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第33話 分岐

 ――三人目の脱落者が出てから、一時間後。


 ****


「ここは……?」


 忠義ただよし太陽たいようが辿り着いたのは、城だった。


「ここ……日本って言ってなかったっけ~? ねぇ?」


「えぇ、そのはずです。まぁ土壌の感じからして、日本なのは間違いないでしょうが……しかしこれほどの広さかつ建造物を、どう維持してきたのでしょう」


 忠義の言葉に太陽が感心した声をあげる。


「土壌でわかるなんてすごいねぇー。さすがはお花屋さんというところかな?」


 茶化すような口調の太陽に対し、忠義は冷静に返す。


「……まぁ、そのために大学を卒業しましたからね。多少は知識ありますが……ここで役立つのはせいぜい日本であると土で判断できる程度です。それ以外の情報は……未だに出てきませんね」


「そうだねー。ぼく達にとってのアーサー王っていう人? の事ぜんっぜんわかんないままだねー?」


「えぇ、ですね。さすがに城内であればあるいは……ただ、太陽さんの能力を考えるとあまり屋内に入りたくはありませんが」


 そう言って、城から太陽に視線をやる忠義に、太陽が苦笑いを浮かべる。


「確かに~。日光が運よく当たっているならまだしも、ねぇ?」


 お互いに視線を交らわせる。二人の瞳は探っているようにも、不安で揺れているようにも見える。


 どうすべきか悩んだ挙句……二人は同時に声を発した。


「別行動を取りましょう」


「別行動しようか」


 二人は思わず笑い合う。だが、そこにスキはなく。少しして、太陽が片方の拳を前に出す。


「それじゃ、ここで一旦お分かれだね~。ま……生きて会おう?」


「えぇ、お互いに」


 そう言って二人は分かれていく。忠義は城内へ、太陽は日の当たる場所へと。振り向くことなどなく、ただ前だけを見て歩く二人。

 友人でもなく、知り合いでもなく、ただこの場所で刹那的に出会っただけの協力関係の二人に芽生えたものは――特になにもなかった。


 殺し合いのこの場で、気を許す相手に二人は慣れなかったのだ。かたや花屋、かたやホスト。


 昼と夜が交わることなどないように、彼らもまた友情を交わすには至らなかった。


 ただ、思うとしたら。


 それは少しでも長く生きて、生き延びて。


 そして、生き残ってこの場から無事に日常へと戻ること。それだけがお互いの共通認識だった。


 それもあって、彼らが振り返ることはない。互いの無事を祈ることもない。……なんなら別に再会できなくても構わない。ただただ、死にたくないだけなのだから――。


 分岐した二人の運命を知るのは、魔女達のみ。

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