松前から新たなメールが届いたのは翌日、土曜の夜だった。
『契約書はありませんでしたが、請求書と領収書を手に入れました。どちらも「オーダーメイドCD制作費」で、オプションなしとなっています。電話は繋がりませんでしたが、メールを出したら返事がありました。元々、サブリミナル効果なんて扱ってないそうです。証拠にしてもらっていいと、プラン表のPDFをもらいました。あと、カルテ調べ終わりました。計11人で、2人CD買ってます。』
相変わらずの優秀さと仕事の速さに感嘆する。これで、詐欺は確定か。
『ありがとうございます。欲しいものを全部揃えてくれたんですね。ただ、それを松前さんが持っているのは危ないと思うので、こちらで預かります。会えませんか』
これまでバレていなくても、これからバレる可能性はある。これ以上は巻き込まない方がいい。松前はすぐに了承を返し、駅裏のコンビニを指定した。
「ちょっとコンビニでお菓子買ってくる。欲しいものある?」
部屋を覗いた私に、吉継は眩しいモニター群から視線を移す。デスクの周りにモニターは六つ。それで何を見ているのか、私は未だによく分からない。
「おいしそうなナッツがあったら買ってきて」
「了解」
短く答えてドアを閉め、寝室へ向かう。あれ以来ちゃんと閉まっているクローゼットを横目に、コートを羽織る。あの鹿肉を食べた者への処分がひととおり済んだから、は呪いに毒され過ぎた解釈だ。幻覚症状が落ち着いただけだろう。
コンソールの引き出しから、この日のために準備しておいた茶封筒を取り出す。時間を確かめ、松前の待つコンビニへ向かった。