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第27話 彼と彼

 同時刻。


 荒らされた円柱状の建物の中に、はいた。


「ふむ。この荒らし方は、誰かがここに来たあとだな?」


 冷静に状況を分析すると、魔女・リーレが声をかける。


『ランスロット様、ここを荒らした者はおそらく――ケイ卿です』


「ケイ卿? ……あぁ確か、アーサー王の義兄として名が残る騎士。いや、それ以外特に伝承らしいものは確か……少しある程度の存在だったか? 我が座のランスロットに比べれば劣るというのに、ここまで生き残っているとはな」


 言った後に気づいたらしい。彼はリーレに尋ねる。


「しかし、ケイだとなぜわかったんだ?」


『魔女の痕跡です。そして、ケイ卿はおそらくガレス卿と行動を共にしているようです』


 その言葉を聞いて、彼は考える素振りを見せる。しばらくして、口を開いた。


「その二人とは、まだ出会わない方がいいか?」


『えぇ、可能であれば』


「了解した。じゃあその二人は避けるとしよう」


 そう告げると、彼は荒らされた部屋を片付け始める。丁寧に、そして綺麗になっていく。


 しばらくして、綺麗に片づけられた室内に満足すると、彼は静かに椅子に座る。


「これで、一息吐けるな……」


 呟いた彼に、リーレが声をかける。


『貴方をランスロットに選んでよかったと心から思っています』


 そう言われ、彼の目つきが変わる。何かを愛おしむような表情になった彼は静かに口を開く。


「それも全ては……彼女の……あぁ、ここであえて言うなら――のためさ」


 その表情からは、どこまでも深い愛が読み取れる。魔女・リーレは感心したように声をかけた。


『その愛情、まさにそれこそが我々の計画に必要かつ不足要素です。素晴らしいと称賛を贈ります』


「愛というものは、称賛されるようなものではないが……一応ありがとうと


 どこか含んだ言い方をする彼を気にすることなく、リーレが話を変える。


『しかし、初日以降脱落者が出ないのは想定外でした』


 その言葉に、興味なさそうに彼は尋ねる。


「そうなのか? まぁ確かに、他の円卓の騎士同士で協力し合ったりするのは俺も想定外だ。後は……どの順番で殺し合うかだな。は後回しの方がいいんだよな?」


『そうです。その方が助かります』


 その答えに満足したのか、彼は静かに床へ横たわると、眠り始めた。


(あぁ、彼女に早く会いたい。触れたい……|声《・》|だ《・》|け《・》では物足りないんだ……)


 深淵のような愛を抱えつつ、彼は静かに眠る。その様子を見て、魔女・リーレも静かになるのだった。


 ****


 その頃。

 モニタリングルームにて。


 マーリンの座に就いた彼は、退屈そうに画面を見つめていた。


(はぁ、退屈だよ本当に。死人が出なきゃ意味ないじゃん。えーっと……じゃあ、そろそろ死人が出るように舞台を整えますか)


 それも彼の役目だ。マーリンは円卓の騎士ではない。だが、アーサー王に仕え導いた存在。

 そして、彼は導き手としての役目も負っているのだ。騎士達がいる位置を把握すると、各々の魔女達に通達する。


「さぁ、そろそろちゃんと殺し合いのお時間だよ!」


(……なんて台詞、普通じゃ言えないからラッキー)


 どこまでも軽薄で、不謹慎な彼を咎める者などなく――。

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