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第8話 ころちゃん視点 侍女の部屋から逃げ出す算段をしていたら、侍女にシャワールームに連れて行かれてしまいました

俺はコリーが出かける時にガチャリと音がした。

えっ、鍵をかけた?

俺は慌てて扉のところに行ったが、扉はびくともしなかった。

必死に開けようとしたが、開かなかった。

扉に鍵がかけられていたのだ。


慌てて今度は窓から降りようとしたが、結構下からの距離があるのが見えた。

これでは降りられない。

俺が降るために捕まる出っ張りなどがないか見たが、見る限り無かった。

それに下の屋敷の周りにもいかにも強面の男たちがたむろしているのが見えた。飛び降りても即座に見つかって大騒動になるだろう。それでは意味がない。


それにこの窓ガラスを開けるのも子犬の体では無理だった。


天井もみたが、天井裏に忍び込むのもその高さまで飛べないので難しかった。


子犬の体をこれほど恨めしいと思ったことはなかった。


せっかく潜り込めたのに、これでは仕方がなかった。


もう一度扉に戻るが蝶番が丸くて俺では回しにくい。

それにたとえ開けられても鍵を開けるのは俺様には無理だった。

俺様が人間の姿に戻れれば良いのだが、俺様は女性に抱きしめられたりしたら恥辱のあまり獣化してしまうのだ。

カーラに散々抱きしめられていたから、すぐに人間に戻るのは無理だ。そもそも、コリーにも抱きしめられてしまった。普通に抱きしめられたくらいでは1日くらいでもとに戻るはずだ。でも、カーラの時は一緒にお風呂に入るという破廉恥なことをしたから、考えたら3日くらい戻れなかった。今まで人間に戻れなかったのは最長は3日間くらいだ。


カーラはもういないからここでコリーに抱きしめられても1日くらいでもとに戻るはずだから、できる限りコリーから離れるようにすればもとに戻れるかもしれない。


俺はできる限りコリーから距離を取ろうと思ったのだ。


俺は一度コリーが帰ってくるのを待つためにベッドの下で丸まって眠ったのだ。


ここに隠れていたらうまく行けばコリーと距離が取れるかもしれない。うまく行けば明日コリーが仕事に出た後に人間に戻れるかもしれない。

俺はとりあえず、寝ることにしたのだ。


それが間違いだった。


「シロちゃん」

俺はその声でハッとした。


「シロちゃん、あれっ? どこに行ったの?」

必死に探すコリーの声に、俺はもう少し奥に行こうとしたのだ。


「あっ、いた! シロちゃん! 良かった」

俺はコリーの手に捕まってしまった。

そして、コリーに抱っこされて思いっきり抱かれたのだ。

この女は結構な怪力だった。


失敗した。これでまた1日人間に戻れない。


「はい、ご飯よ」

コリーはポケットに入れていた残飯を私の前に広げてくれた。

カーラのくれていたご飯に比べれば貧しかったが、

「わん!」

俺は小さく吠えて、コリーに尻尾を振って喜んでいるふりをした。

「寂しかったよね」

「わん」

一応、そう答えておく。

「まあ、人の話す言葉が判るの? まさかね」

首を振ったコリーは俺が飯を食べる間ニコニコ笑いながら見ていた。


「じゃあ。シャワーしに行こうか」

えっ?

俺はカーラの声に驚いた。

いや、それはまずい。絶対にまずいのだ。

俺は必死に逃げようとしたが、むんずと捕まってしまったのだ。

「わんわん」

俺は抵抗しようとしたが、

「しーーーー! 静かにしているのよ。奥様に見つかったら本当に殺されてしまうからね」

カーラが言ってきた。確かにそのとおりだ。

でも、このままコリーとシャワーを浴びたら下手したらまた3日間人間に戻れない。

俺は抗おうとしたが、コリーはお構いなしに、俺を袋の中に入れてくれたのだ。


ゆっくりと歩いているのが判った。

いかん。なんとかせねば。


俺は気だけ焦っていた。


次に出されたところはシャワー室みたいだった。個室になっていて、服を脱ぐところとカーテンのついたシャワーを浴びる所に別れている。シャワーはお湯の出る魔道具が天井に付いていた。

俺は外に逃げようとしたが、扉はまたしても鍵がかかっていて、その扉の前にコリーがいたのだ。


そして、驚いたことに、俺の目の前でさっさとコリーが服を脱いでいくんだけど……

「わんわん」

ちょっと待て! 男の前で服を脱ぐな!

俺が叫んだが、

「シロちゃん、しーーーー」

コリーがそう言って俺を裸の胸に抱いてシャワー室の中に入ってくれたのだ。

いや、ちょっと、待って……ギャーー、だめだ!

俺は恥辱に染まって固まってしまったのだ。

なんとコリーは俺を胸に抱きしめてゴシゴシ洗ってくれたのだ。

もう俺様は抵抗することもなくなすがままにコリーに洗われていた。


俺の体力も気力もコリーによって完全に奪われてしまったのだ。


シャワールームのカーテンから出された時に扉の前には誰もいなかった。鍵に飛びつけばここは俺でも回して開けるようになっていた。

でも、今日はもうあまりのことに頭に血が上ってしまって、湯当たりしたようにぐったりしていたのだ。


こんな状態でコリーから逃げ出して情報を探るなんて無理だ。

俺はもうへとへとだった。


そのまま大人しく、コリーにバスタオルでゴシゴシ拭かれて、袋に入れられたのだ。


俺はその日は結局力尽きて、コリーに抱きしめられて外に出ることは出来なかった。


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