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第13話 ころちゃん視点 追い詰められて破落戸の詰め所に隠れました

俺は地面に難なく着陸した。

子犬の姿でだ。

二階からなら楽勝だった。

これならコリーの三階の部屋からでも獣人の力を使って、飛び降りられたのではないだろうか?

俺はやればよかったと後悔した。

もっと早く行動に移していれば、今頃多くのことをもっと探れたはずだ。


「おい、なにか飛び降りてきたぞ」

「あっちだ」

しかし、俺の考えはこちらに駆けてくる兵士たちの声で妨げられた。

見つかったらやばい!


俺は慌てて駆け出した。


「おい白いのがいたぞ」

兵士の一人が叫んだ。

やばい、見つかった。


「何だ子犬か」

「馬鹿、子犬でも犬は犬だ。見つかったら奥様からどやされるぞ」

「それもそうだ」

兵士たちはそう言い合うとこちらに向かってきたのだ。

兵士たちは必死に俺を捕まえようとしてくれた。

前から兵士たちが駆けてくるので、横に向かうとそこには兵士とは違う人相の悪い男がいたのだ。

こいつは宰相に飼われている破落戸の一人だろう。

金で雇われているだけに兵士と違って結構強いはずだ。

男はこちらを見ると呆れたような顔をした。

「これって子犬じゃないか」

「おい、ベール真面目にやれ」

後ろから他の破落戸が注意していた。


「へいへい」

男はそう言うと剣を握ってくれた。


俺はやばいと思って更に横に向かう。

男は追っても来なかった。俺を脅しただけらしい。子犬に剣を向けるのも馬鹿らしいと思っているみたいだ。


兵士たちが後ろから追ってきた。俺は逃げようと走ったが、声を聞いて前から兵士が駆けてきた。


ど、どうする?

俺は一瞬戸惑ったが、

ええい、ままよ!

そのまま前に駆けていくことにした。


「よし来たな」

そう言って手を伸ばしてくるその兵士の手をかいくぐると、その兵士の股の間をすり抜けた。

「「ギャ」」

その瞬間、俺を追いかけてきた兵士と捕まえようとした兵士がぶつかったのだ。

後ろを見ると二人して転けていた。

それに数人の兵士たちが巻き込まれる。

チャンスだ。

俺は必死に庭の方に駆けた。


「おい、白いのがそっちに言ったぞ」

兵士たちの声をバックに、俺は植え込みに飛び込んだ。

体中木の枝や葉っぱが付いてくるがそれどころではない。

強引に植え込みを抜けると庭を突っ切って森の中に駆け込んだのだ。

ここまで来れば大丈夫だろう。

俺が思った時だ。


「おい、いたか?」

「いや、いない」

「遠くには行っていないはずだ。必ず探し出せ」

兵士たちの声がすぐ近くでした。

俺は兵士たちが執念深いのに驚いた。


慌てて森の奥に向かう。

しかし広い屋敷だ。森がこんなにあるなんて、どれほどの大きさなのだろう。流石にこの国を牛耳る宰相の屋敷だけはある。


しかし、兵士たちも執念深いものだ。

たかだか子犬にそこまで必死に探すほどのことではないだろう。

まあ、主人の妻が犬嫌いというのもあるとは思うが……

あのガマガエルの鼻に噛みついたのが悪かっただろうか?

まあ、俺とししては噛みついたことに後悔なんてしていないが。この姿が人間だったら俺のカーラに懸想して、良からぬことを企んだ段階で殴り殺していたかもしれない。


そんな事を考えていると、大きな小屋の前に出た。

何の小屋だろう。入口に灯りがついていて、扉が開け放たれていた。

中はガラリとして机の上には食べ物が放置されていたのだ。

俺は腹が減っていたので慌てて飛び乗ると食べ物をいただき出したのだ。

肉を中心に必死にガツガツ食べる。

もう綺麗さもクソも関係なかった。



「おい、いたか?」

「いや、いない」

兵士たちの声が聞こえた。

「もう少し先も探すぞ」

こちらに迫ってくる。


俺は慌てて机の上から飛び降りると、隠れられるところを探す。


とりあえず、椅子代わりの木箱があるのでその一つに潜り込んだのだ。


「おい、この小屋が怪しいんじゃないか」

「しかし、ここは傭兵の小屋だぞ。勝手に調べたらまずかろう」

「しかし、誰もいないみたいだぞ」

「おい、お前ら、人の小屋に入るなよ」

そこに声がした。


「中に子犬がいるかどうか確認したい」

「やりたければ俺を切ってから調べたらどうだ」

その声はさっきベイルと呼ばれた凄腕の男のようだ。


「いや、中の確認は頼んだぞ」

兵士たちの去っていく足音がした。

「へいへい、呼び出しがかかっていってみれば子犬が一匹暴れ出しただと、そんなの侍女でもなんとかなるだろう」

ベイルがブツブツ言いながら入ってくる足音がした。

やばい、コイツラ俺をさがすんだろうか?


「まあ、そう言うな。ここの奥方は犬が大の嫌いだそうだ」

「はん、子犬一匹にやっつけたところで誰にも自慢できん。娼館の女どもに聞かせたら『野蛮人』とか言って敬遠されるぞ」

「まあ、それはそうだが」

男たちはそう言ってドカリと席についてくれた。

どうやら男たちは探すつもりはないようだ。俺様はホッとした。


「おい、ベイル。貴様、俺の肉を食ったな」

俺様が安心した時だ。男がいきなり怒り出した。

やばい、俺が食べた肉がその男の肉だったようだ。

「バカ言え! 俺はお前と一緒に出ただろうが」

「しかし、お前が最後に出ただろうが」

男は怒っていた。


「貴様の肉なんか食っても仕方がないだろう」

「誰かが入って俺の肉を食ったのか」

「肉ならまだ帰ってきていないやつのを食えば良いだろう」

邪魔くさそうにベイルが言ってくれた。

「それもそうだな。」

男は納得してくれたみたいだ。

俺は家探しされずにホッとした。

それから男たちが次々に帰ってきて、俺は椅子の中で静かに潜んでいたのだ。


男たちは結構何でも話してくれた。

「しかし、お館様が陛下にカーラ姫をあのベンヤミンの嫁にほしいって正式に願い出たそうだぞ」

その中のひとりの言葉に俺はぎくりとした。

「ベンヤミンってガマガエルか」

一人の言葉に俺は言い得て妙だと思った。あの男は本当に見た目はガマガエルだ。


「それは本当なのか?」

「そう、兵士たちが話しているのが聞こえたぞ。もしそれがうまく行けば俺達が姫を拐う必要もないってことだな」

「まあ、話はどうなるかわからないからな。引き続き出番を待つしかなかろう」

ベイルが言ってその話は打ち切りになった。


俺様は焦った。もしそれが事実で国王がそれを認めたなら、俺様の出番がなくなる。

でも、俺はカーラをあのガマガエルだけには渡したくなかった。

どうすべきか、俺はその日かられらが布団に入って寝静まるまで一心不乱に考えたのだ。





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