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第76話 宰相視点 国王軍の裏をかきました

私はヘルブラント・レーネン、この国の宰相だ。


我が家はここ数百年モルガン王家をずっと宰相として支えてきた。そう、ずつと支えてきたのだ、この無能な王家を。

私もレーネン家を継いでから身を粉にしてこの王家のために仕えてきた。

しかし、あまり報われることは無かった。


私が妻をノース帝国から迎え入れると王家はとても警戒し始めたのだ。我が息子と王女の婚姻も反対されて叶わなかった。緩やかな政権交代を謀ってやったのに、愚かな王家はそれを拒否してきたのだ。

本当にどうしようもない王家だ。


近年は力のある者が王となるのが良いという考え方が帝国を中心に台頭してきた。そもそも国王など元を正せば全てどこの馬の骨とも思えない平民なのだ。だから力を持つものが王になるというのは何もおかしな話ではなかった。

現に我が国は我が宰相家であるレーネン一族の力が現王家の力を上回って既に数十年が経つ。それは私の妻がノース帝国の皇女であるという事でも判るというものだ。今は亡き王妃はサウス帝国の伯爵家の娘でしかなかったのだから。どちらが格が上かその事実だけでもわかるというものだった。


その王家もあと一週間もせずにこの地上から消え去るだろう。

ノース帝国とサウス帝国の後ろ盾でモルガン王国はレーネン王国に変わるのだ。


ノース帝国から騎士団が出撃したという報を受けたのは今日だ。

5日もすればこの地に到着する。それに合わせて我が味方の貴族家には兵士を王都に集めるように指示をした。

5日も立てば5千くらいの兵力が集まるはずだった。

王家の王都の兵力は千もいまい。

5対1では勝負にもならないだろう。

我が軍が圧倒する未来しか見えなかった。


我が息子はカーラが欲しいとか抜かしていたが、別にもう兵力で圧倒すればカーラなどどうでも良い。息子の嫁などなんならサウス帝国から入れても良いのだ。後顧の憂いを断つ意味でもわざわざカーラを生かしておく必要もあるまい。

兵士達に慰み者にして処刑しても良かろう。


あの生意気な国王をひっ捕まえて親子揃って処刑するのも良いかもしれない。

泣き叫ぶカーラの事を思い浮かべるだけで、溜飲が下がる思いだ。

20年前に我妻にと望んだ娘は何故か国王に嫁いでくれて私は恥をかかされた。

そのお陰で私は帝国の皇女を娶ることになったのだが……

皮肉なものだ。


今こそ、その時の仕返しをする時が来たのだ。



「申し上げます」

そこにマドックが慌てて駆け込んできた。


「どうしたのだ、マドック? そのように慌てて……何かあったのか?」

私はその時はまだ余裕があったのだ。


「はっ、王家が軍を集めております」

「なんだと! それは誠か? 鐘は鳴っていないが」

私は目を見開いた。

脳天気な王家の対応に油断しすぎたのかもしれない。


「王家は非常事態の鐘を鳴らすこと無く、兵士達に招集をかけております。我が暗部にいろいろなところから続々と報告が上ってきております」

「敵の狙いはここか?」

「おそらくそうでは無いかと」

マドックは私に頷いた。


「どれくらいでここに来ると思う」

「早くて2時間くらい後かと」

俺の質問にマドックが答えてくれた。


「いかがなさいますか? いったん引きますか?」

「何を言う。敵がせっかく王宮を開けて攻め込んでくれるのだ。我が方は別の道を通って一気に王宮を突く」

「閣下、正気ですか?」

マドックが驚いて聞いてきた。


「敵は集めて500だろう。その500が王宮から出れば王宮の守りは100も残っていまい。そこを300で突く」

私はマドックに言い切った。


「国王とカーラの首さえ上げればこちらの勝ちだ」

「閣下はどうなさるのですか?」

「当然私自らが兵を率いる」

「閣下御自らですか?」

「そうだ。家内と娘は南に逃れさせよ。」

「若様はいかがなさいますか?」

「生意気な息子は囮にここに残しておけば良かろう」

私は息子を切り捨てることにしたのだ。

また、王女の助命の事で騒ぎ立てられたら事だ。

その時間が惜しい。


私は家内達に10騎の護衛をつけてノース帝国に向かわせた。


私も鎧を着けると直ちに中庭に裏庭にいた傭兵部隊も合わせて、屋敷内の全兵士達を集めた。

総勢は300人弱だ。

「者ども、王家が今回の我らの動きを嗅ぎつけたようだ」

私は皆を見渡した。

一部に動揺している兵士達もいるみたいだが、傭兵達はびくともしていなかった。


「王家の主力がこの屋敷を目指しているようだ。我らは敵が王宮からでたすきを突いて、一気に王宮を落とす。できるだけ音を立てずに東の抜け道から一気に王宮を突く」

「「「おおおお」」」

驚きの声が傭兵部隊を中心に起こった。

「敵がこの屋敷を襲ってもぬけの殻だったのに気付いた時は国王も王女も首から胴が離れているだろう。一気に反乱を成功させようぞ」

全員を見渡して私が言うと、

「「「おう!」」」

傭兵達を中心に手を突き上げてくれた。


「マドック、先頭を任せる」

「判りました」

マドックは頷いた。

私は300の兵を引き連れると王国軍とは別の抜け道を通って一気に王宮を目指したのだった。


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