抱きついた白い騎士様の体はとても硬かった。
でも、私は関係なしにヒシッと抱きしめたのだ。
見ず知らずの人なのに……何故かとても安心したのだ。
この人なら私を守ってくれると……
上目遣いに白い騎士様の顔を見上げたら、本当にとても凜々しい顔だちをしていた。
その顔が少し赤くなっていた。
私は少しかわいいと思ってしまったの。
「殿下、大丈夫ですか?」
そこに騎士さん達が飛んで来た。
私はその声を聞いて、はっとした。
何故か、助けてくれたとはいえ見ず知らずの人に抱きついているのだ!
はしたない。
私は赤くなるとともに、慌てて白い騎士様から離れた。
「ええ、なんとか」
私は冷静さを取り戻そうと必死になった。
騎士さん達に破廉恥な王女だと思われるわけにはいかなかった。
でも、私はまさかその瞬間にいきなり白い騎士様が駆けだすとは思ってもいなかったのだ。
「あっ、騎士様!」
私は慌てて騎士様を止めようと声をかけたのだけど白い騎士様は一瞬で建物の影に入ったのだ。
「騎士様!」
私は慌てて白い騎士様を追いかけようとした。
でも、白い騎士様はどこにもいなかった。
そんな馬鹿な。消えるなんて事はあり得なかった。
「騎士様……」
私は呆然としていたのだ。私を助けてくれた騎士様がいきなりいなくなったのだ。
お礼も何も言えていないのに……
どうしよう?
と地面を見たら石の影に必死に入ろうとしてほとんど入れていない白い物が見えた。顔隠して体隠さずだ。
「あれ、ころちゃん」
そこには必死に小さくなっている白いころちゃんを見つけたのだ。
ころちゃんは何故か慌てて私から逃げようとしたが、私は手を伸ばして捕まえるや、ぎゅっと抱きしめたのだ。
「ころちゃん! 良かった 無事で!」
私はとても喜んだ。いなくなってから10日ぶりくらいのころちゃんだった。私はそのもふもふを堪能した。
でも、ころちゃんはもふもふしていてとても柔らかいのに、何故か白い騎士様を一瞬だけ思い出してしまった。
何故だろう?
それに、白い騎士様はどこに行ってしまったんだろう?
よく判らなくて私はもう一度ぎゅっところちゃんを抱きしめたのだ。
「ころちゃん、戻ってきて良かったわ」
なんかころちゃんは心持ち赤くなっているんだけど。可愛い!
私はやっところちゃんを取り戻せたのだ。
「王女!」
そこへ慌てた騎士団長達の一団が駆けつけてきた。
「直ちに王女殿下を襲った破落戸どもを拘束しろ」
騎士団長の命で、多くの騎士さん達が群がるように、地面に転がっていた顔の厳つい男達を縛っていった。10人くらいいた顔の厳つい男達はあっという間に拘束されてしまった。慌てて逃げようとした男達も多くの騎士さんに囲まれて、諦めて素直に捕まっていた。
そんな中、私は騎士団長らに囲まれて王宮に帰還したのだ。
私の腕にはぐったりしたころちゃんが抱かれていた。
騎士さん達も治療師が治療してくれたみたいで、死人は出なかったみたいだ。それと、白い騎士様はなんと厳つい男達を峰打ちで倒していて、殺してはいなかったのだ。
騎士団長が言うにはその白い騎士様は相当腕が立つのか、それとも私の護衛騎士さん達の腕が相当下手なのかどちらかだとの事だった。
かわいそうに騎士さん達はもう一度騎士団長自ら鍛え直すそうだ。
父は私が襲われたと聞いて驚いていたし、報告する騎士団長の顔も引きつっていた。
顔の厳つい男達は騎士団の牢に連行された。
これからいろいろと尋問されるらしい。
私はサーヤからだから長屋なんかに行かなければ良かったのにと散々怒られたのと、危険にさらして申し訳なかったと泣かれたのとで大変だった。
「ころちゃん、久しぶりのお風呂は気持ちよい?」
私はそう聞くと、ころちゃんを思いっきり胸に抱きしめていたのだ。
「クィーーーーン」
ころちゃんがなんかとても情けない鳴き声を上げるんだけど、
「どうしたの? ころちゃん。 そんなにお風呂から出たいの?」
私が聞くと、ころちゃんは必死に首を縦に振ってくれたのだ。
人間の言葉がわかるのだろうか?
まさかね、
私は首を振った。
「だめよ。まだちゃんと洗っていないんだから」
私はそう言うところちゃんをゴシゴシ石けんで洗ったのだった。
「でも、ころちゃん。あの白い騎士様、格好良かったわね」
私はうっとりとして言うところちゃんを胸に抱いたのだった。
あの凜々しい顔立ちで、私を攫った男達を次々に倒してくれた白い騎士様はとても素敵だった。
あの硬い胸に抱かれて私はとても安心したのだ。
「でも、どうしていなくなったのかな?」
私はころちゃんを抱き上げて、目を見て聞いていた。
そうしたらころちゃんは目を反らすんだけど……
何かころちゃんが知っていてそれを隠すみたいなしぐさに思えたんだけど。
「それはころちゃんは判らないわよね」
私はそう言うところちゃんをもう一度抱きしめた。
「ああん、でも、もう一度お会いしたいわ」
私はそう言って今度はころちゃんに頬ずりしたのだった。
何故かころちゃんは少し赤くなっていていた。
その後も私はああでもないこうでもないと白い騎士様のことをころちゃんに話したのだ。
お湯に長い間入りすぎたのか、お風呂から出たころちゃんはグテーーとダウンしていた。