなくても、しばらく遊んでいられるじゃない!」

「ばか。こいつらはたぶんそう思ってしばらく遊んでいた人たちだぞ。いずれ金がなくなってこうして他の人にたかってるだろう。こういう風になっちゃダメ!」

巧が妹をたしなめると、ごろつきたちが一斉に怒り出した。

「なん、だとぅ。おい、こいつむかつくぜ」

「俺も」

「まあまあ。どちらにせよ、コインを換金するときに、入手経路調べられて、不正な方法で手にしたものは差し止められるでしょうから」

織音がそう言うと、えー、そうなの?!とみんなが口を揃えて言った。

「でも、こいつら、なーんかむかつく。殴っちまえ」

「いかん、逃げるぞ」

危険を察知して、巧が率先して走り出した。みんな後からついてくる。

「待ってよ、お兄ちゃん!」

「ちょっと、あなたが煽ったんだから返り討ちにできないの?」

由美子と織音が口々に言った。

「三十六計逃げるにしかず」

巧はそう言って、逃げ続けた。

走って、走って、走り続けた。

ぜえぜえはあはあ。

ごろつきたちはばかばかしくなって途中で追うのをやめたようだった。


「俺、巧をパーティのリーダーにと思ってたんだけど、敵前逃亡するやつには務まらんな」

テツが言った。

「だって僕、弱いもん。これから強くなる予定だし。今は逃げるしかないじゃん」

巧は悪びれずに言った。

「ねーねー、RPGって、パーティのそれぞれが職業決めなきゃいけないんじゃないの?」

と由美子が言った。

「いや、特にそういうのはないな」

「前のパーティのときそんなの決めなかったよな」

「んだんだ」

男衆二人はなんも考えずに答えた。

「でもほら、役割分担とかしとかないと、後々困ると思うのよね」

「そうだなぁ」

「装備揃えるにも自分に合ったものにしないと意味ないし」

「うーん」


「実は私、魔法が使える!攻撃魔法、防御魔法、変身魔法、治癒魔法……」

織音が切り株の上に飛び乗って言った。

「「「おー」」」

他の三人が、ハモった。

「俺!実は剣の使い手。学校では剣道部」

次にテツが名乗りを上げた。

「「「すげー」」」

「私、弓道部。弓の使い手!」

そして由美子が言った。

「「「いいじゃん!」」」

「僕は……」

しかし巧は言いよどんだ。

なんも思い浮かばん。

「「「……だったらいいな!」」」

織音・テツ・由美子が同時に言った。

「なあんだ~」

巧は脱力してその場に座り込んだ。

「ほらほら、言ったもん勝ちよ!実際のところ、ステータス画面の実装に要望が反映されるんだから」

「うそ?!」

「ほんとほんと」

それぞれステータス画面を呼び出して確認し合った。

「じゃあ、僕は勇者がいい」

「まあ、勝手にどうぞ」

みんな自分のことに夢中で、巧にかまってる暇はなさそうだった。


「こんなの、前のパーティの時、なかったぞ」

「そーだそーだ、どーいうわけだ」

巧とテツが口々に言うと、

「単にみんな知らなかったんでしょ?無知は怖いわね」

と、織音が答えた。

「これは、夢かな?」

「夢です」

「じゃあ、目が覚める前に本当のことにしちまおう」

「いいね」

入力コマンドでそれぞれ自分のスキルを設定した。

「これでよし。じゃあ、お買い物に行きましょう」

「「「おー」」」

みんな、俄然やる気が出てきた。


「お店で買うときは、値切ること、もっといいのがないか探りをいれること、お店の人と仲良くなること」

織音がそう言いながら先頭を歩くと、

「やっぱり、リーダーだよな」

「そうね、リーダーよ」

とテツと由美子が言った。

「え?」

織音がきょとんとする。

「おりねちゃん、全員一致でおりねちゃんがリーダーだって」

巧が言った。

「ええ?」

織音があたふたした。

「僕らのリーダー、おりねちゃん!頼りにしてますおりねさま」

「「リーダー、リーダー!」」

みんな口々にはやしたてた。

「んもう。しょうがないわね」

もごもごと織音は口の中で言った。

織音も悪い気はしなかった。


「あのごろつきたち、どうしたかな?」

と巧がつぶやいた。

「数人いたから、入れ替わってパーティ組みなおせば何度でも路銀もらえるんじゃないの?」

テツがのほほんと言った。

「はあ?」

巧はテツの顔をしげしげと見た。

「それに気づくかどうかねー。どっちにしろ、県庁の人がモニタリングしてるから、それをやってたらいくらなんでもそのうちばれると思うけど」

と、織音。

「悪知恵って、どこまでも働くもんだ」

「だって、ふつー、ちょっと考えればわかりそうなもんじゃないか?」

「お兄ちゃん、お人よしだから」

「そーなんよ、生真面目すぎるの」

テツと由美子が巧に言った。




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