目次
ブックマーク
応援する
いいね!
コメント
シェア
通報

【Roster No.15@ウランバナ島北東部】


 以前ミラトガで行われた『ラメブイル湖のデスゲーム』の優勝チーム【Raise Your Spirits】のルビーとモリの二人を中心に『ウランバナ島のデスゲーム』に優勝するためのメンバーを集め、結成されたのが15番チームである。優勝賞金を手に入れるだけでは満たされず、新たな闘争を求めて参戦した。といった経緯を鑑みれば、最後の3チームに残ったのも頷ける。前評判通りの活躍といえよう。


べっチか」


 モリと同じ敵を、別の場所から撃ち倒した参加者がいる。携帯情報端末に流れる参加者の死亡ログから情報を読み取ったルビーは、モリが使用していた89式とは異なる銃声のする方角を、モシンナガンに取り付けたスコープを覗きこんで確認した。

 軍服の女の子ナイトハルトを発見するのに、さほど時間はかかっていない。彼女が所持しているHK416の銃声は、聞こえてきた銃声と合致する。あれがナイトハルト。恨みはないが死んでもらうしかない。ルビーは彼女の頭部に照準を合わせて、


「……なんだ?」


 スコープから目を離す。その呟きに、そばでマガジンを交換していたモリが顔を上げた。しかし「どうした?」と疑問を口にする間もなく、次の瞬間には「あぶねっ!」とルビーに突き飛ばされていた。ドローンから射出されたミサイルがルビーのヘソに突き刺さり、その上半身と下半身を分断する。


 <<ルビー が プレイゾーン外 で 死亡しました>>


「な、なななななあなあなななな!?」


 歴代のデスゲームの中でも激戦と言われている『ラメブイル湖のデスゲーム』を乗り越えた仲間が真っ二つになった。他の参加者からではなく、運営が差し向けたドローンの奇襲によって。


『ルール違反デス』

「な、なん、なんで!?」

『“失格”デス』


 わけがわからない。対話は不可能と、モリはアサルトライフルの89式をその場に置いて、近距離の火力ならばサブマシンガンのUZIに持ち替える。全弾命中させて、ドローンを撃ち落とした。

 一旦の危機を退けて、深呼吸し、ルビーの亡骸に向き合う。かれこれ一年以上の付き合いのあった盟友の、驚きに見開かれた両目のまぶたを閉ざしてやった。


「……ここからはソロか」


 これまではルビーと二人三脚でやってきた。しかしこうしてルビーを亡くしてしまったいま、切り替えて、一人で戦わなければならない。ルビーはモリを突き飛ばすことによって、自らの身体に着弾して破裂するミサイルのダメージから、モリを守っていた。最期まで憎いことをするリーダーである。優勝して報いなければなるまい。両頬を叩いて気合を入れ直すモリの元へ、


『ルール違反ノ為、Roster No.15ヲ“失格”トシマス』


 と、新たな刺客ドローンが飛んできた。ルール違反があるとすれば、自前の武器や電子機器を持ち込むぐらいしか思い当たらないが、どちらも持ち合わせていない。モリはルールに則って、殺し合いに参加していた。ただ『ウランバナ島のデスゲーム』のルールに、他の地域のデスゲームとは違うルールが追加されていることには気付いていない。


 25のである。


「敵が増えちゃったなあ」


 ぽつりと愚痴をこぼしつつ、今度はルビーの腰からデザートイーグルを引き抜いて、その大口径から繰り出される銃弾で新手を撃ち抜く。反動で肩が痛むが、これしきの痛みは耐えなければ。


(小屋の中に逃げ込めば、なんとかならないかな?)


 89式を拾い上げて走る。小屋の中にドローンは入ってこない……だろう。家ではいけない。窓をかち割って飛び込んでくるかもしれない。小屋に逃げ込んで、扉を閉めれば、なんとか――


「わっ!」


 右膝に激痛が走って、前のめりに転んでしまった。89式を握っているぶん、両手を付くことができずにあごを擦ってしまう。痛みのする箇所を見れば、矢が刺さっている。


「おつかれさまっしたー」


 女の子の声が聞こえてきた。自分の味方はもういない。モリは声がしたほうではなく、天を仰ぎ見る。あの日と同じ、雲ひとつない青空が広がっていた。


 <<モリ が プレイゾーン外 で 死亡しました>>



【生存 4(+1)】【チーム 2】


この作品に、最初のコメントを書いてみませんか?