色を変えたヨーグルトを掻き分け、沈めていた鹿肉を取り出す。最初がロース、次がバラ、最後がモモ。既に加工場で一度血抜きをされているが、家でも一晩ヨーグルトに漬け込む。この一手間で、獣肉独特の臭みがすっきりと抜けるのだ。
残ったヨーグルトをキッチンペーパーで拭い、白っぽくなった表面に鼻を近づける。嗅ぎ取れた爽やかな酸味に頷いて、まな板へ移した。
ロースはステーキ用のブロックに、バラとモモは薄切りにする。研がれたばかりの牛刀を差し込むと、ロースは少しの抵抗を残しつつ分かたれて赤い色を見せた。