同時刻。
荒らされた円柱状の建物の中に、
「ふむ。この荒らし方は、誰かがここに来たあとだな?」
冷静に状況を分析すると、魔女・リーレが声をかける。
『ランスロット様、ここを荒らした者はおそらく――ケイ卿です』
「ケイ卿? ……あぁ確か、アーサー王の義兄として名が残る騎士。いや、それ以外特に伝承らしいものは確か……少しある程度の存在だったか? 我が座のランスロットに比べれば劣るというのに、ここまで生き残っているとはな」
言った後に気づいたらしい。彼はリーレに尋ねる。
「しかし、ケイだとなぜわかったんだ?」
『魔女の痕跡です。そして、ケイ卿はおそらくガレス卿と行動を共にしているようです』
その言葉を聞いて、彼は考える素振りを見せる。しばらくして、口を開いた。
「その二人とは、まだ出会わない方がいいか?」
『えぇ、可能であれば』
「了解した。じゃあその二人は避けるとしよう」
そう告げると、彼は荒らされた部屋を片付け始める。丁寧に、そして綺麗になっていく。
しばらくして、綺麗に片づけられた室内に満足すると、彼は静かに椅子に座る。
「これで、一息吐けるな……」
呟いた彼に、リーレが声をかける。
『貴方をランスロットに選んでよかったと心から思っています』
そう言われ、彼の目つきが変わる。何かを愛おしむような表情になった彼は静かに口を開く。
「それも全ては……彼女の……あぁ、ここであえて言うなら――
その表情からは、どこまでも深い愛が読み取れる。魔女・リーレは感心したように声をかけた。
『その愛情、まさにそれこそが我々の計画に必要かつ不足要素です。素晴らしいと称賛を贈ります』
「愛というものは、称賛されるようなものではないが……一応ありがとうと
どこか含んだ言い方をする彼を気にすることなく、リーレが話を変える。
『しかし、初日以降脱落者が出ないのは想定外でした』
その言葉に、興味なさそうに彼は尋ねる。
「そうなのか? まぁ確かに、他の円卓の騎士同士で協力し合ったりするのは俺も想定外だ。後は……どの順番で殺し合うかだな。
『そうです。その方が助かります』
その答えに満足したのか、彼は静かに床へ横たわると、眠り始めた。
(あぁ、彼女に早く会いたい。触れたい……|声《・》|だ《・》|け《・》では物足りないんだ……)
深淵のような愛を抱えつつ、彼は静かに眠る。その様子を見て、魔女・リーレも静かになるのだった。
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その頃。
モニタリングルームにて。
マーリンの座に就いた彼は、退屈そうに画面を見つめていた。
(はぁ、退屈だよ本当に。死人が出なきゃ意味ないじゃん。えーっと……じゃあ、そろそろ死人が出るように舞台を整えますか)
それも彼の役目だ。マーリンは円卓の騎士ではない。だが、アーサー王に仕え導いた存在。
そして、彼は導き手としての役目も負っているのだ。騎士達がいる位置を把握すると、各々の魔女達に通達する。
「さぁ、そろそろちゃんと殺し合いのお時間だよ!」
(……なんて台詞、普通じゃ言えないからラッキー)
どこまでも軽薄で、不謹慎な彼を咎める者などなく――。