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第31話 サウス帝国の皇子に捕まっているところに怒った宰相の娘が又現れました

私の所にころちゃんが帰ってきた。あれだけ探しても見つからなかったのに、帰ってきてくれて私はとてもうれしかった。その点ではあの破落戸達に感謝していた。


朝になって目を覚ますところちゃんが私の腕の中にいる。

私はその事を確認してぎゅっところちゃんを抱きしめる。

「クウーーーン」

ころちゃんが鳴いてくれて、私はころちゃんに頬ずりしてもふもふを堪能した。本当にころちゃんは可愛い。


そして、朝食の時間だ。

私はころちゃんと一緒に久々に朝食を食べる。ころちゃんのご飯とは中身は別だけど。お皿に首を突っ込んでいるころちゃんを見て安心するのだ。ころちゃんはガツガツ食べている。

あれ、今までと違う。

「ころちゃん。ご飯はもう少しゆっくり食べようよ」

私が思わず言ってしまった。

その言葉に

「まあ、姫様。ころちゃんは破落戸どもに飼われていたんですから、作法のなっていない食べ方をするのも仕方ありませんよ」

サーヤの言葉に何故かころちゃんは固まっていた。それからはゆっくりと一口一口噛みしめるように食べ出したんだけど。ころちゃんも私達の話す言葉が判るんだろうか?


私を攫った男達はどうやら誰かに命令されていたらしい。それが誰かはお父様達はあえて教えてくれなかったが、相当上の役職の者らしかった。相当上の役職者と言えば宰相しか思い浮かばないのだけど……でも、宰相が私を攫って何の得があるんだろう?

今でも王宮で我が物顔で歩いているのだ。私を攫う理由がよく判らなかった。

そういえばここ2、3日宰相の顔は見なかった。

怪しいと言えば怪しかった。


私は朝食の後は王宮内をころちゃんを連れて散歩した。

基本ころちゃんは放し飼いだ。まあ、宰相が王宮に来なくなったのならば問題ないはずだ。


「わんわん!」

ころちゃんが吠えた。何だろうと顔を上げると向こうからフェルディナント皇子がお付きの者を従えて歩いてくるところだった。私はアレイダとの件があるので、出来る限りフェルディナントとは顔を合わせないようにしていたのに、逃げる暇も無く捕まってしまった。


「カーラ様。ご無事で何よりでしたね」

フェルディナントは私が誘拐されたことを知っていた。

「はい、ありがとうございます。白い騎士様に助けて頂いたのです」

私は仕方なしにそう答えた。

「その白い騎士って誰だったのですか?」

「さあ、私を助けるだけ助けると、あっという間に去って行かれましたので」

フェルディナントの問いに私が首を振ると

「なんとも変わった話ですね。身分を明かさないで逃げるように去って行くなんてその騎士も何か後ろ暗いところがあるんじゃないですか?」

「わんわん」

フェルディナントの言葉に急にころちゃんが大きな声で吠えだした。噛みついたら大変だと私は慌ててころちゃんを抱き上げた。


「そんなことありません。白い騎士様はとても高潔な方で、名乗られなかっただけです」

私がむきになって言うと、


「えっ、ああ、申し訳ありません。私がその場に居合わせていたらカーラ様を助けられたのにと少し悔しかったから、言っただけです。カーラ様が機嫌を損ねられたのならお詫びします」

あっさりとフェルディナントは私に謝ってきたのだ。悪い人ではないようだ。

「申し訳ありません。私も助けて頂いた肩を悪く言われたと思ってつい言葉が過ぎました」

私も謝った。

「いやいや、悪いのは私だ。あなたが赤くなるその白い騎士に思わず嫉妬してしまったのです」

フェルディナントの言葉に私は驚いた。

「まあ、フェルディナント様が嫉妬なさるなんてあり得ませんわ。いつも王宮の侍女達の話題を独占していらっしゃるフェルディナント様なんですから」

私が言うと

「そんなことはないですよ。現に私が一番心をひきたいと思う方は中々私の方を向いてくれませんし……」

そう言うと意味ありげにフェルディナントは私を見てくれたのだ。

「えっ」

私は思わず固まった。

そのようなことを男性に言われたことがなかったのだ。私は顔が赤くなるのを感じた。

「わんわん!」

ころちゃんが吠えてくれて私は正気に返った。

「もう、フェルディナント様はお上手ですね。思わず本気になってしまうところでした」

「本気になってもらって全然問題ないんだけど」

いたずらっ子のような顔をしてフェルディナントが言ってくれたが、やばいやばい。男の人に免疫のない私はすぐに赤くなってしまうのだ。さすが大国の皇子様。フェルディナントはこのように甘い言葉をいろんな女に言っているんだろうと私は思った。


「それよりもカーラ様。今度孤児院に行くときは必ず私も誘ってほしいのです。また、あなたが襲われるかもしれないと思うといても立ってもいられないので」

フェルディナントが言ってくれるが、

「フェルディナント様。さすがにサウス帝国の王族の方をそのような危険に合わせるわけにはいきません」

「いや、それはそうだが、我がサウス帝国を敵に回そうとなどするものはそう簡単にいないでしょう。私が傍にいるだけで、あなたも安全になると思うのですが」

フェルディナントがそう言うが、我が国のことに他国の王族を巻き込むわけにはいかなかった。


「あああら、カーラ様。このようなところでフェルディナント様と何をしていらっしゃるのかしら」

そこに一番会いたくないアレイダが現れたのだった。

まただ。私はうんざりした。


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