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第21話 ベテランの強さを見せつけてほしい

 ルナはレモンティーの《テレポート》によりマミークイーンの頭上に移動し、その脳天にヴァンガードの《フルパワーストライク》をMPが尽きるまで叩き込む。

 その威力は各種バフによって上がっているため、みるみるうちにマミークイーンの体力が削られていく。


「うおおおおんうおおおおん!」


 体力ゲージを半分にしたところでマミークイーンが激しく暴れ始めた。頭上から振り落とされたかに見えたルナは【統率】にてサマナーの《コットンクラウド》のスキルを使用し、地上にふんわりと着地する。もし何か言われたら一般プレイヤーのスニーカ族のうちの1人にサマナーがいるので、そいつが使ったことにしよう。


「来るニャ!」


 レモンティーがマミークイーンの予備動作を見て、ルナに注意を促す。マミークイーンが深呼吸するように上体を反るのは《ダイイングメッセージ》の兆候である。だが、上体を反らすということは弱点を晒してくれているようなもの。好機到来である。

 ルナは「はあああああああああああ!」と気合を込めて《ライトニングソード》を帯電させるとマミークイーンの胸を目掛けて突撃していく。


「くらえ!」


 助走をつけて跳び上がると《ライトニングソード》をマミークイーンの左胸に深々と突き立てる。致命的な一撃を食らってしまったマミークイーンは「びぃやあああああああああああああああああ!」とその痛みに身悶えた。


「す、すげぇワン……」

「これが†お布団ぽかぽか防衛軍†のルナの戦闘力かワン」


 膝をつくマミークイーンを呆気に取られて見上げているだけのスニーカ族たちへ、レモンティーが「ほら! アンタらがとどめを刺さなきゃダメでしょニャ!」と檄を飛ばす。この声に後押しされるように「い、いくワン!」とへっぴり腰に武器を構えて立ち向かっていった。体力ゲージは残りわずか。マミークイーンは自らを回復させるスキルがないので、このまま押し切ることは容易である。


「ふぅ……」


 ルナは右手にスマートフォンを取り出し、インベントリの《イエローエーテル》をタップして使用した。これで消費したMPを回復できる。乱れたプラチナブロンドの髪を手櫛で整えて、今度はカメラを起動してマミークイーンの残り体力を確認した。うまく体力を調整できていたので胸を撫で下ろす。あとはこのスニーカ族の方々がペチペチと殴って倒せるだろう。


「お姉様、さすがですニャ!」


 レモンティーが大袈裟にパチパチと拍手しながらルナを褒めちぎるのはいつものことである。遠くで見ていたカイリも駆け寄ってきて「かっこよすぎました!」と讃えてきた。考えてみれば、カイリの見える範囲で戦ってみせたのは今回が初めてである。範囲攻撃の魔法で露払いをしている姿しか見せていない。


「どうよ、これがウチのお姉様なのニャ」


 誇らしげなレモンティーに「ルナさんのこと、もっと尊敬しちゃいます! やばいです!」と《白銀の杖》をブンブン振りながら興奮しているカイリ。ルナはなんだか気恥ずかしくなってきて、ぷいっと2人に背を向けると「ほら、早くカイリちゃんのクエストを終わらせますわよ」と急かした。


「はいはーい!」

「もうっ、お姉様ったら照れちゃってニャ」


 レモンティーの余計な一言を聞いて、カイリは「照れてるんですかー?」とルナの背中に呼びかける。


「ほら! あそこにマミーがいますわよ! 倒しなさい!」


 ルナはカイリの呼びかけには応じず、初心者ミッションのクエスト対象モンスターのマミーを指差しながら早口で指示した。照れ隠しにしては強引である。カイリはニヤニヤしながら「よーし、やっちゃいますよー!」と左手でスマートフォンを操作し、装備を《ビキニアーマー》に切り替えてから《白銀の杖》を構えた。その杖の先から単体攻撃で水属性の魔法が飛び出す様子を想像する。


「行けっ! 《スプラッシュ》!」


 カイリが唱えると、MPが消費された。杖の先から勢いよく水が噴き出していく。原理はわからない。魔法とはそういうものである。敢えて科学的に説明するのなら、MPによって空中に存在する分子が化学反応を起こして水を生成しているのだとかいないのだとか。狙い通りに見事に命中し、マミーは粉微塵に吹っ飛んだ。


「やった!」

「1体じゃないわよ。もっと倒さないと!」

「はーい!」


 この調子で10体。次から次へと撃破していくカイリ。相手に杖の先を向けるだけでは芸がないと思ったか、途中から逆の手で《白銀の杖》を握ってみたり片足を上げてみたり耳にかけてみたりしていた。どれも綺麗に決まっていく。


「もしかして、わたしって強いですか?」

「アンタが強いんじゃなくて、装備が強いニャ」

「そりゃあもちろん、レモン先輩のお下がりですから!」


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