「広さが……把握できていないですね? これは?」
その時、彼を担当する魔女が声を発した。静かかつ淡々とした口調が響く。
『ベディヴィエール卿』
「なんです? グリトネア……でしたね? まさかあなたが自主的に声を発するとは思いませんでした。なぜ、
『それは、この場所であればあなたの疑問が解消できるかもしれないからです』
「ほう。わたしに協力しようと? あなた方を疑っているというのに?」
冷たい口調で訊き返す忠義に、それでもグリトネアは口調を変えることなどなく話を続ける。
『わたくしはあなたの為にいる――魔女ですので』
「……そうですか」
その後会話することなく、忠義は城内を歩き回ることにした。なにか少しでも情報を得るためだ。
そうして、探索していると重厚な扉のある部屋へと辿り着いた。
(ここは? ……入ってみますか……?)
悩む忠義に対し、グリトネアが声をかける。
『ベディヴィエール卿? どうなされましたか?』
(誘導……されていますね……)
そう判断した忠義は扉を開けず、別の方向へ歩き出した。
『よろしいのですか?』
「……えぇ」
(ここで……魔女の話に乗るのは賭けにもほどがありますからね……それに、嫌な感じもしますしね?)
「グリトネア」
歩きながら忠義が声をかければ、彼女は静かに答える。
『はい、なんでしょうか?』
「……あなたはわたしに何を望んでいるのです?」
『最初に説明したはずですが? ベディヴィエール卿』
「……新たなる王、でしたね」
『その通りです』
グリトネアの言葉に忠義が少し考えた素振りをしながら、訊き返した。
「そもそも、あなた達が王とする人物をわたしは知らないのですが?」
そもそもの疑問であり最大の謎を尋ねれば、グリトネアはしばらく沈黙した後無機質に答えた。
『ならば、かつての王を表し場所へご案内いたしましょう』
この提案に乗るかしばらく悩んだ忠義は――乗ることにした。
(気になる疑問は解消するに限りますしね……それに……)
深呼吸をして、ゆっくりとグリトネアに声をかける。
「わたしが王になれるか、どうか。見極めて頂こうじゃありませんか――」
挑発とも取れる忠義の言葉にも、グリトネアの声色は変わらない。
『えぇ、ぜひ。そうさせて頂きましょう、ベディヴィエール卿』
こうして、グリトネアの案内に沿いながら、忠義は城の中を進んで行くのだった。