名前を呼ばれた彼女、
『いつから気づいていたのです?』
「ついさっきだ。そこのランスロット君の様子でな? 伝承において円卓が崩壊した起因は……ギネヴィアとランスロットの色恋沙汰だっただろうが? ちょうど良く、ウチの弟君である
そこで言葉を一端区切ると、景梧が告げた。
「んで? 円卓ごっこまでして、朝春の後釜にソイツをしようとしてたのはなんでだ? その方がロマンチックだとか、自分達を重ねて惚気てたってか? ……ざけんじゃねぇぞ」
今までにないほどの怒気を含んだ声色に、この戦いが始まってからずっと傍にいた
だが、景梧は気にせず話を続ける。
「思い出したぜ?
どんどん体温を失って行く
『いいじゃありませんか! 親が決めた恋人より! 愛した人と結ばれたい! そう思うことのなにがいけないというのですか!』
「しらねぇよ、クソ浮気女が。他人の色恋沙汰なんざ興味の欠片もねぇが……こっちは弟殺されてんだ。その上、わけのわからん円卓ごっこで殺された連中がいる。その死に報いやがれ」
冷たく言い放つと、景梧は実体化している清音を斬り裂いた。途端、霧散する彼女に興味をやることなく、死んでいる頼の胸元を強引に開け、ペンダントを取るとその場にたたきつけた。
そして――。
「おい、アナウンスはいらねぇだろ? さっさと案内しろ」
途端。頭上から今までのアナウンスとは違う声が響く。幾重にも重なったこれまでの魔女達の声だ。
『ご案内致します』
どこかで扉の開く音がした――。
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「……結局のところ、わたしと彼……純汰君含む円卓の騎士の座を与えられた者達は、ただ彼らの色恋沙汰に利用されただけ……というわけですか。はぁ……死に損とはこのことですね……」
忠義が嘆きを含んだ声で言えば、横を歩く純汰が尋ねる。
「……僕は……どうしたら……よかったのでしょうか? 最後まで……足手まといで……」
「最後かどうかは……わかんねぇぞ」
景梧がそう告げると同時に、目的の場所へとたどり着いた。そこには、大きなモニターが複数置かれており、椅子に青年が座っていた。
「やぁ! ようやく直に会えたね? ハロー! マーリンにされた
軽薄な口調で礼を述べる暦に、景梧が尋ねる。
「それで? あの女はどこに? あと、魔女共も」
暦は手を軽く叩くと、指さした。
「そこで眠っているのが、リーレでありギネヴィアであり……魔女達を総括していた潔音ちゃんだよー! まぁいうて……朝春君だっけ! 彼の事故に見せかけた霧彦君の仕掛けに巻き込まれて、肉体的には植物状態だけどねー?」
「……なるほど? つまり……どういうことです?」
もっともな忠義の疑問に答えたのは、魔女達だった。
『お答えいたします。このゲームは最初から、ランスロット卿もとい湖西頼をアーサー王こと狩屋朝春の後任として我々が迎え入れ、そして、本体である潔音を生かすことが目的でした。ですが、モルドレッド卿の座に就かせた百瀬川霧彦の担当になったモルガンが、彼側についてしまい……』
「それでただ、
尋ねる忠義に……魔女達が告げた。
『その通りです。殺し合いになること自体が、想定外でした』