俺はカーラに抱きつかれて恥辱のあまり獣化しそうになって、慌てて逃げだそうとしたが失敗した。
まあ、最悪のカーラの前で獣化するということは避けられたが、カーラに捕まってしまったのだ。
久しぶりのその胸の中はとても柔らかくて気持ち良かったのだが、これでまた、人間に戻ることは出来なくなった。
でも、カーラの胸の中は俺にとって天国だった。俺はこんな事は絶対にカーラには言えないが、実際はとてもうれしかった。
「良かったわ。ころちゃんがちゃんと帰ってきてくれて。ころちゃんがいなくなって、本当に心配したんだからね。もう二度と勝手にいなくなってはだめよ」
カーラは俺と瞳を合わせて真剣な顔をして言ってくれた。
「わん!」
俺は思わずそう吠えていた。
俺達が帰った王宮の地下牢にベイル達は連行されたみたいだった。
平民がこの国の王女殿下を攫おうとしたのだ。下手したら縛り首だ。俺は出来たらそれを助けたいと思っていた。
まあ、カーラをあの宰相の息子のガマガエルの元に連れて行こうとしたのは許せないが、未遂で防いだし、元は根の良い奴らなのだ。仕えた奴がどうしようもないゲスだっただけで。俺はなんとか奴らが処刑されるのだけは防ぎたかった。
カーラの部屋に帰って、俺は早速ベイルらの状況を確認するために聞き込みをかけようとしたときだ。
俺はあっさりとカーラに捕まってしまつたのだ。
そして、そのまま風呂場に連れて行かれた。
「わんわん、わんわん」
俺はやばいから止めてくれと言ったのだが、当然カーラには理解できない。
「相変わらず、ころちゃんはお風呂は嫌いなのね。でも、絶対にきれいになった方が気持ちいいわよ」
そう言うとカーラは俺をサーヤに渡してくれたのだ。
俺はチャンスとばかり逃げようとしたんだが、
「こら、だめですよ、ころちゃん。逃げようとしても」
サーヤにがっちりと捕まれてしまった。
その俺達の前でカーラは服を脱ぎ捨ててくれたのだ。
俺は必死に目をそらしていた。
でも、サーヤはそんな俺をカーラに渡してくれたのだ。
どうしてもカーラの豊かな裸身が俺の目に入ってしまった。
本当にこれは事故だ。
俺はカーラの胸に抱かれてそのまま湯船に入れられたのだ。
「ころちゃん、久しぶりのお風呂は気持ちよい?」
カーラは俺に聞いてくれたが、俺は目のやり場に困って
「クィーーーーン」
と情けない鳴き声を上げるしかできなかった。
「どうしたの? ころちゃん。 そんなにお風呂から出たいの?」
カーラは聞いてくれたが、それは出たいか出たくないかと聞かれれば俺も男だ。一緒の方がうれしかったが、俺は自分が獣人だとカーラには正直に話していない。カーラは俺が本当の子犬だと信じているはずだ。俺がカーラを助けた騎士だとカーラが知ったらどう思うだろう。絶対に軽蔑するはずだ。俺はそれだけは避けたかった。
「だめよ。まだちゃんと洗っていないんだから」
でも俺の心の声はカーラには届かずに、ゴシゴシと石けんで洗われたのだ。
「でも、ころちゃん。あの白い騎士様、格好良かったわね」
俺はカーラの言葉を聞いて、思わずカーラをガン見してしまった。そして、もろにカーラを見たことでカーラの裸身を見てしまって、驚きのあまり水に落ちて溺れそうになったのだ。
カーラがそのばで俺を手にすくい上げてくれたけれど……
俺は真っ赤になっていた。
カーラが俺のことをそんな風に思ってくれるなんて想像だにしていなかったのだ。
「でも、どうしていなくなったのかな?」
カーラは俺の目を見て聞いてくれた。
いや、今あなたの前にいます。俺は人間だったら思わずそう言っていた。
でも、人間で結婚してもいないのに一緒の風呂に入るなんて許されないことだ。子犬の俺が実はその白い騎士だとカーラが知れば絶対に許してくれないだろう。俺は思わずカーラから目をそらした。
「それはころちゃんには判らないわよね」
カーラは俺が目をそらしたのは判らないからだと善意に解釈して、更にもう一度抱きしめてくれた。
「ああん、でも、もう一度お会いしたいわ」
カーラの言葉に俺は更に赤面したが、今度は俺に頬ずりしてくれたのだ。俺は天にも舞う気分だった。
「ころちゃん、白い騎士様は本当に格好良かったわよね。並み居る悪人をバッタバッタ斬り倒してくれて」
そんなことを本人に目の前で言われて俺は恥辱に狂いそうになった。
カーラが俺のカーラが俺のことを想ってくれている。
こんな幸運な事がありうるんだろうか?
このところ腹違いの兄に殺されそうになって獣人王国を逃げ出して、追っ手に追われて本当につらい思いをしていた。そんなところにカーラからの告白だった。俺は思わず喜びでそこいら中を駆け回りたかった。
でも、そのカーラの褒め言葉は本当に俺のことなのかと本人の俺が聞いても疑うほどの素晴らしい人間だと言っていた。
俺はそのカーラの独白をカーラの胸に抱かれて延々聞かされて、心の中で七転八倒していた。
俺はだんだん熱くなってきた。
そして、意識をなくしてしまったのだった。