私はフエルディナントに王都の案内を頼まれたた事をよく聞いていなくて頷いてしまった。本当に馬鹿だ。それでなくてもアレイダがフェルディナントに気があるのに、こんな事がアレイダにバレたら絶対に一悶着ある。
それ以前にフェルディナントと私が仲良くしていたと又宰相に告げ口するだろう。私は又お父様から注意されることを考えるとうんざりした。
フェルディナントは後で詳しい予定を連絡すると言っていた。私はどうやって断ろうか、悩んでいたのだ。
それでなくてもわたしはには白い騎士様がいるのだ。白い騎士様を裏切って他の男と一緒に歩いたりするのは嫌だ。それにこれは二人で出かけるということはデートではないか。デートなんて今までしたこともない。
初めてのデートは白い騎士様としたい。私はそう思っていた。
「ねえころちゃん、どうしよう? 私には白い騎士様がいるのに、フェルディナント様と一緒にお出かけしたらまずいわよね」
「わんわん」
ころちゃんはその通りだと頷いてくれたのだ。
「でも、一度、お約束したことを反故にするわけにはいかないわよね」
私がそう言うとなんところちゃんは首を振ってくれたのだ。
「えっ、ころちゃんはこのお誘いを断った方が良いと思うの?」
私の問いに
「わんわん」
ころちゃんは頷いてくれたんだけど……
「うーん、でも、ころちゃん。相手はサウス帝国の皇子様なのよ。断るとまずいわよね」
そう言うところちゃんはまたしても首を振ってくれたのだ。
「えっ、ころちゃん、判って首を振っているの?」
私はころちゃんの瞳を見た。ころちゃんの瞳を見ると何故か白い騎士様を思い出していた。
「やっぱり、白い騎士様を裏切るのは悪いわよね」
「わんわん」
ころちゃんが頷いてくれた。
「そうね。フェルディナント様から誘われたら断るようにするわ」
私は決心したのだった。
次の日の夕方にお父様に呼ばれた時、私は又叱られるのかとうんざりしてお父様の部屋に行った。
「カーラよ。また、フェルディナント殿に声をかけたのか?」
お父様がうんざりしたように私を見て聞いてきた。
「私からは声をかけておりません。フェルディナント様から声をかけてこられたのです」
「うーん、そうなのか? また、宰相が文句を言いに来ての。娘とフェルディナント殿の婚約の話が出ているのに、カーラが邪魔するから前に進まないと言うのだが」
「それはアレイダさんの問題ではありませんか。アレイダさんが婚約者候補ならきちんとフェルディナント様の手綱をひいていれば良いのです。フェルディナント様からは今度は私に王都を案内してほしいと言われたのですよ。私にはとても迷惑なのです」
私が不機嫌そうに言うと
「ちょっと待て、カーラ。今度は王都を案内してほしいとカーラから言ったのではなくて、フェルディナント殿から声をかけてきたのか? アレイダの前でか」
「まさか。アレイダさんは私とフェルディナント様が話しているのを見てへそを曲げられて帰られた後で、フェルディナント様から頼まれたのです」
「なんと、フェルディナント殿からカーラを誘ったのか」
お父様が今度は驚いて私を見た。
「当たり前ですわ。私はお父様から言われたようにできる限りフェルディナント様から離れようとしているのです。でも、あの方が私の方にいらつしゃっていろいろと申されるのです」
私が言うと
「陛下。私はその場をはっきり見ておりました。どうやら、フェルディナント様はアレイダ嬢よりも姫様に好意があるのではございませんか?」
サーヤが横から余計なことを言ってくれた。
「サーヤ、何言っているのよ。それはないわよ」
私がサーヤの声を否定したが、
「サーヤ、それは本当か?」
お父様は私ではなくてサーヤに聞いていた。
「姫様は鈍いところもありますが、あのフェルディナント様は熱い視線で姫様を見ていらっしゃいました。侍女達の話に寄るとフエルディナント様が自ら誘われたのは今までに姫様だけで、アレイダ様との間ではいつもアレイダ様がいろいろとわがままをフェルディナント様に言っているとのことでございました」
「そうか。フェルディナント殿がカーラに気があると言うのか」
なんかお父様が考え込んだ。
「陛下それが事実なら、うまくいけばサウス帝国の力を借りられるかも知れません」
後ろに控えていた騎士団長が身を乗り出してお父様に話したんだけど……
「さようじゃの。カーラ、フェルディナント殿とはいつ王都を案内するのじゃ」
「いえ、まだその日程は決まっておりませぬ」
私が否定すると
「そうか、出来たらフェルディナント殿が望まれるなら、王都を案内してあげればどうだ」
お父様の言葉に私は驚いた。
「宜しいのですか?」
「向こうがカーラに気があるのならば、問題はなかろう」
お父様がいきなり方針を真逆に変更してくれたんだけど、本当にそれでいいのか?
宰相とアレイダとの間がますますこじれそうな気がしたが、お父様が頼んできたので、私は頷くしかなかった。