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【Roster No.4@ウランバナ島北東部】

 わたし、この世界でもっとも運のない人選手権を開催したら優勝できるかもしんない。おい、かかってこいよ挑戦者。わたしのほうが上だぞまじで。ワーストワンを決めようや。


「あだだだだだ……」


 早々に脱落した味方の代わりにお話し相手になってくれていたバイクがわたしを裏切った。というのは半分冗談で、わたしが北西部エリアから北東部エリアに向かって無我夢中でバイクを走らせていたらちょっとした石につまずいて横転したのだよ。ズギャアアアア。免許は持っているけど、バイクでウィリーはできないんよ。いやウィリーしててもダメだよ。飛び越えなきゃいけなかった。石を。見えてなかったから仕方ないとはいえ仕方ないでは済まされないぐらい痛い。


「うぅ……なんでわたしばっかりこんな目に……」


 涙が出ちゃう。この島に降り立った時から運営ガチ推しチームに狙われるわ、追い回されるわ、コケるわ。災難続きでやばすぎる。昨日願掛けしてから来たのになあ。おかしいなあ。

 これで北西部エリアから脱出できてなかったら泣きっ面にハチだよ。エリアの境目に線が引いてあるわけでなし。というわけで、わたしは携帯情報端末の地図を見る。よし、北東部エリアに入れているな。そこは、ついてる。


「おんやぁ?」


 いや、ついてない。やっぱりついてない!


「こんなぁとぉころで寝転がっちゃったり一休みしちゃったりしちゃっててぇ、無防備じゃなぁい?」


 右手でMk47を握って、銃身を上下させてパーにした左手に打ち付けているパツキンの男。柄シャツにデニム、耳にはピアスがいっぱい。ウランバナ島こんなところじゃなくとも会いたくないタイプの、いかにもチャラそーな男。こういう男が好きって女の子もいるというのは百も承知で、わたしは嫌いなタイプだとはっきりと言える。というわけで、逃げたい。逃げたいが、バイクから投げ出されて全身打撲状態、たぶん折れてる。相手はアサルトライフルを持っていて、その気になれば次の瞬間にはこっちに銃口を向けてきそう。痛みをこらえてバイクにまたがったとて、発進できるかどうか。逃しては……くれないよなー……。逃すメリットないもん。優勝が遠のくだけ。一発逆転を賭けて命乞いしてみる?


「おねえさんさあ。一発ヤらせてくれない?」


 ?

 ???????????


 え、っと、何?


 嫌ですが???????


 えーっと、……嫌ですが???????


「死にそうになっちゃうと生殖本能が働いちゃうって言うじゃぁん? そうでぇもなかったりしちゃったりしちゃう?」


 押し倒されるわ、おなかの下辺りになんだか硬いものを押し付けられるわでさんざんですわ。でもおかげで勝機が見えてきた。この硬いものは、そう、男の人のアレじゃなくて、男が持っていたアサルトライフルが当たっているものと思いたい。思いたいぞ。きっとそう!


 フルパワーで押しのけたいけど全身バッキバキに痛い。右肩は押さえつけられていて動かせない(最高に痛い)けど、左は自由に動かせるから、ポケットから拾い物のナイフを取り出す。持ち込みのナイフは空港で回収されてなきゃいけないから十中八九拾い物なんですけどねガハハ。笑っている場合ではない。挿される前に刺す。


「いっ!?」


 男の左肩辺りにナイフを入刀する。わたしまで「あだだだだだだだ」と痛がっているのは不自然でもなんでもなく本当に痛いから。腕が。グッと力を入れるだけでぎゅっと軋むように痛い。その痛みをこらえて攻撃したんだからえらい。本来は全治何ヶ月の入院が必要なレベルの重傷なんだってば。


「そぉんなにいやぁ?」


 こいつ引かないぞ。先手必勝とばかりにナイフで刺してきた女とワンチャンあるわけないでしょうが。どういう感性でここまで生きていらっしゃるの……。


「嫌です!」


 よし、言えた。言えたぞ。どっちみち死ぬのだとしても最後ぐらいは運よくいきたいもんで。ワーストワンは逃れてブービーぐらいにはなっておきたい。ので、歯を食いしばって右ポケットに入っているコルトパイソンの銃口を男に向け、引き金を引いた。



【生存 39(+1)】【チーム 15】



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