目次
ブックマーク
応援する
4
コメント
シェア
通報

第28話 ころちゃん視点 カーラを助けたら抱きしめられて、また子犬に戻ってしまいました

俺の見ている前で、カーラはベイルに捕まって後ろ手に縛られてしまった。

「わんわん(カーラに触れるな!)」

俺はカーラに触れるベイルに叫んだが、当然聞こえなかった。

「ちょっと離しなさいよ……うぐ」

その上、カーラは猿ぐつわまでされてしまった。


カーラを助けなければ!

でも、皆はまだ吠えている俺を見ている。

皆の前で人間に変身するのはさすがにまずい。


「うーう」

カーラが必死に声を上げようとしている。

俺が人間に戻っていたら絶対にベイルなんかにカーラには触れさせないのに!

俺は吠えるのを止めて皆の注意から逃れようとする心と、カーラを捕まえているベイルに怒りのあまり噛みつきたい心との間で葛藤した。


でも、次は、


ガッシャーン

大きな音とともに窓ガラスが割られた。


「姫様!」

顔を出した騎士が

「ギャッ」

ベイルに斬られていた。


ダンッ

扉が蹴破られて騎士達がやっと入ってきた。

遅い!

俺は叫びそうになった。


「動くな。この王女がどうなっても良いのか?」

ベイルがカーラの首筋に剣を突きつけてくれたんだけど。

俺は初めてベイルに殺意を覚えた。

一宿一飯の恩義あろうがもう関係はなかった。

俺の愛しのカーラになんてことをしてくれるんだ!


カーラは顔面蒼白になっている。

こうなれば俺も人間に戻って……

もうばれようがどうしようが関係無かった。


「わんわん!(変身!)

あれ、戻れない!


何で?

俺はとても焦った。


「何を言っている。退かないと王女を傷つけるぞ」

俺が焦っている間にベイルは騎士達を脅して、カーラを連れて外に出た。当然他の破落戸達もついていったのたで、長屋の中には誰もいなくなった。


完全に人間に戻る準備は出来たのに!


戻れないんだけど。

俺は焦りに焦った。

ベイルに勝てるのは俺だけだ。

騎士達では勝てない。


「全員、この王女を殺されたくなかったら、剣を捨てろ」

ベイルが叫んでいるのが聞こえた。

騎士達も何か叫んでいる。

「この王女が死んでも良いのか!」

ベイルの奴は何をしている?

俺は気が気ではなかった。


「ひ、姫様! た、隊長、ここはこいつらの言うことを聞いた方が」

サーヤが悲鳴を上げている。

「やむを得ん。皆、剣を捨てろ」

隊長の強い言葉後に剣を地面に落とす音が聞こえた。

絶対にまずい。


な、何だ。何が起こったんだ!

もう俺は必死に首輪をちぎろうと引っ張った。

首が千切れそうになるが、今はカーラの命の方が大切だ。

俺は思いっきり紐を引っ張ったのだ。

でも、だめだ。


「「「キャッ」」」

民衆の悲鳴が聞こえた。

「避けろ」

大声がして

「ヒヒーン」

馬のいななきが聞こえる。

何かが起こったのだ。

カーラは大丈夫なんだろうか?

もう俺は気が気ではなかった。


カーラ!

俺はもう死んでもいいとカーラの元に駆けていこうと必死に引っ張ったのだ。


ダンッ

俺を縛っていた紐がやっと千切れた。俺はその反動で飛んでいた。

そのまま地面に激突しそうになって、何故か人間の足で地面を蹴る。


俺はその瞬間、待ちに待った人間の体に戻っていたのだ。

白い獣人族の剣士の装束に、手には我が剣を持っていた。


そのまま、外に飛び出るとそこには剣を構えた破落戸の前に馬車に乗せられるカーラが見えた。


このままではカーラが連れ去られる。


俺は剣を抜き放つと、破落戸どもに後ろから斬りかかった。


「ギャッ」

「グウォー」

二人の男を峰打ちで倒す。


「な、何やつだ。」

叫ぶ男を又峰打ちで倒す。


馬車が走り出した。


「くっそう」

俺は慌てて、駆けだした。


「待て、行かすか」

俺の前にベイルが剣を抜いて立ち塞がった。


しかし、俺様の剣技の前にいくらベイルといえども、敵ではない。


「どけー!」

俺は叫ぶと同時に下から剣を斬り上げた。

「ギャッ」

ベイルは胸を押さえて吹っ飛んでいた。


俺は駆け出すが、このままでは馬車の方が早い。

馬車がぐんぐん離れていった。


俺はすぐ傍に繋がれた馬を借りて飛び乗ったのだ。


「おい、待て」

慌てて店から飛び出して来た男が何か叫ぶが、


「少し借りる」

俺はそう叫ぶや、馬に馬車を追わせた。

動物の扱いは獣人族の俺には楽勝だった。

馬は俺の考えるままに走ってくれる。

あっという間に馬車に追いついた。


「何やつだ?」

そう叫ぶブルーノを鞘をつけたままの剣で突き落としていた。

「ギャッ」

落ちるブルーノは無視して、

「止まれ」

俺は馬車の馬に命じたのだ。


馬は俺の言うことはすぐに聞いて止まってくれた。


「くっそう」

カーラを捕まえていた男はカーラに私に剣を突きつけて外に降りた。

「この女を殺されたくなかったら剣を捨てろ」

男は俺に向かって叫んでくれた。

俺はその男の前に馬から飛び降りる。


「聞こえねえのか? 剣を捨てないとこの女を殺すぞ」

男はヒステリックに叫んでくれた。

「ふん、雑魚が何か叫んだか」

次の瞬間俺は目にもとまらぬ早さで、剣で男を突いていた。

一瞬で男を吹っ飛ばしていた。

そして、倒れそうになっていたカーラを抱き留めてたのだ。


「大丈夫か?」

俺はカーラを縛っている縄を解いて猿ぐつわも外した。


そうしたらカーラがいきなり俺に抱きついてきたのだ。

俺は唖然とした。

まさか、カーラがいきなり抱きついてくるとは想像だにしていなかったのだ。


やばい!


俺は真っ赤になったのだ。

心臓がドキドキする。


「殿下、大丈夫ですか」

そこに騎士達が飛んで来た。


「ええ、なんとか」

カーラがそちらに向いたときだ。


このままでは又、子犬に戻ってしまう。

俺は必死に駆けだしたのだ。

「あっ、騎士様」

カーラが俺を止めようとしたが、俺はなんとか角を回って隠れることが出来た。


そこで俺はまた子犬に戻ってしまったのだ。


俺はそのまま逃げようとした。


「騎士様」

そこへ叫んでカーラが飛び込んできた。

俺は縮こまって隠れようとした。


「騎士様……」

カーラはどこを見ても騎士がいないことを知ってがっかりしたみたいだった。


「あれ、ころちゃん」

俺はカーラが何も見ずにそのまま帰ることを期待したのに、足下の俺を見つけてくれたのだ。


俺は慌てて逃げようとしてぎゅっとカーラに抱きしめられてしまったのだ。


「ころちゃん! 良かった 無事で!」

俺は何度もカーラに抱きしめられて、ゆでだこのように真っ赤になってしまったのだった。


この作品に、最初のコメントを書いてみませんか?