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第31話 二人の決着

「随分と強気ですね! 自分、燃えてきました!」


 聖斗まさとが更に楽しそうに口元を歪ませる。その様子を見てもなお、らいは努めて冷静さを保っていた。


「さぁ! 伝説でも最強の剣二本に、どう向かってくれるんですか!?」


「そうだな。例えば……こういうのはどうだ?」


 そう言うと頼はアロンダイトを再度地面に突き刺した。そして、


「愛に目覚めし騎士は詠う。清き乙女に想いを捧げる。――白い妖精よ、今ここに」


 頼が真っ白な女性の姿のを呼び出した。そして、告げる。


「さあ、還るがいい」


 白いが辺りを包み込む。勢いを増していたはずの聖斗の動きが止まった。


「え? 動けません! 動けませんよ!?」


 ここで初めて動揺を見せる聖斗に向かって、頼がゆっくりと近づいて行く。

 彼が一歩進むごとに、聖斗の身体に異変が起こって行く。


 ――二本の剣が消失。


 ――聖斗の甲冑が消失し、ローブ姿に。


 ――そして、胸元のペンダントから


「……あ」


 その言葉を最後に、聖斗は突如として息を引き取った。理由も原理も、なにも理解できないまま彼は死を迎えたのだ。


 それを確認すると、頼が静かに空間を解除する。魔力の消費による疲労でふらつく身体をゆっくりと支えると息を吐いた。


「ふぅ。彼が本来のガラハッドでなかったからこそ、出来た技だな」


『驚きました。まさか、伝承に沿っていないオリジナルの技を編み出すとは。流石です』


 素直に称賛するリーレに向かって、頼が口を開く。


「なに、これぞ――愛ゆえさ」


 その言葉に再びリーレが称賛を贈る。


『素晴らしい。やはり、あなたをランスロットの座にお招きしたのは正解でした。この調子で、他の円卓の騎士達をほふり――王となってください』


「あぁ、望まれるならなろうじゃないか。新たな王とやらに」


 そう決意を口にする頼の目は新淵のようで、かつ暗かった。どこまでも重い愛。それが彼の原動力なのだ。


「それで? モルドレッドとケイはどの順番の方がいいんだ?」


 そう尋ねた時だった。軽薄な男性のアナウンスが響き渡る。


『はーい! いよいよ三人目! 脱落者の紹介だよー! 今回の脱落者は、ガラハッド卿もとい新居にい聖斗君でしたー! いやー彼の奮闘はなかなかのものだったんですけどねー? やっぱり……おっと! 口を滑らせるところでした、危ない危ない! それじゃあ、シーユー!』


 話を中断されたことを気にもせず、頼は地面に転がる聖斗の遺体を見る。そして静かに呟いた。


「お前が本来のガラハッドであったなら、勝ててたかもな?」


 その声はどこまでも冷めていた。

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