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第6話ころちゃん視点 王女のために色々探ることにしました

俺はカーラ王女に癒やされて傷を治した。


でも、俺を看病してくれたカーラ王女はこの国ではなかなか厳しい位置にいるみたいだった。


俺が散歩していると宰相の娘が取り巻き連中を連れて闊歩している所によく出くわした。

そんな時はよく宰相の娘が王女に嫌味を言っているのだ。

普通の王国で陪臣の娘が王女に嫌味を言うなんてことはなかなかなかった。我が国ではあり得なかった。


そんな時だ。娘が嫌味をいった後に、あとから来たいけ好かない年増女がまた嫌味を言ってくれたのだ。

あまりに頭にきた俺は思わずその年増女に向けて吠えていた。

もっとも子犬の俺が吠えても、全然怖くもなんともないのだが……


でも、何故か年増女は驚いてひっくり返ってくれた。

俺には信じられなかった。

やはり子犬になっても、殺気を感じるものなんだろうか?

日頃の鍛錬が結びついたのかと俺はとても嬉しくなった。


でも、俺のその行いが後で問題になるとはその時は全く思わなかった。



国王に呼び出されたカーラは何故か落ち込んで帰ってきたのだ。


そして、俺に抱きつくと、いきなり謝ってきたのだ。


何でも、年増女は俺の処分を国王にねじ込んできたとか。


やれるならやってもらおうじゃないか。俺はやる気満々になった。


よく聞くとあの年増女は、宰相の妻で元北の帝国の側室の娘だったとか。ノース帝国と言えば結構強大な国だ。しかし、そこの王女でこんな小さな国の宰相の妻になるということはこの女自体が帝国では大した身分ではないのだ。

俺はそう思つたが、カーラは問題を大きくしたくないと頭を下げたそうだ。二度と俺をその年増女の前に出さないと。

俺も二度と見たくもなかったが、カーラにそんな想いをさせるとは、俺は思いつきリ噛みつきたくなってきた。

噛み付けばあまりのことにその女は倒れてくれるかもしれない。そうなつたら今度こそ大変なことになるが……

しかし、その陪臣の妻風情がカーラに頭を下げさせるなど言語同断だ。

俺はいきり立った。

絶対にやってやると。吠えて吠えて噛みついて死ぬほどの目に合わせてやりたかった。


でも、カーラは俺に泣いて詫びてきたのだ。

「頼りにならない王女でごめんなさい」と

そう謝られると今回のことは水に流すしかないではないか。陰で仕返しをするしかない。

俺は必ず仕返しをしてやると心に決めたのだ。



でも、情勢はカーラに取って結構大変みたいだった。

こうしてはいられない。

俺は、なんとかしてカーラの力になりたかった。

まずは色々と情報を集めないと。


その日から俺の暗躍が始まった。


カーラが寝てから、部屋から忍び出て、王宮内を徘徊して情報を集め始めたのだ。


この小さな子犬の体が忍び込むのに結構役立った。


皆には小さすぎて見えないのだ。


それにたとえ見つかっても、餌をくれるくらいで皆見逃してくれた。


俺は、色んなところに忍び込んで耳をそばだてた。


やはり、一番の元凶は宰相みたいだった。

宰相がいろんな貴族たちと手を組んで勢力を伸ばしていた。

下手したら宰相が国王に取って代わるかもしれない。


宰相は、うまく禅定するために、カーラに宰相の息子を娶らせようと画策しているらしい。

だだ、ベンヤミンは既に36歳で、カーラと年が離れすぎていると国王が難色を示しているとか。

それはそうだ。あのように可憐なカーラが宰相の息子の毒牙にかかるなど許せるものではなかった。

俺はなんとしたものかと悩んだ。


王宮の宰相の部屋に忍び込もうとしたが、宰相の部屋の防御は完璧で子犬の俺様でも中々入り込めそうになかった。

宰相は後妻の年増女が犬嫌いで、その分警戒が厳しいみたいだ。犬一匹入れるような隙がないのだ。忍び込んでも見つかって監禁、下手したら殺されかねなかった。


「フェルナンド様。このような、犬の餌をどうされるのですか」

そんな時だ。悩んでいた俺はサウス帝国の皇子一行が話している所に出くわした。


物陰に隠れて聞いていると、

「カーラ王女への贈り物にするのだ」

「カーラ王女にですか?」

「そうだ。カーラ王女のお気に入りは子犬みたいだからな」

皇子は笑って言った。

「それはそうみたいですが、よろしいのですか? アレイダ様が知ったら気分を害されませんか」

「犬の餌くらいで、気分を害さないであろう。それに、俺は別に相手をアレイダに絞ったわけではない」

アレイダの婚約者だと思っていたフェルナンド皇子がそんな事を言うとは思ってもいなかった。


「な、なんと、殿下はお相手が、カーラ様でも良いと思っていらつしゃるのですか」

側近が驚いて聞いていた。

「別に良かろう。宰相はノース帝国の影響力が強すぎる。それよりは力を欲しがっている国王を援助した方が、我がサウス帝国の利益は大きかろう」

「それはそうですが、ノースの影響力で宰相の力は相当大きくなっております」

「ふんっ、その分反発も大きかろう。反対派に食い込めばまだなんとかなろう」

皇子はそう言って笑った。

「父上からも臨機応変に動けと言われているのだ。どう見てもわがままなアレイダよりも、可憐なカーラ王女の方が良かろう」

俺は皇子の声を聞いて、なんかモヤモヤした。

カーラをこのような権謀詐術の長けた男の元にやりたくはなかった。

まあ、しかし、とりあえず、目の前の火事をなんとかせねばならない。そのためには最悪サウス帝国の力を借りれることが判っただけでも良しとするしかない。


俺はその日はカーラの温かい胸元の俺の寝床に帰ったのだった。



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