二台の
「七つのヴェールの踊り」は、クライマックスを迎えている。
サロメが、一気に体を反らし、足を蹴りあげると、ヴェールは瞬時に花開いた。
勢い、サロメの足は、太ももまで露になり、そして、身に付けている、ビーズに、コインに、腕輪が、シャラシャラと音を立てる。
そんな、自身に寄せられる視線などお構い無しで、サロメは、更に、身をくゆらせ、ヴェールをたなびかせた。
この中に、犯人は、いる。
仲間を手にかけた者が、いる。
舞いながらも、サロメは、集まっている男達の顔を目に焼き付けようとしていた。
と、ひときわ輝く、エメラルド色の瞳を見つけた。
(ああ、ヨカナーン、来てたのね。)
パトロンの共として、やって来たのだろうか、その男──、貴族に従事る、
あ と で
男は、サロメにそう伝えて来た。
彼にも、積もる話があるのだろう。
そして、サロメも、館で起こっている事について、知っている事はないか問いたかった。
ゴーンと、銅鑼が鳴る。
これを合図に、最後の仕上げに取りかかる。
大きく踏み出し、飛び上がる。動きに沿って、ヴェールがなびく。
シャラシャラと、装飾品が、音を立て、サロメの動きを際立てる。
両手は宙を掻き、足先が、小鳩の様に飛び跳ねる。
重ねたヴェールは、夜気と共に広がって、一瞬、サロメの姿を隠してしまう。
そして、再び銅鑼の音──。
床に広がるヴェールと共に、ひれ伏すサロメの姿がある。
舞は、終わった。
一瞬の間の後、広間には、割れんばかりの拍手が沸き起こった。