「……ほう」

　感心した声を出す頼らいの前には今、黒い騎士が現れ迫ってきている。だが、彼はいたって冷静だった。

「リーレ、サポートを頼む」

『承知しました、ランスロット様』

　頼はアロンダイトを構え直す。黒い風を纏わせ、そこに魔力を乗せる。そして……。

「はっ」

　冷静な声色で、黒い騎士が持つ黒剣をアロンダイトで防ぎ、その勢いのまま魔力を乗せた風で騎士を吹き飛ばす。

　よろける騎士をアロンダイトで斬り裂くと、騎士は姿を消した。それを見た聖斗まさとが感心した声をあげる。

「おー！　凄いですね！　でも、まだまだここからですよ！　出でよ！」

　聖斗の呼び出しにより、呪いの黒き騎士が何体も現れた。

「ふむ。これでは埒らちが明かないな？　リーレ」

『承知しました。リ・ー・レ・と・し・て・あなたに加護を』

　その声と共に、頼の胸元が輝きはじめる。アロンダイトを地面に突き刺すと、その周囲から円形状に黒い風が波となって、周囲に伝播していく。

　その勢いは凄まじく、風でありながらその実体は刃のようで。

　あっという間に複数の黒い騎士達は消滅して行った。その中を頼が猛スピードで駆け抜けて行く。手にはいつの間にか地面から抜かれたアロンダイト。

　そうして、聖斗に接近して行く。気づいた聖斗が、自身の魔女に声をかけた。

「ティロノエ！　武器を変えます！」

『形状変化開始。モード、選・定・の・剣・と・ダ・ビ・デ・の・剣・』

　二本の片手剣に持ち替えた聖斗は、器用に回転しながら頼に向かって行く。

「ふむ。中々手強いな」

『どうなさいますか？　撤退を視野にいれるのもありかと思いますが』

　リーレの言葉を聞きながら、聖斗の猛攻を避ける。そうしつつ、思考を巡らせる。

（ふむ。｜彼《・》｜女《・》｜の《・》｜希《・》｜望《・》｜に《・》｜沿《・》｜う《・》｜と《・》｜す《・》｜る《・》｜な《・》｜ら《・》……撤退だが……）

　聖斗の攻撃はどんどん速くなり、かつ威力が増していっている。その状況で撤退するにしろ、彼を倒すにしろ……何か手を打つ必要が感じられた頼は、アロンダイトで退けつつ策を考える。

（……よし、殺すか）

　リーレの意向とは少し違うが、騎士を減らすことも目・的・の・一・つ・だ・。

　自分の役割を再認識した頼は、アロンダイトに更に魔力を込める。

「アロンダイト、オーバードライブ」

「お？　なにをする気ですか！　楽しみですね！」

　まだ楽しむ余裕がある聖斗に対し、頼が静かに問いかける。

「なぁ、ガ・ラ・ハ・ッ・ド・？　君は――なぜその座に就いたんだ？　悪いけれど、どうにも疑問があってな？　ガラハッドにしては……言動がおかしいんだ」

　その言葉に、聖斗が大口を開けて笑い……そして言い切った。

「それはそうでしょう！　本来のガラハッドになるべき人物は自死！　その座の後継人が自分なんですから！」

「ほう。つまり、本来ガラハッドは別だったのか」

　合点がいった様子で頼が聖斗に向きなおると、一言告げた。

「なら、ここで死んでもらおうか」