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第44話 黒幕

「……想定外って……! 人が! 実際に死んでるんですよ!?」


 声を張りあげる純汰じゅんたの目には、涙が浮かぶ。それに対し、感情の読めない声で魔女達が答える。


『こちらとしても、殺し合いにゲームが設定され……プログラムを書き換えられていることに気づいた時には、すでにゲームが始まってしばらく経っていました』


(ん? どこか日本語がおかしいな? なるほど……いよいよ、|崩《・》|壊《・》ってわけか)


「てめぇらが壊れてんのは理解した。んで? 結局のところ、王にしたかった野郎も死んで、その浮気女ももうじき死ぬんだろう? そこでだ。……取引しようじゃねぇか」


 景梧けいごの言葉に、こよみ忠義ただよしと純汰が驚くが、気にすることなく彼は続ける。


「ようやく名乗るが、俺の名前は狩屋かや景梧。……医者だ」


「えぇー!! お、お兄さん、お医者さんだったんですか!?」


 純汰が驚きの声を上げる。それに対し、暦が声をあげた。


「ヒュー! 確か、若き天才ドクター! って一部記事に書かれてなかったー? なるほどね? だから、こんなにも死にドライだったわけかー!」


「うるせーよ。……とにかくだ。そこの浮気女を助けてやる。ついでにてめぇら魔女も、存在が維持できるように……がなんとかする。だから俺達四人を生きて帰せ」


「え? 純汰君。この人工知能をなんとかできるんですか?」


 尋ねる忠義に、純汰が遠慮がちに答える。


「じ、実は……僕大学生と言っても……その、一度アメリカで飛び級してまして……。プログラミングなら、なんとか……」


 あまりにも都合がよすぎる展開に、忠義は閉口するしかない。それに気づいた景梧が彼に向かって声をかける。


「おそらく、こうなることも考えていたんじゃねぇか? そうだろう? 朝春あさはる!」


『さすが、兄さんだ。やっぱり……敵わないな』


 若い男の声が響く。暦の近くのモニターに映し出されたのは……朝春だった。

 彼は静かに答えた。


『このプログラムが動いているということは、本体は死んでいて……いや、殺されているんだね。そうだよ。死が間近に迫っていると理解したからこそ、ぼくは円卓の騎士をシミュレーションしたものを用意していたんだ。死のゲームに改変されたとしても、兄さんならたどり着けると信じて』


 朝春が残した人工知能の答えに、景梧が舌打ちをして静かに告げる。


「お前も本当の意味で、そろそろ死ぬんだろう? どこまでも振り回しやがって」


 二人のやり取りを聞いていた忠義が尋ねる。


「……結局のところ。ここはどこだったんです?」

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