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【Roster No.12@ウランバナ島北西部】

「せーの!」

「あなたの心を」

「サーチアンドスティール!」

「人気配信者四人組ユニット、らびっとぱんちだお!」


 決まったわ。見なさいよ目の前のアホ面どもを。特に三枚目の男の後ろにさっと隠れた女。あたしは知ってんだからネっ。


「そこにおわしますはちょー人気配信者のミオさんでございませんこと?」


 あたしに名指しされても、引っ込んだまま出てこない。草。男を盾にするなんてやりよる。


「イマドキ顔出し配信なんてサ、承認欲求の鬼すぎてやばの極みなんよ」

「なんだとぉ!」


 ミオではなく、ミオが盾にしている男でもなく、すぐそばにいたモブっぽい男が反論してきた。顔真っ赤。あ、コイツ輸送機内で騒いでたやつじゃね?


「らびっとぱんちなんて聞いたことないから!」

「なーにぃー!」

「やっちまってんなァ!」


 はあーやれやれ。どうせあれでしょ。ミオにマジトーンで恋しちゃって『デュフフ、ミオの騎士になるでござるよデュフフ』みたいなタイプっしょ。オタクくんちょろすぎわろた。そんなオーラがダダ漏れすぎて心のダムが決壊寸前なんよ。


「うちらは、配信者は配信者でもぉ、ブイっていうかー」


 ブイブイ。今や泣く子も黙るブイチューバー。星の数いるうちでも一等星みたいな四人組ってわけ。わかる?


「賢い子はみぃんな知ってる。可愛いイラストを出しときゃ、じゃぶじゃぶ課金してくれるタイプの二次元オタクが釣れるってコト!」

「三次元は裏切るけど、二次元は劣化しないもんネっ」


 ちょー人気配信者のミオさんぐらいになると、劣化しないように加工アプリガンガンなんでしょ。あたし知ってんだ。リングライトも進化したよね。ブイログカメラなんてのもある。


「人気絵師さんに描いてもらったらその絵師さんのファンがそっち経由で知ってくれるし」

「一石二鳥でお釣りが来るんだお! 黒字経営だお!」


 オタクくんの「あくどい……」ってつぶやき、聞こえちゃった。どこがあくどいのか詳しく。まー、あれよ、あたしらとしてはファンの期待を裏切りたくなくてぇ、やってないけどぉ、裏アカ作ってファンから「ここに送金して」って言っちゃうようなのもいる。群雄割拠すなわちバレなきゃ何やってもヨシ!


「ま、ちょー人気配信者のミオさんには、イマから死んでもらいますわよ」


 あたしは家ん中で拾ったワルサーP38を構える。かの有名な怪盗の三世が使っている拳銃だから、見たら一発でわかっちゃった。他の子は、某ゾンビゲームに出てくる拳銃を拾ったり、見た目がいい感じに強そうなショットガンを選んだり。あとはスコーピオンっていう名前でもう勝ちな小さなサブマシンガンを装備している。やっぱこうでなくっちゃ。武器も拾わずにウロウロしてる人たちって、何しに来たの?


 ミオが盾にしている三枚目のアホが「ひっ!」と両手を挙げた。

 いいじゃんいいじゃん。


「ミオさんを出してくれたら、見逃してやってもイイよん!」


 何しに来たんだかな三枚目の男が「えっ、え、えっ」と混乱し始めた。丸腰。丸腰ですこの人! 何しに来たの?


「ユウくん! やっちゃってよ!」


 ミオも無茶言うな。そのユウくんって人、なぁんも持ってない。こっちは武装してる。勝敗投票させたら確実にあたしたちの勝ち。間違いない。


「ミオ、ここはおれに任せて!」


 出た。オタクくん。そのセリフが出てきたことは褒めてあげよう。ミオも「ユキナリくんならやってくれるって信じてる!」と絶対そうは思っていなさそうなセリフで焚き付ける。かわいそ。


「おまえたちの足元には、爆弾が埋まっている!」

「おん?」

「……掘って埋めたような痕跡はないのに?」


 鋭いツッコミ! いいねいいね。あたしたちをなめないでもらいたいよネっ。


「信じずに進むと足が吹っ飛ぶぞ! いいのか!」


 お、おう。あたしたち、この茶番に付き合わされてんのやばくない? どうする? このオタクくんからぶっ殺す? ……味方のほうが先に呆れて、こっそりその場から逃げようとしてんの草。つくづく報われないなオタクくん。


「バレバレなんだよぉ!」

「いぎゃっ!」


 あたしがP38を撃ったら、ミオの左耳をかすめる。初めてなのに当たっちゃった!


「いだい……いだいよ……!」

「あわぁ!」


 ユウくんとやらが腰を抜かす。ミオは左耳を押さえてうずくまっていた。これなら狙いも定めやすいネっ。


「おれのミオになんてことを!」


 オタクくんがなりふり構わずタックルしてきた。あたしではなく、一番背の低いユーコに。やばやば。ユーコが「ほぎゃ!」と押し倒された。ショットガンは握ったまま。


「うちのユーコになにするだ!」

「そうだお!」


 某ゾンビゲームの拳銃と、スコーピオンの銃口がオタクくんに向けられる。オタクくんはショットガンを力づくで奪い取って「おれはやるぞ、やってやる!」のセリフに合わせてパァンと発砲した。


 <<ユキナリ は レミントンM870 で ツキノ を キルしました>>


「ぎゃっ!?」

「まっず」


 あたしがオタクくんに狙いを定めているうちに、オタクくんがリロードして二発目を放つ。


 <<ユキナリ は レミントンM870 で ココロ を キルしました>>


「ひいっ!」


 至近距離で仲間を二人やられて、ユーコは泡を吹いて気絶してしまった。あたしがやるしかない。……ミオを狙っている場合じゃなかったってこと?


「クソがよ!」


 あたしがやるしかない。ツキノとココロを殺してくれちゃったこのオタクくんを、あたしがやるしかない。あたしがやるしかない。あたしがやるし


「ミオのために!」


 <<ユキナリ は レミントンM870 で ノア を キルしました>>


【生存 94 (+1)】【チーム 25】


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