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第15話 ころちゃん視点 破落戸の兄貴に捕まってしまいました

俺は皆の寝静まった後で食い物を物色しながら、どうしたものか考えていた。


あのガマガエルをカーラの婿に迎えるなんて絶対に嫌だ。

でも、だからと言って殺すのもどうかとは思う。

ガマガエルが何か良からぬ事を企んでいるなら殺しても良いかとは思うが、今はまだ何も考えてはいないようだ。

と言うか、あのガマガエルがを描く以外の脳があるとは思えなかった。


でもこのままでは、宰相の陰謀によって、カーラがガマガエルと結婚させられるかもしれない。

それだけはなんとしても防がなければ!


俺は取り敢えずここを根城に様子を見ることにした。

最悪見つかってもこの破落戸どもなら、俺を殺さないだろう。

おれはそう思ったのだ。


それにここなら簡単に外に出られる。更に破落戸どもは口が軽そうだ。何か状況が代わったら即座に教えてくれるだろう。


その夜は外を兵士達が必死に探していそうだから、静かにして部屋の中にいた。


その代わりに俺は机の上に破落戸が残した食事をあさったのだ。

食事は王宮程ではなかったが、破落戸の食事としては結構良くて、貴族の食事と遜色の無い味だった。ここの破落戸が宰相に大切にされているのが良くわかった。

俺は少なくともほとぼりが覚めるまで椅子の木箱の中にいることにした。



翌朝は破落戸どもは起きるのが遅かった。

奴らが起きる前にコックの見習い達が、皿を取りに来たのだ。


「あれ、今日はほとんど食事がなくなっている」

「変だよな。いつもは多くの食べ残しがあるのに!」

俺はそれを聞いて少し食べ過ぎたかと、反省した。


「量が少ないのかな」

「後で料理長に文句を言われたら怒られるのは俺等だけど」

「量をもう少し増やすか」

コックらは口々に言いながら出て行った。

まあ、量が増えるのは良いことだ。俺は期待することにした。


そして、昼頃になるとやっと破落戸共が起き出してきたのだ。

皆置かれた食事を始める。


「聞いたか? お館様の坊っちゃんが襲われたって事だったからどんなやつに襲われたのかと警戒したんだが、昨日の子犬に襲われたってことらしいぜ」

一人が言い出した。


「はああああ? あんな子犬に襲われただと?」

「普通は、事実でも言えないだろう」

「ここの奥さんも子犬に吠えられて怒り狂っていたそうだけど、俺なら恥ずかしくて言えないぜ」

「あんな可愛い子犬を襲ったなら判るけど、襲われたって、笑えもしねえや」

「どれだけ弱いんだよ」

「まあ、ガマガエルの坊っちゃんだからな」

「でも、カエルでも下手したらあの子犬より大きいぜ」

「子犬にしたらカエルのお化けだと思って吠えたんじゃないのか?」

「ちげえねえな」

男たちはどっと笑っていた。



しかし、次の瞬間だ。


「おい、ベイル、貴様、また俺の肉を食べたな」

昨日怒っていた確かブルーノとかいう破落戸が、ベイルにまた食って掛かった。


「なんで俺がお前の肉を食べる必要がある?」

ベイルが呆れて言うが、

「だって俺の肉だけないんだぞ。絶対におかしいだろう」

ブルーノは叫んでいた。

しまった。またブルーノのお皿のを食べてしまった。

もう少し我慢すればよかったのだが、目の前にコックたちが準備したお皿を見て我慢できずに食べてしまったのだ。


「俺は少なくとも食べていないぞ。誰か他のやつが食べたんじゃないか?」


「くっそう、誰だ、俺の肉食ったやつは?」

ブルーノが叫ぶが誰一人として返事しない。


「くっそう」

そう言うとブルーのはベイルの座っている俺の忍び込んでいた木箱の椅子を思いっきり蹴り上げたのだ。


「キャン」

俺は思わず悲鳴をあげてしまった。


しまった! やってしまつた。


「貴様、人が座って食べている所の椅子を蹴飛ばしてくれやがって、どういうつもりだ?」

ベイルが立ち上がっ手怒りだした。


「ちょっと待て、ベイル。今何か聞こえたぞ」

「はああああ! 誤魔化すな! 俺は飯食っている時に邪馬されるのが一番嫌なんだよ!」

ベイルが叫ぶが、

「いや、ちょっと待てって」

ブルーノの声がして、


「どこかで何かの鳴き声がしたぞ」

周りをキョロキョロ探す仕草が箱の隙間から見えた。


やばい。俺は完全に固まったのだ。


「ここか」

ブルーノは俺の隠れていた木箱を退けてくれた。


俺は皆の視線の下にさらされてしまったのだ。


やばい! 捕まったらガマガエルに突き出される。


俺は必死に駆け出したのだ。


「おい、扉を閉めろ」

入口のそばにいた男がしなくていいのに扉を締めてくれた。


くっそう、どこかから逃げないと。


「そっちに行ったぞ」

「捕まえろ!」

俺は男の手をかいくぐる。


「おい、そっちだ」

「捕まえた」

と言う男の手を避けて股の間から逃げる。


「「痛い!」」

俺を捕まえようとした男たちが二人でぶつかる。

俺は机の上に飛び乗った。


必死に駈ける。


「ギヤーーーー」

「俺の飯が」

「飯の上に乗るな」

「ワン」

男たちが叫ぶので仕方無しに皿の間を駈ける。


そして、地面に降りて開いている窓から逃げようと、机から飛び降りた時だ。

丁度そこに男の手が現れてガッチリと捕まれてしまったのだ。


「キャン!」

俺は逃れようとして暴れたが、


「もう逃げられないぞ」

とガッシリとつかまれてしまった。


「キャィーーーーン」

俺は悲しく鳴くしか出来なかった。


「ふん、よく見ると可愛いじゃないか!」

なんと俺を捕まえたのは、破落戸共の兄貴分のベイルだった。


「おい、ベイル、俺の肉泥棒をよく捕まえてくれたな。この子犬を焼き肉にでもするか」

ブルーノが言ってくれた。


俺は絶望を感じた。




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